#225
音が遅れてやって来る。
拳と剣がぶつかりあい、その衝撃で地面が割れるほどだというのに、その破壊音は二人の速度に追い付いていなかった。
もしここが街中や建物が多い場所だったら、怪奇現象でも起きていると思われただろう。
ウェディングとロウルのぶつかり合いは、すでに人間の肉眼では確認できないほどの動きをしている。
「はあぁぁぁッ!!」
その素晴らしくも基本に忠実な動きは、彼女が友人であるクリーンに習ったものだ。
当然その技はベルサウンド流ではないが、ウェディングに剣の技術を教えたのはクリーンである。
だが、すでにウェディングは自分のものとし、今では完全に彼女のオリジナルとなっていた。
それでも特別なことをしているわけではない。
二刀における基本、正面打ちの上下太刀から始まり――。
小手打ち、胴打ち、突きから切り返しなど、ベルサウンド流と比べたらオーソドックスなものばかりだ。
だがそれを
「実直で歪みのない……クリーンの剣だ。だが、もはや別もんだな。殺気が段違いだ」
ウェディングの手の甲から生えたダイヤの剣を振り払いながらロウルが言う。
お前、今まで何人
音速を超えた肉弾戦。
ロウルにはウェディングの剣筋が読めるが、わかっていてもクリーンのときのようにはいかなかった。
しかし、それでも
二人の唯一の差といっていい、経験の差が表れる。
これまでウェディングは自分と同等、または実力が上の相手と戦った経験が
反対にロウルは、現在のように
才能というならウェディングやクリーンのほうが彼よりも上だったが、ロウルにはどんな強敵が相手でも戦う
ここでロウルとの差だけを考えれば、ウェディングは確実に死ぬ。
だが、ウェディングにはこの世界で彼女だけが持つ特殊な能力があった。
「傷が治るのか? まるで
ロウルの拳が彼女の
「さっきお前が名前を出した女、カシミア·グレイ……。たしか
実質的にどんな重傷を負おうが、どんなウイルスに感染しようがすべて正常な状態に治してしまう治癒能力。
彼女は、バイオニクス共和国のとある研究所で行われた
その全身の
その力は治癒能力の後付けであり、ウェディングの本当に恐ろしいところは、たとえ心臓を
「
「そりゃそうだろ。その計画は元々俺が自分に
「腐ってるのはあなたでしょッ!?」
休みのない連撃を繰り出しながらウェディングは叫ぶ。
その子供を――ただの高校生を殺そうとしているロウルに、この国を見下す資格はない。
「お前らになんといわれようと、俺はただやることをやるだけだ」
そして、その言葉から彼の反撃が始まった。
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