#308
牢屋でブレイクは目の前にある鉄格子を眺めていた。
故郷を滅ぼし、ラムブリオンとの契約でバイオニクス共和国に連れて来られ、彼の元を離れて暗部組織ビザールに所属することで、この国での生活を保障される立場にいたブレイクにとって――。
共和国上層部の一人ラムブリオンの屋敷への襲撃は、この国への居場所を自分で捨てたも同然の行為だった。
ぼんやりと考えている彼がまず最初に浮かんだのが、妹であるクリーン·ベルサウンドのことである。
自分がしたことで、彼女の学園生活は崩壊するだろう。
妹は自分のことを恨むだろうか。
いや、クリーンは恨まないだろう。
兄が信念を持って行動したのなら自分は何も言いませんと、笑ってくれるに決まっている。
もしかしたらすでに彼女も捕らえられているかもしれない。
暗部組織ビザールに捕まったことで、ラムブリオンから離れた自分たちのことをメディスンも守ることはできないだろう。
新しくビザールを指揮することになったベクターの言葉を信じるなら、自分と同じく
犯罪者の家族は立場が悪くなるのは目に見えている。
今さらだが、自分はなんてことをしてしまったのだろうと妹の身を案じるブレイク。
自分はどうなってもいいが、せめて彼女の生活だけは守ってやりたいと、冷たい牢の中で
これはジャガーやリーディンには頼れない個人的な問題だ。
二人は信用できる。
上層部に歯向かった自分に何か理由があると思い、信じられないような話を聞いてくれたのだ。
もしミウムのほうに何かあっても二人が動いてくれるだろう。
だが、クリーンのことは頼めない。
これは未来を守るためではなく、ただ妹の生活を思う兄としてのエゴだ。
だったら組織や国へ反抗しなければよかったのではないか。
そうすればクリーンの生活は守られたはずだ。
自分が暗部に身を置くことで保証されていたものがすべて崩れる。
暗部に身を落としたことに関してブレイクに後悔はない。
自分のしたことで自分が裁かれるのは構わない。
だが、それでも妹のことを考えると、彼の覚悟にも悔いが残ってしまっていた。
《安心しろ。お前の妹は明日にでも共和国を出るようだぞ》
どこからか声が聞こえてくる。
いや、これは頭の中に直接聞こえてくる思念――テレパシーか。
ブレイクは声には出さずに、頭の中から返事をした。
《機械女……テメェか?》
《ああ、私だ。お前を救出しに来た》
《なにを言ってやがる。ここは地下だぞ? 外から侵入するにはドリルの付いた地底戦車でもねぇと――》
ブレイクが言葉を伝え切る前に、突然牢屋の壁を突き破って一人の女が現れる。
白銀髪の機械の左腕を持った女――ミウム·グラッドストーンだ。
「早く出るぞ。お前にはまだまだ協力してもらわなければならないからな」
そして、ブレイクの手に付いた
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