#154

ふすまを開けると中にはたたみかれており、大きな卓子たくしが見える。


さらにその卓には、山のようにみ上げられたたい焼きがさらっていた。


「やっと来ましたね」


おくすわっている男が、ブレイクたちを見て口を開いた。


かみみじかくがっちりとした体格たいかくをしてて、いかにも優等生ゆうとうせいそうな見た目をしている男だ。


そのとなりには、トレンチコートを羽織はおった少女の姿すがたが見える。


ろくに手入れをしていないのだろう、ずいぶんといたんだ長い髪が目立つ。


「お~す、エアラインにリーディン。あれ? なんだ、まだ手を付けてないの? 先に食べててよかったのに」


ヴィクトリアはそう言いながらくつぐと、部屋へと足をみ入れた。


先ほど小腹こばらいただろうからとか言っていたが。


小腹というわりにはかなりのりょうのたい焼きだ。


ブレイクは山のように積み上げられたたい焼きを見て辟易へきえきすると、彼女に続いて靴を脱いで中へと入る。


はじめまして、ですね。ジブンはエアライン。こっちのトレンチコートの彼女がリーディンです」


エアラインが丁寧ていねい挨拶あいさつをしたが、ブレイクは何も答えない。


そんなことは無駄むだだとでも言いたそうな様子ようすだ。


リーディンのほうも黙ったままで、興味なさそうにブレイクのことを見ている。


「今回の任務にんむ。メディスンさんからあのハザードクラスのブレイク·ベルサウンドと組めると聞いていたので、光栄こうえいに思ってますよ。よろしく」


エアラインはさややかな笑みをかべ、ブレイクに手をし出した。


だがブレイクは握手あくしゅをすることなく、不愛想ぶあいそ態度たいどのまま口を開く。


「それよりも仕事の話をしようぜ」


「ちょっとブレイクったら!? その態度はないんじゃないの!? エアラインはあんたと一緒に組めてうれしいって言ってんのにッ!」


「あん? 知るかよ。オレはさっさと仕事を終わらせてぇだけだ」


ブレイクのあんまりな態度にヴィクトリアが声をあらげたが、エアラインのほうは気にしていないようで早速さっそく仕事の話を始める。


エアライン、リーディン、ヴィクトリア、そして本来ほんらいならジャガー·スクワイア四人で当たるはずだった任務にんむ


その内容ないようとは、バイオニクス共和国内に存在そんざいする武装ぶそう集団しゅうだん鎮圧ちんあつだった。


その集団は生物血清バイオロジカル名乗なのっており、ここ数年で国内での被害ひがい拡大かくだいしているという。


せねぇ、そんなもんがいるのに、どうして上層部の連中は本格的ほんかくてきつぶさねぇんだ?」


「そう言われても、ジブンには上層部の真意しんいはかねます」


「チッ、仕切ってるくせに新人ペーペーのオレと大して変わらねぇのかよ」


「ちなみに生物血清バイオロジカルのメンバーは、おもに共和国に不満ふまんを持つ者で構成こうせいされているようです」


簡単かんたんにいえば不良ふりょうやチンピラのあつまりってことっしょ」


エアラインの説明せつめいにヴィクトリアが言葉を付け足した。


すると、ブレイクはまだ話し始めたばかりだったというのに、急に席から立ちあがる。


「そいつらの居場所をオレのエレクトロフォンに送っとけ。あとは全部オレがやっといてやる」

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