#8

――その後、スーパーマーケットへとんだミックスだったが。


すでに多くの食材しょくざいは売れ切れてしまっていた。


「ま、間に合わなかった……」


食品売り場で立ちくすミックス。


いくら目をらしても肉も魚も野菜やさいすらもなく、唯一ゆいいつのこっていた食パンを手に取ってレジへと向かい、会計かいけいませる。


トボトボとスーパーマーケットを出た彼は、しずみかけている空を見ながらつぶやいた。


「でもまあ、こんなもんだよね……ハハハ……」


そして、いつものかわいたみをかべた。


そのままの表情ひょうじょうで、ブツブツと同じことを言いながら帰り道をあるくミックス。


その途中とちゅうで、道行く人がそんなミックスを見てヒソヒソと話をしていたが、今の彼には人目ひとめを気にする余裕よゆうはなかったようだ。


そして、学校のりょう――自宅じたくであるワンルーム前に辿たどり着くと、見覚みおぼえのある仔羊こひつじを見つける。


「あれ、お前……ニコじゃないか? どうしてうちの前にいるんだ?」


ニコはミックスの姿を見ると、すがりつくようってきた。


それからきながら彼のあしを引っり出す。


そんなニコを見たミックスは、きっとジャズに何かあったのだろうと思った。


そして彼は、はぁ、と大きくためいきをつくと、ニコをきあげ、彼女のもとだろうと思われるところまで行くことにする。


「まさか、またおなかってたおれましたとかじゃないよな……」


あきれながらニコを抱いて走るミックス。


そんな彼とは反対はんたいに、ニコはかすようにいていた。


あたりはすっかりしずんで夜になっており、人通ひとどおりもなくなっている。


そんな街中まちなかを走っていると、きゅうにミックスのお腹がグゥ~と鳴った。


「うぅ、そういえばお昼をいていたんだった……」


ミックスは節約せつやくのために、いつも持っていっていた弁当べんとうは作らず、購買部こうばいぶのパンも買わずに我慢していた。


そのため、はらむし空腹くうふくで鳴いたのだ。


ニコは、そんなことを気にするなと言わんばかりにミックスへつよく鳴く。


「見た目の可愛かわいさのわりにきびしいやつだな。わかったよ。いそげばいいんだろ、急げば」


そして、しばらくニコが指示しじするとおり走っていると、いきなりミックス目の前で、轟音ごうおん閃光せんこうほとばしる。


銃声じゅうせい――はなたれた電磁波でんじは


ミックスのちかくにあった自動じどう販売機はんばいき爆発ばくはつし、くらかった道が昼間ひるまのようにあかるくなっていた。


「な、なんだよこれ……」


ミックスは先ほどの爆発のいきおいで、コンクリートの地面じめんころがっていた。


それから彼がニコの鳴いている方向ほうこうを見ると、そこにはふる突撃とつげき銃を思わせるものを持った少女が二人――。


さらにはサイドテールの少女――ジャズ·スクワイアの姿すがたが見えた。


「ちッ!? 一般人いっぱんじんか!?」


「ヘルキャット! どうしましょう、顔見られてしまいましたよッ!?」


「しょうがない……。アリアッ! 先にあそこにいる少年から始末しまつするぞ!」


ヘルキャットと呼ばれた小柄こがらな少女と、アリアと呼ばれた長身ちょうしんの少女が何やらさけび合っている。


二人ともジャケットにカーゴパンツ姿すがたで上下ともにふかい青色、足元には黒のコンバットブーツ。


さらには銃までかまえていたため、ミックスは彼女たちがどこかの軍人だということがすぐにわかった。


先ほどの閃光の正体しょうたいは、彼女たちが使っている銃から発射はっしゃされた。


それが今ミックスへと照準しょうじゅんを合わせている。


「わぁぁぁッ!? ちょ、ちょっと待ってよッ!?」


「悪いな少年。顔を見られたからには死んでもらう」


ヘルキャットがトリガー引き、電磁波がミックスとニコへおそかった。


いきなりのことで驚愕きょうがくしていたミックスが動けずにいると――。


「バカッ!? なにやってんのよッ!」


ジャズが彼の身体からだき飛ばし、代わりに彼女が電磁波をびてしまう。


ビリビリとにくげるにおいが立ち込め、ジャズはその場で倒れてしまった。

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