#305
護送車から降ろされ、市街地から外れた何にもない広場へと連れて来られたブレイク。
彼をここまで連れてきた暗部組織ビザールのメンバーらは、護送車に付いていた通信機器を使って連絡を入れると、その広場の地面から建物が現れた。
ここはビザールの本部で、地下を移動することができる彼らの秘密基地と呼べるものだった。
その建物へと入り、奥にいるベクターの元へと連れて行かれる。
「お前がクリーン·ベルサウンドの息子、ブレイク·ベルサウンドか」
ベクターはブレイクを見るなりにそう口にした。
彼の傍には、今までビザールの指揮をしていたイーストウッドとブレイクの上司だったメディスンが立っている。
ブレイクは目の前にいるベクターのことを見た。
年齢的には五十を超えているはずが、その鍛えている体のせいか実際の歳よりも若く見える。
ベクターは、イーストウッドとメディスン以外の者を下がらせると、ブレイクへ声をかける。
「ロウルの奴から聞いていた通りだな。生意気なそうな小僧だ」
「おっさんはオレのことをそんな風に言ってたのかよ?」
二人が口にしたロウルとは、ベクターと共にバイオニクス共和国の前身組織――反帝国組織バイオナンバーの結成時からメンバーで、現在は共和国を離れ、どこにも属すことなく個人的に世界で慈善活動をしている男だ。
さらにブレイクやラヴヘイトと同じくハザードクラスの一人である。
ベクターはブレイクの言葉を聞くと、クスっと笑みを浮かべた。
「ああ、ちなみ奴はついさっきまで共和国に来ていた。だが、どうやら適合者の少年――ミックスを粉砕するという目的は失敗したようだがな」
「ロウルのおっさんが適合者を狙ってきただと!?」
ベクターは驚愕するブレイクに簡単な説明をした。
ロウル·リンギングは適合者の少年を襲撃したが、ストリング帝国の護衛やハザードクラスの一人
「それだけでなく、お前の妹のクリーン·ベルサウンドもその少年を守っていたようだ」
「クリーンもか……?」
ブレイクが呟くように言葉を発すると、ベクターは悲しそうな表情を浮かべる。
「奴のことだ。きっと甘さを見せたのだろうな。相変わらずだ」
ブレイクはベクターのその悲しそう顔を見て、ロウルと彼の関係が単なる同僚以上だと思った。
それは、何よりも友の間違いを悲しむ――。
そんな気持ちがベクターの顔に現れていたからだ。
「話がズレたな。なに、ラムブリオンの屋敷襲撃のことを話してくれれば悪いようにはしない。お前にはビザールに残る残らないの選択権があるからな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます