#197
深い青色の軍服――ストリング帝国の兵が
「ヘルキャットとアリアじゃないかッ! 今ちょうどジャズから電話があったんだよ! さあ、
ミックスの歓迎ぶりにヘルキャットは顔をしかめ、アリアはクスっと笑う。
ちなみに小柄ほうがヘルキャットで長身のほうがアリアだ。
この場で正しい態度をしているのは間違いなくヘルキャットだろう。
何故ならば、以前に共和国へテロ行為をしようとしたこの少女二人は、ミックスのことを殺そうとしたのだ。
それなのに、この嬉しそうな笑顔。
ヘルキャットは、相変わらずよくわからん奴だと顔をしかめたのだった。
そんな彼女をまあまあと
ヘルキャットのほうもいつまでも玄関に立っているわけにもいかず、アリアに続いてブーツを脱いで足を踏み入れる。
「二人ともご飯はまだでしょ? 今できるとこだから食べてってよ」
リビングに通された二人は、テーブルに水を運んできたニコに挨拶をするとその場に腰を下ろした。
どうやらニコと二人は、ジャズとの映像通信でのやり取りでそれなりに顔見知りのようだ。
ヘルキャットは出されたコップに水を注ぐニコを見ていて、急に怒鳴り出す。
「おい! こんなのん気に食事をしている場合じゃないでしょ!?」
「ヘルキャット!? ちょっと落ち着いて」
再びアリアが彼女を宥め、目の前にいたニコは突然のことに驚き、水を注ぎながら固まっていた。
ミックスは首を
「のん気って? 食事は大事だよ」
「あんた……私たちがいきなり現れて、なにも気が付かないわけ?」
「う~ん、そっか! 泊るところがないんだね! だったらうちに泊まっていいよ」
「そんなことじゃないわよッ!」
カリカリし続けるヘルキャットを見たミックスは、これは空腹のせいだと思い、早速出来上がった料理をリビングへと運んだ。
固まっていたニコもその照り焼きチキンの匂いに反応し、自分が担当していたサラダと炊飯器へと走り出す。
それからすべての料理がテーブルの上へと置かれ、ミックスは二人に食べながら話を聞くと言った。
「ったく、狙われている本人にまるで危機感がないじゃないの……」
「うん? なんか言った?」
「いいから、今からいうことをちゃんと聞きなさい。大事な話なんだから」
「ちょっと待って、食事の前の挨拶をしてからね」
そして、皆でいただきますを言い、それぞれが
「なにこれ……
「本当に美味しいです……。これってミックスくんが作ったんですか?」
ヘルキャットは言葉を失い、アリアがミックスに信じられないとばかりに
自信満々で笑みを返すミックスはドンっと自身の胸を叩く。
「これくらいなら毎日だって作れるよ。ちなみに、味の秘密は家族愛だね」
――と、得意気に言ったのだが。
「……って、二人とも聞いてる?」
アリアはコクコクと頷きながらも照り焼きチキンを頬張り続け、ヘルキャットのほうも料理から目を離せないようだった。
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