#251
城塞が爆破され、終わりの見えない広大な
弾丸を撃つ軽量自動小銃や、手榴弾などの火薬が込めてられているものが主である。
中には、ストリング帝国軍の標準装備である電磁波放出装置――インストガンから派生したインストバズーカなどを持つ者もいるが、ジャズが守備する城塞は彼らの持つ兵器ではとても突破できるものではない。
だが、それでも
城壁をよじ登り、中へと侵入しようとしてくる。
脱走軍の中には自分と変わらぬ年齢の者も多く、男女関係なく入り乱れている。
そのすべての兵がやせ細っているが、その身のこなし恐ろしいほど速い。
だが、彼らは命が惜しくないのだろうか。
帝国が相手を殺さない戦いをしていても死ぬときは死ぬのだ。
いくらインストガンの出力を最低値まで下げていても、当たりどころが悪いければ数日間は行動不能となる。
混沌とした戦場では動けなくなった者から死ぬ。
それでも脱走者たちには恐れがなかった。
倒れた仲間の体を踏み越えてひたすら城塞へと襲い掛かっている。
その光景はまさに狂気。
ジャズには、彼らが何を感じてここまで駆り立てられているのかが理解できなかった。
「食うためだけにここまでやけっぱちになれるなんて……」
城塞の門の上に位置する――側防塔から敵の侵入と味方への指示を出しながら
彼女はまるで狂信者とでも戦っているような気分だった。
かつて人類を滅ぼそうとしたコンピューターを崇める宗教団体――
「くッ! 城壁によじ登る前に撃ち落としてくださいッ!」
ジャズは腕時計の通信システムで命令を叫ぶ。
それは、よじ登った脱走者たちが電磁波で撃たれてことのよって落下し、そのまま頭から落ちて死なないためだった。
だがいくら城壁に付いた電磁波放出装置が優れているとしても――。
側防塔から優位に射撃ができるとしても――。
自分たちの何倍、いや何十倍もの数を相手にしているのだ。
当然手が回らなくなる。
「さすがにすべては無理かッ!」
城壁をよじ登ろうとする脱走軍を見て、表情を歪めているジャズに通信が入る。
それは、敵の増援を知らせるものだった。
何十倍もいた脱走者たちがさらに増え、この城塞へと向かって来ている。
それは、まるで砂漠を埋め尽くさんばかりの勢いだ。
「まさか残っていた兵すべて投入してきたというのッ!?」
このままでは殺さずどころではない。
城壁をよじ登られてしまう。
ジャズがそう思っていると、急に風に乗ってスパイシーな香りが匂ってきた。
彼女がその香りが来る方向に振り向く前に、一人の男の声が聞こえてくる。
「ここにいるすべての人に、ご飯を作ったよぉぉぉッ!」
それはジャズがよく知る適合者の少年――ミックスの声だった。
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