#192
――後日。
バイオニクス共和国の刑務所――
彼の
その部屋の中心で
あれだけの
いや、むしろ鍛錬こそがブレイクの精神安定剤なのだろう。
振るう剣だけが自分を自分だとたらしめる。
「出てい来いよ。そこいんだろ」
ブレイクは剣を止め、部屋の
そこからは、
相変わらずのトレンチコート姿の彼女は、部屋の隅に追いやられたベットに
「何の用だ、トランプ女」
「
「あん? なにいってやがんだ? テメェも同じじゃ……」
何かを言いかけたブレイクは言葉をつぐんだ。
リーディンが近づいてくれば彼女の気配を感じるなどという言い回しが、まるで
そして、彼は考える。
妹のクリーンとはリトルたちで
そして、マシーナリーウイルスの
適合者、
だが、リーディンにはこちらの気配を感じられないようだ。
そういえば、
その
(
「さっきから何を考え
リーディンに声をかけられ、
彼はなんでもないと答えると、先ほど彼女にいった質問を答えるように
「さあね? ワタシはジャガーからここへ来るようにっていわれただけだから」
「じゃあ、次の仕事の話か。ビザールは相変わらず
「それって、それだけこの国が最悪ってことでしょ。内にも外にも
「
「あんたって意外と目上の人間に
「あん?
ブレイクがリーディンの一言に
ボサボサ頭に作業用ジャケットを着た少年――ジャガー·スクワイアだ。
苛立っていたブレイクは、その
「おい、
「うん? まだ五分前だぜ。リーディンが早すぎるんだよ」
ジャガーは
まずは、
彼らは目的であったハザードクラス――
その後、共和国
「たかが
話を聞いてブレイクが鼻で笑う。
無理もない。
それは、ブレイク自身がハザードクラスの一人だからわかるのだ。
たとえ
だから自分は妹の生活を守るため、暗部に身を置いているのだ。
「ということは、ワタシたちの次の任務って、そのラヴヘイトって男を
「いや、もっと
ジャガーは
彼が続けていうに、次の大仕事には自分たちメディスン
それでいて、
「ムチャをいうわね……。そんなのもうビザールと
リーディンがため息をつくと、ブレイクが部屋を出て行こうと歩き出す。
ジャガーが呼び止めると、彼はこれから食事に行くと返事をした。
「
「小腹ってお前……。ま、いいけどよ。なにを食いに行くんだ?」
「……たい焼きだ」
その言葉を聞いてジャガーとリーディンは
そんな二人を見たブレイクは
「ワタシも付き合うわ。たい焼き」
「だな、オレも行こう。つーか、アイスクリームトラックもたい焼きトラックに変えるか」
ジャガーはブレイクに向かってそういうと、そのほうが
ブレイクは勝手にしろと言葉を返し、二人と共にたい焼き屋へと向かう。
ホテルのエレベーター内で彼は考える。
メディスン派は自分を入れて三人。
メディスンは共和国の前身組織の創立者、そして自分とこの国の
ジャガーはストリング帝国のスパイ。
リーディンは
これでいい、これでいいのだ。
こういうクズ連中が住む世界が暗部組織なのだ。
ヴィクトリアは――彼女は
クズの集まる組織に彼女のような人間がいてはいけない。
「そういえば、伝えとくことがあった」
「あん? なんだよ?」
「彼女のほうは
「そう……よかったわね」
ジャガーの言葉にリーディンは笑みを見せる。
ブレイクは何も言わずに
「記憶を
「ふん、んなこたぁどうでもいいんだよ。どうせもう、オレたちは二度とあいつと
無感情にいったブレイクは
そんな彼の背中を見て、ジャガーとリーディンは笑いながらその後についていった。
「そういえばよ」
「なによ?」
「あのトランプカード、スペードのジャックはどんな意味があったんだ?」
ブレイクに訊かれたリーディンが答える。
「ああ、あれはワタシとジャガー決めた暗号よ。ちなみに意味は内緒」
リーディンの言葉にブレイクは顔をしかめ、ジャガーがそんな彼の肩をポンポンと叩いた。
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