#212
ミックスが二人にかけた声は無理やりに
にも
たかが応急処置を
自分が死にかけているというに、この少年はまだこちらに
ヘルキャットとアリアは思わず
全身に行き渡っていた力が抜けていく。
この少年はどうしてこうなのだ。
死んだふりをするなり、自分たちが盾になっている間に逃げてくれればどれだけ気持ちが楽になるか。
二人がそう思ってうなだれると、ミックスに真意を気がついて彼を止めようとしたが。
気が
「うおぉぉぉッ!」
ミックスが突進していく。
いくら彼が戦闘の素人とはいえ、すでにロウルには勝てないことくらい理解しているだろう。
ミックスの真意はそこにはない。
彼に勝つつもりなどないのだ。
ロウルの狙いはミックス一人だ。
周囲にいたブロードも殺してはいないと言っていた。
なら、ここで自分がロウルに倒されれば、これ以上ヘルキャットとアリアを巻き
それがミックスが考える
「お前、良い
ロウルは悲しそうな声を出した。
そして、ヘルキャットとアリアが見ている前で飛び掛ってくるミックスのボディへ、その
その一撃で、ミックスの身体はまるで撃ち出された砲弾のようなスピ-ドで
金属製の手すりを
三回、四回と水面を跳ね飛ぶと、最後には水しぶきをあげて湖へと沈んでいった。
「ミックスくんッ!?」
アリアが叫ぶとヘルキャットと共に、湖に沈んだミックスを
ロウルはそんな二人の姿を
ただやり切れない表情で、その場に立っているだけだ。
「久しぶりだな」
そして、彼は背後から現れた人物に声をかけた。
白髪の和装姿をした少女――クリーン・ベルサウンドだ。
彼女は背を向けたままのロウルに丁寧に頭を下げた。
それから、表情を強張らせてようやく返事をする。
「お久しぶりです、ロウルのおじ様」
「よく結界の中に入って来れたな」
ロウルのいう結界とは、彼が
最大時速五百キロで走り、空をも駆け、さらには特殊な結界――
ロウルは、以前に旅先で見つけた
しかしクリーンやブレイク、べルサウンド
「このくらいの結界、リトルたちがいれば
そういったクリーンの傍には、白犬と黒犬――
さらに二匹の身体に
クリーンの言葉から
「一日だけ待ってやる――。そう、あの少年に伝えといてくれよ」
「めずらしいですね。ロウルのおじ様がそういうのは……」
「ああ、どうやら俺はあいつのことを気に入っちまったらしい」
そういうとロウルは笑った。
自分の命など気にせずに、他人を助けようとした敗北者を
盾になろうとした少女たちに代わり、自らが壁となった少年のことを認めるように。
そして、ロウルはクリーンに背を向けて
この場から去ろうとするロウルへ、眠たそうな顔をしていたクリーンは
「恩人であるロウルおじ様に失礼だとは思いますが、私も全力でミックスさんを守りますッ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます