#304

ビザール部隊が現れたことで、ブレイクはミウムへ有無を言わさず逃げることを提案。


さすがのミウムもこの状況は不味いと思ったのかブレイクの指示に従い、彼女の持つレーザーガトリングガンで牽制しながら三階まで駆け上がる。


「このままだと確実に捕まるな」


「だから早く逃げろと言ったんだ! なんで残ったんだよテメェはッ!?」


「すまん、返す言葉がない」


「この状況で冷静なのは頼もしいが、なんかムカつくなッ!」


もう後がないというのに普段と何も変わらないミウムの反応に、ブレイクは内心の不安もあって声を荒げた。


それから二人は三階に着くと目に入った扉を破壊し、窓から外への脱出を考える。


だが、扉を破壊して部屋の中に入った瞬間に、窓の外から電磁波が飛んできた。


ブレイクはその電磁波を避けきれず、その場でしびれて動けなくなってしまう。


彼を撃ったのは――。


「あんた……マジで当てたの?」


「そりゃ当てるさ。こっちは仕事なんだぞ」


屋敷から逃げ出す標的を攻撃するために潜んでいたジャガーとリーディンだった。


ジャガーはライフル型の電磁波放出装置――インストライフルを構えながら、次にミウムのほうを狙う。


「クソったれ! スナイパーがいることくらい考えておくべきだった」


床に倒れ、電磁波によるショックで全身が痺れているブレイクは、ミウムに一人で逃げるように言う。


ミウムの大地を操る力があれば、この場を逃げ切ることくらいは可能だと、彼は動かない体を無理矢理にふるい立たせた。


お前はどうする? とミウムが訊ねると、ブレイクは剣を構えて自分が引きつけている間に行けと答える。


「この身体じゃもうろくに動けねぇ……。せめてテメェだけは逃げろ」


「だが、それでは……」


「いいから行けよ! テメェがここで捕まっちまったら誰が未来を守るんだよ!」


「わかった……」


ブレイクはうなづいたミウムを確認すると、窓へと飛び出し屋根へと飛び乗った。


その間に、ミウムは別の部屋の窓から出て地面へと潜り、そのまま姿を消す。


「ビャッハハ! フギャアアアハッハアアッ! オラッ来てみろコラッ! 近づくヤツは道連れに殺してやんよッ!!」


皮膚が焼けただれたようなほど歪んだ顔をして笑い叫ぶブレイクだったが、屋根へと上がってきた部隊に、電磁波による一斉射撃を受けてあっけなく捕らえられてしまった。


その後、彼は暗部組織ビザールの新たなリーダーとなったベクターの元へ運ばれることに。


その護送中の車の中――。


両手には特殊能力者の力を妨害するためのかせを付けられたが、ビザールのメンバーたちはブレイクを丁重にあつかっていた。


ブレイクは自分を囲んでいるメンバーの顔に見覚えがあった。


互いに名前は知らなくても、この短い期間で生物血清バイオロジカルを相手に共に戦ってきた者たちだった。


彼ら彼女らの多くがバイオニクス共和国の研究所で実験体にされていた過去を持つ。


マシ―ナリーウイルスの適合者、奇跡人スーパーナチュラル呪いの儘リメイン カースといった者ほどの力は持たないが、ここにいる者のほとんどが、実験で生み出された特殊能力者たちである。


「なぜお前が上層部の屋敷を襲ったのか……。わかるような気がするよ……」


ブレイクを囲む者の中から一人が声をあげた。


周りの者も皆同じ気持ちなのだろうか。


全員その身を震わせながら歯を食いしばっている。


そんな彼らを見たブレイクは、何も言葉を返してやることができなかった。

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