#52

り落とされる黒いかたな――小鉄リトル スティール


ミックスは機械化きかいかさせたうででその一撃いちげきを受け止める。


その衝撃しょうげきによって、先ほどミックスのまれてこわれたソファーやテーブルの残骸ざんがいが飛ばされていく。


だが、すさまじい剣撃けんげきをミックスはなんとか押し返した。


押し返されたブレイクがゆがんだ笑みをかべ、ミックスは表情ひょうじょう強張こわばらせる。


「やるしかないか……。できれば話し合いで解決かいけつしたかったんだけどなぁ」


「来るなら最初さいしょからその気で来いよ、機械ヤロウッ!」


ブレイクがふたたりかかってくる。


だがいくらはやくとも、今の装甲アーマードによって身体しんたい能力のうりょく向上こうじょうしたミックスなら、その直線的ちょくせんてきな攻撃は容易よういけることができた。


ミックスは避けながら機械化したこぶしちからを込める。


ブレイクにカウンターのかたちで反撃をするつもりだ。


「あん? 避けやがったたなッ!」


「とりあえず動きを止める。くらえッ!」


ミックスの拳がブレイクの側頭部そくとうぶに、真下へとたたきつけるように入った。


その一撃は床まで突き抜け、その衝撃しょうげき図書館としょかん内が半壊はんかいする。


一階にあったソファー、椅子いす、テーブルも二階と同じようにボロボロにこわれ、さらには司書ししょドローンも落下物らっかぶつにより破壊はかいされてしまっていた。


ミックスは砂埃が舞うその惨状さんじょうを見て、手加減てかげんができなかったと後悔こうかいしていた。


クリーンの兄は無事かと、ブレイクのことを気にかける。


だが砂埃がれると、そこから何事もなかったような表情ひょうじょうで立っているブレイクの姿すがたがあった。


まさか無傷むきずなのか?


ミックスはブレイクが無事だったことをよろこんだが、手加減抜きの攻撃を受けても平然へいぜんと立っている彼を見ておどろきをかくせないでいた。


「ちぃっとばかりイタかったけどよぉ。こんなもんか、適合者てきごうしゃってのは?」


彼は驚愕きょうがくしているミックスを見てゆがんだ笑みを浮かべる。


だが、その余裕よゆうともとれる顔からは血が流れていた。


ちょうどミックスが拳を叩き込んだ側頭部にだ。


いていないわけではない。


だが、ブレイクが我慢がまんしているようにも見えない。


ミックスはそんな不安にかられていた。


血を流して笑う人間なんてフィクションでしか知らない。


こいつは気がくるっているのか?


それともそう見せているだけなのか?


そんな思考しこうおちいっていたミックス。


ブレイクはその場から動けない彼に向かってかたなかまえ直した。


ミックスはその構えを知っていた。


それは先ほどクリーンとファミリーレストランの前で戦ったときに彼女が見せたものと同じだ。


ならば当然とうぜんその刀からはなたれるのは――。


「ベルサウンド流、モード小鉄リトル スティール鉄風てっぷうッ!」


水圧すいあつカッターのようなするど斬擊ざんげきだ。


クリーンのときとはちがう黒い斬擊がブレイクの刀から飛ばされ、ミックスはこれを両腕ではじき飛ばす。


だが、その斬擊と共に飛び込んでいたブレイクが目の前に。


彼はすでに刀を振っていた。


「おせぇよバカ」


声がするときにはすでに間に合わず、ミックスはねらわれた腹部ふくぶ装甲アーマードさせたが――。


「ベルサウンド流、モード小鉄リトル スティール斬鉄ざんてつッ!」

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