#83

図書館としょかんへ行くことをあきらめ、今いる公園こうえんでアミノからの連絡れんらくを待つことにしたミックスたち。


思いのほか連絡は早く、監視員バックミンスターに子どもの捜索そうさく願いが出ていないかを確認かくにんしたアミノから話を聞く。


《う~ん、いてみたんだけど。ミックスくんがおしえてくれた情報じょうほう該当がいとうする子はいないみたい》


アミノが友人に調しらべてもらった話では――。


ミックスの説明せつめいした幼女ようじょ容姿ようし――安っぽい布切ぬのきれを羽織はおり、かみばしっぱなしで前髪で目までかくれている子どもは、迷子まいご行方ゆくえ不明者ふめいしゃリストの中に入っていなかったようだ。


こまりましたね……。よし、じゃあ今夜こんやだけうちであずかりますよ」


「ちょっとッ!? なにいってんのあんたはッ!?」


サービスを預けようにも監視員バックミンスター施設しせつに子どもがまれるようなところはない。


今からどこかさがすにしても手間てまがかかるうえに、受け入れてもらえない可能性かのうせいがある。


そこでミックスは、自分が住む学生りょうに泊まらすことを提案ていあんしたのだ。


だが、ジャズはそんな彼の案に声を張り上げる。


いくらサービスが子どもとはいえ女の子なのだ。


それを男であるミックスの部屋へやに泊めることに抵抗ていこうがあるようだ。


「だったらジャズも一緒いっしょに泊ればいいじゃないか」


「あんたね……。またそんな勝手かってなことを……」


ジャズはミックスの配慮はいりょのなさ、常識じょうしきのなさにあきれたが。


結局けっきょくサービスと共にニコを連れてミックスの部屋に泊まることを決める。


それから三人と一匹はミックスの寮へと向かった。


ジャズはその道の途中とちゅうで、自分の寮ちょうに連絡を入れて外泊がいはく許可きょかを取ろうとした。


だが、ともかく一度もどって説明せつめい申請書しんせいしょを出すように言われ、渋々しぶしぶ女子寮へと帰っていった。


彼女とわかれ、ミックスたちは寮へと到着とうちゃく


その出入り口のフロアには、同じ寮に住むクラスメイト――ジャガーの姿すがたがあった。


「おうミックス。って……お前ッ! 寮になにを連れ込んでんだよ!」


「え? この子はただの迷子だよ。いろいろあって、今夜だけうちで預かることになったんだ」


「お前はずっとブラコンかシスコン、また両方だと思っていたがまさかロリコンだったとはッ!?」


「だから話を聞けって……」


それからジャガーはいくら戦災せんさい孤児こじ学校の寮の決まりがきびしくないとはいえ、年端としはも行かない少女を部屋に入れるのはまずいのではないかとおどろいていたが――。


「うん? この子は……。そうかそうか」


「なんだよ? きゅう納得なっとくしたような顔して?」


「いやいや、お前なら安心だわ。それじゃオレはこれから出かけるから」


「なにを考えてるか知らないけど、この子のことはアミノ先生にもちゃんとつたえてあるよ」


「そっちの話じゃねぇんだが……。まあいいや。じゃあなミックス」


ジャガーはそういうと、ミックスのかたをバシッとたたいて行ってしまった。


そんなジャガーの背中せなかを見ながら、サービスがくびを大きくかしげている。


そしてなぜかニコも彼女の真似まねをして同じようなポーズをとっていた。


相変あいかわらずよくわかんないやつだな。まあいいや。行こうとサービス、ニコ」


ミックスはため息を付くと、まだ首を傾げているサービスとニコの手をと取り、自分の部屋へと向かった。

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