#51

ブレイクは興味きょうみぶかそうと笑うと、その右手をばす。


すると、今までソファーでていたたくろな犬が体をこした。


「来い、スティール」


そのブレイクの呼びかけにより、スティールの体が日本刀にほんとうへと変化し、彼の伸ばした右手へとにぎられる。


クリーンが連れていた白い犬――スノーをかたなへと変えたときと同じだ。


スティールの毛皮けがわと同じく黒い日本刀へと変わり、図書館としょかんない照明しょうめいに当てられて禍々まがまがしくかがやいていた。


ブレイクはその黒い刀を一振ひとふりするとミックスへいう。


「テメェが適合者てきごうしゃなら、良い予行よこう練習れんしゅうになりそうだな」


その言葉の後――。


ブレイクからすさまじい殺気さっきはなたれる。


そのあまりの殺気に、ミックスは思わずってしまっていた。


先ほどとはちが恐怖きょうふが全身を支配しはいし出す。


まるでこいつとは戦うなと本能ほんのう信号しんごうおくっているようだ。


「ま、まさか館内かんないあばれたりしないよね? そんなことしたら監視員バックミンスターも来ちゃうし」


安心あんしんしろ。テメェをやるのに一分もかからねぇ」


ブレイクはそう口からはっした後。


握っていた刀ををり上げた。


ミックスはその剣撃けんげきらい、周囲しゅういにあったソファーや椅子いす、テーブルを巻きみながらき飛ばされる。


「ミックスさんッ!?」


心配しんぱいしてさけんだクリーンの声とほぼ同時どうじに、図書館内に設置せっちされていた警報器けいほうきひびいた。


けたたましく鳴るベルの音とともに、ミックスたちがいるフロアが赤く発光はっこうする。


ブレイクはゆがんだ笑みをかべながら、吹き飛ばされたミックスのもとへ歩いていく。


「おいおい、まさかあの適合者さまがこんなもんで終わりじゃねぇよな?」


巻き込んで飛ばされたソファーやテーブルの残骸ざんがいの中からミックスは姿すがたあらわした。


ブレイクはその姿を見て、さらに表情ひょうじょうを歪ませて口角こうかくをあげる。


「だよなぁ~。った感触かんしょく金属きんぞくだったからすぐにわかったぜぇ~。そいつが適合者の能力のうりょく装甲アーマードってやつか?」


うれしそうにたずねるブレイク。


ミックスは彼の剣撃けんげきを受ける寸前すんぜんに、両腕りょううで機械化きかいかさせて防御ぼうぎょしていた。


大きなダメージはなかったが、ミックスは今の一撃でブレイクの強さを理解りかいする。


(なんて威力いりょくだ。まだ腕がしびれてる)


クリーンにもおどろかされたが、目の前にいる和服わふく姿の少年はそれ以上いじょうだ。


ミックスは、ハザードクラスにえらばれ、しかもバイオニクス共和国きょうわこく最強さいきょうと聞いていたブレイクが、当然とうぜん強いだろうことはわかっていたつもりだった。


だが、自分が想像そうぞうしていたよりもずっと上だったのだ。


今のブレイクの一撃は、前に戦ったストリング帝国ていこく大佐たいさブロード·フェンダーが使っていた効果装置エフェクトでの攻撃以上の衝撃しょうげきがあった。


効果装置エフェクトは、普通ふつうの人間がマシーナリーウイルスの適合者と同じちから腕輪バングル


それはつまり、ミックスの装甲アーマードさせたこぶしよりも威力が高いということにほかならない。


「機械化しているとこを生で見るのははじめてだ。さて、続けようぜ」


「待ってくれ! おれべつに戦いに来たわけじゃないんだよ!」


「あん? シラケたこといってんじゃねぇぞ。こっちはもう小鉄リトルスティールいちまってんだぜ」


「いいから聞いてよ! 俺はキミがこれ以上あぶない目にわないために……」


「ウッセェんだよッ! 適合者がッ!」


ブレイクはミックスの言葉をさえぎって襲いかかった。

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