第15話 イグニオ達との戦闘と駆け引き

 イグニオと名乗った老人から受ける印象のヤバさは、ザンネール閣下とは比較にならなかった。


「まさか、挨拶に来た訳じゃないんだろう?」

「まさかの。お前さんの噂を聞きつけてな。メイケンの三男坊の身柄を引き取りにきたついでに、お前さんの顔と腕前を拝んでおこうと思ったのよ」


 言い終わるや否や、踏み込んできていた。音も予備動作も無く、間合いを詰めて腕を突き出す、ただそれだけの動作。

 三メートルは離れていた筈が瞬きする間に、イグニオの拳は私の心臓の上、胴衣の表面に達していた。

 拳を払うのは間に合わない。そう判断した私は、イグニオの拳が触れている部分に硬化を発動。放たれた衝撃をこらえつつ、身体を半身に開いて斜めに受け流し、相手の足の間に半歩踏み込み、右肩を相手の首もとに押しつけるように勁を放った。

 イグニオは私の肩と自分の身体が触れないように上半身をのけぞらせた。私は踏み込んだ足を相手の軸足の裏へ滑り込ませながら頭突きを打ち込んだ。もちろん額を硬化させて。


「ははっ、楽しいのう!」

 イグニオは態勢を崩されながらも後ろ足に重心を残し、額の石を輝かせて私の頭突きを迎撃した。

 イグニオの身長は170センチほど。体重で言えば私の半分以下だろう。つまり馬鹿正直な力比べで言えば負ける筈も無いのだが、頭を後ろに弾かれたのは私だった。


「っつううっ!」

 こおおおんという良い音を響かせて頭を弾かれたが、硬化のおかげもあって、痛みは感じたがダメージは負わなかった。

「ユリ様、大丈夫ですか!?」

 心配してくれたレジータを背中にかばい直し、後ろに随行してきていたメイドさんたちに声をかけた。

「増援を呼んできて。なるべく多く!ザンネール閣下の方にも人を!それから誰か一人は私の武具を取ってきて!」

「は、はいっ!」

 何組かに分かれてメイドさんたちが走り去っても、イグニオは追うそぶりを見せなかった。


「もう脱獄させてあるとか?」

「人はやってある。その首に架せられておった枷を外す鍵を受け取りに来たのよ。当主かその兄のどちらかが持っておろう?」

「枷?鍵?」

「重い罪を犯した奴隷が逃げないようにする時に使う呪具よ。正規の鍵で外さず、鍵の持ち主から離れすぎたり、呪具を壊そうとすれば、枷をかけられた者は死ぬ。という訳だ。鍵をよこせ、レイガンの小娘」

「イヤです。私は持ってませんし」

「では兄の方か?」

「いいえ」

「では一人残らず殺して回るしかないか」

「ユリ様が止めて下さいます!」

「止められるのか?」

「やってはみるよ」


 両拳のナックル、両足の靴のつま先、ヘッドバンドにそれぞれ埋め込まれた輝石に、まだ魔法の光は宿っていなかった。本気を出されたらしのげるかどうか怪しく、背中を冷たい汗が伝い降りるのを感じたが、仕掛けられた方が不利になるのも間違い無かった。

 はぁ、と軽くため息をついてから、何気なく一歩を踏み出すと、イグニオも一歩前へ。そこはもう私の腕のリーチなら届く距離。

 小手調べのジャブを相手の顔面へ放つ。左手で払われ、ようとした手をぎりぎりで引っ込める。そのナックルには冷たい銀色の光を帯び、氷で覆われていた。

「どうする?」

 にやにやと試すように笑うイグニオに腹が立ったので、さっき寸止めして引き戻した左手に気の力を込めて、イグニオの顔に飛ばして当てた。

 さすがに意表は突けたようで、鳩が豆鉄砲食らったような顔つきにはさせられた。

「奥の手を出しても良かったのか?」

「属性の違う魔法を両手両足や額とかから放てるんだろ?だったら離れてもゼロ距離でも無意味じゃないか」

「放つ事も出来るが、あまり得意では無いのう」

 イグニオは左手に氷を、右手に炎を纏い、超近距離で放ってきた。私は背後にレジータをかばっていてかわせない。両拳を硬化で固め、気でも覆って炎と氷を弾く事は出来たけど、軽い火傷やけどと凍傷を負った。やはり組み手で何とか出来る相手でも無い。風や土属性の魔法も使ってくるなら、逃げられる望みも薄い。


 私は覚悟を決め、両足を開いて拳を固め、連打を放った。もちろん気を乗せて放つ。

 イグニオは余裕綽々と両手に魔法を纏わせて弾く。

「こんな物ではわしを倒せんぞ?」


 煽られないでもそんな事は分かっていた。気を連続で放ちながら、ほんの少しずつ距離を詰める。拳一個分の距離を詰めるのに五秒くらいかけて、腕から放つのとは別に、特大の気を丹田に貯めていく。

 そしてぎりぎり自分の手だけが届く距離で、イグニオの視界の左右の端から同時に大きめの気を放った。イグニオは何も焦らずに顔の前に両手を翳して気を弾いた。


 今!


 私は気を放った手を伸ばし、イグニオの視界にブラインドを生んだ両手を掴んで、そのままぐるりと横に回転させた。車とかのハンドルを回す時と同じ様に、回された相手の上下は逆転する。

 腕と手に強化のスキルも使い、宙に浮かんだイグニオの足と頭をさらに払って回転を加速させていった。何度か繰り返すと、冗談の様に宙で高速回転し続けるイグニオがさすがに目を回していた。

 私は両腕を引き、その掌に特大の気を注ぎ、イグニオの腹部に叩き込んだ。


 白虎双掌破!

 ・・・思い浮かんだ技名は、中二病ぽいので口に出しては言わなかった。


 イグニオは身体をくの字に曲げながらレジータの部屋の扉と壁を突き破り、そのままお星様になりはしなかったが、外壁を越えてお堀に落ちた水音が聞こえてきた。


「さすがです、ユリ様!」

「いや、相手が余裕かましてくれてて助かっただけだよ。次は最初から本気出されたら、勝てるかどうかはわからない。それより、マサラや閣下がどうなったか確かめないと」

「そうでした!部屋はこちらです!」

 レジータに連れられて廊下を進んだり曲がったりしていくと、そこには数人の兵士とガンツさんが倒れていて、気を失ったマサラさんが見知らぬ男に担がれていた。

「ありゃあ、お師匠てば負けたのかよ。ざまねぇな」


 挨拶代わりと、軽く振られた片手の先から針の様に細い水流が放たれた。私は硬化した手の甲に気を纏わせて弾いたが、どちらが欠けていても貫通されていただろう。

 その間にマサラを担いだ男は廊下の窓を破って外に飛び出していた。

 急いで下をのぞき込むと、鉤状の氷を壁に突き立てて落下速度を殺して着地していた。

「ザンネール閣下の首輪の鍵とこいつとで交換だ!」

 そう言って走り出した男の背を追おうとした私の腕を引いたレジータが大声で宣言した。

「その交換には応じません!」

「レジータ」

「いいえ、これはもうすでに決めていた事なんです。それに、まだ手はあります」

 男は足を止め、自分を取り囲む兵士たちをにらみつけながら、レジータに呼びかけた。

「こいつ、お前の兄貴じゃないのかよ?」

「それが何か?」

「おいおい。たった一人残った肉親をそんなあっさり見殺しに」

「あなた方の申し出を受けてザンネールを解放したとして、後から私たちが皆殺しにされないとでも?」

「俺たちが受けた依頼は閣下の救出だけだ」

「では解放されたザンネールが新たな申し出をしてあなた方が受けたとしたら?」

「・・・有り得ない話じゃないな」

「私たちはまだザンネールの処遇を決めていませんでした。元はワッハウの街で彼とその兵を負かして捕らえたユリ様が連れてきて下さっただけで、私たちが捕らえた訳でもありませんでしたし。しかし何かすればザンネールの身に危害が及ぶのに、あなた方が先にその何かをしてしまったのです」

「俺たちがザンネールを言い聞かせて連れ帰る」

「連れ帰った後でまた攻めてこない訳がありません」

「・・・だな。残念な人柄が命取りになったか」

「あなたにも分かっている筈です。いざとなれば私たちは鍵を破壊したり、この街から去る何かの荷に鍵をひっそりと紛れ込ませるだけでいい。それであなた達の依頼は失敗した事になる」

「あー、その場合は腹いせにでもこの城の連中が全員死ぬ事になるけど?」

「ザンネールの命と、あなた方の評判も道連れになりますけどね。イグニオとその弟子達の北風兵団は、一度受けた依頼は必ず完遂するという掟があったのでは?」

「ちっ。レイガンの若当主様はだいぶ肝が座ってるじゃねぇか」

「あなたほどではありませんよ」

「いや雑兵に何百たかられても遅れは取らねぇよ。そこのユリって奴じゃねぇけどな。師匠と俺たちが揃ってて失敗は有り得ねぇ」

「そのお師匠はこのユリ様にお堀の外まで飛ばされていきましたが?」

「ふむ。師匠が余裕かまし過ぎて吹っ飛ばされたとしてもそれだけでくたばってねぇだろ。それに弟子が俺だけしか来てなかったらまだしも、他にもいるなら、そこの男女、いや女男も倒せるだろうよ」


 レジータは男から目を放さずに小声で尋ねてきた。

「ユリ様、あの者と、同じくらいのもう一人がいたとして、勝てますか?」

「負けない、だったら出来るだろうけど両方いっぺんに倒すとかは厳しいかもね。手の内がわからないし、さっき吹っ飛ばしたイグニオが戦列に戻ってきたら、ここからレジータ一人を担いで逃げるくらいが精一杯かな」


 そんな風にひそひそ話していると、何か思いついたらしい男が声を上げた。

「そうだ、こいつはいったんここに放してやるよ。ザンネールも地下牢に置いたままでいい。そんで師匠と俺ともう一人とで、この城にいる奴を一人残らず殺せばいいんだ。それからゆっくりと鍵を探せばいい。それで少なくとも依頼が失敗したと触れ回る奴はいなくなる」


「ザンネールが無事に帰らねばメイケン家が黙っていないのでは?」

「かもな。だけどこの城の中にいる誰かが鍵を持ってるだろうよ。持ってなくても隠されてる可能性と合わせれば、まだザンネール閣下が生きてるんだから、賭けの分はかなり良い筈だ。違うか?」


 表情には出さないようレジータは窓の縁をぎゅっと掴んだ。目下の男は、強ばったレジータの様子を見て図星だと踏み、担いでいたマサラをどさりと地面に放り出した。

 こきこきと首を鳴らし、ぐるぐると両肩を回した男は、周囲を囲む兵士たちに言った。

「んーじゃ始めようか。魔闘士イグニオが二番弟子、水のフォボル、推して参る!」


 彼が兵士たちに圧縮した水を放とうとした寸前に私は窓から宙に飛び出して、全身の気を両手の間に貯めて練った。練られた気は渦を巻いて回転しさらに圧縮しながら気を注ぎ込まれ、回転速度もエネルギーも増していく。

 兵士たちに向けて水流を放とうとしていたフォボルと名乗った男は寸前で頭上を見上げ、私の額と心臓に向けて目視するには細過ぎる水流を放ってきた。


 私は、両手を突き出して貯めていた気の玉をフォボルに向かって放った。そう、いわゆる、かめ○め破とか呼ばれる様な何かを。


 ぶっつけ本番で放たれた渦を巻くエネルギーの球体は、側を通過した水流を弾き飛ばしつつ、驚いている男の胸に着弾。相手も硬化などで対抗しようとしていたが、肋骨などをめきめきと折りながら地面へと叩きつけた。


「ぐっ、ば、かな。この俺が一撃でなど・・・」

 血反吐を地面に吐きつつ立ち上がろうとあがいていたフォボルへ、私はとどめとばかりに中空から重力に任せた跳び蹴りを放っていた。

 フォボルの顔面に私の蹴りが届く寸前、私は背後から強い風に押されて狙いは外れた。

 着地し、フォボルの後頭部に手刀を放って気絶させ、先ほど飛び出した窓を見上げると、そこにはレジータの首に片手をかけた見知らぬ女性が一人佇んでいた。


「あんたもイグニオの弟子とかって奴?」

「そうね。三番弟子、風のフィーネ。そこの二番弟子と鍵とで、この当主様と交換しない?」

「実質一人と二人とで交換は欲張り過ぎじゃないか?」

「かもね。でも、あなたならこの娘を見放す事は無いんじゃないの?」

「さて、それはどうだろ?まだ会ったばかりだし」

 私が気絶して倒れているフォボルの後頭部に足をかけてほんの少し体重をかけると、フィーネと名乗った女性もレジータの首にかけた手に力をこめたようで、レジータは声も出せずに苦しげに悶えていた。


「そうね、一対二の交換が飲めないというなら、最悪、そこのフォボルを引き取らせてもらうだけでいいわ」

「それで後から三人で逆襲に戻ってくるんだろ?だったらここで一人でも頭数潰しておいた方が私には望みがあるんだけど?」

「そしたら、このお嬢さんはここで首と胴体がお別れする事になるけど、あなたはそれでいいの?」


 良くないと考えた私は、地面に転がっていたマサラとフォボルを両脇に抱えて、学校の屋上くらいの高さがある窓までジャンプして戻った。

 さすがに、フィーナという女性が目を丸くして驚いていた。

「あなた、今の魔法使ってないでしょ?」

「うん、そうだね」

「いろいろ常識破りね。じゃ、このお嬢さんとそこのフォボルを交換でいいかしら?」

「ああ。同時に床に降ろして、その後は手出し無用。いいな?」

「ええ。お師匠に続いてフォボルも倒したあなたに小細工なんてしないわ」

「さっき、私を殺そうと思えば殺せたんじゃないのか?」

「否定しないわ。ただ、その場合フォボルも死んでたでしょうし、回収したお師匠からは手出しするなと止められてたし。さっきのは仕方なくよ」


 フィーナが私の方へレジータを差し出して手を放したので、私もその隣にフォボルを降ろした。

 レジータはよろよろと歩いてきたので抱きとめた。

「だいじょうぶかい?」

「すみません。せっかく兄上を救って人質も取って頂いたのに」

「きっと私があんたから離れるのを待ってたんだろ」


「ま、そんなところね」

 フィーナはフォボルを魔法で宙に浮かせて、一緒に窓の外へと飛び出し、

「今日のところは引いておくわ。ザンネール閣下は殺さないでおくことね」

「無傷で置いておく事は難しくなったのは分かっているでしょう?」

 レジータの悔し紛れの一言に、

「だとしても、閣下が負った手傷の分だけ、レイガンは余計に手傷を負うだけよ。それじゃまたね」

 フィーナは脇にフォボルを浮かべたまま、城の外へと飛んで去ってしまった。


「魔法があるんだから空も飛べるんだろうけど、なんか目の当たりにするとすごいね」

「魔法が使えるからってみんな飛べるかというと、そんな事は無いんですけどね」

 レジータは兄マサラの顔などにぺたぺたと触れて傷などを負っていない事を確かめると、肩を揺すった。

「兄様、兄様。起きて下さいまし」

 何度目かに揺すぶられた後、マサラは意識を取り戻した。

「う、うう。私は、フォボルとかいう輩に捕らわれて気を失っていた筈だが」

「ユリ様が助けて下さったのですよ。兄様も、そして私の事も」

「そうか。ユリ様、ありがとうございました」

「いえいえ。成り行きでしたので、気になさらないで下さい」

「いえ、そんな訳にはいきません」

「私からも改めてお礼を申し上げます。が、今は先にザンネールの様子を確かめておきましょう」


 地下牢に向かう間に、それぞれに何があったのか情報を交換したが、二人や周囲の兵士さんたちが私を見る目のきらきら度がまた何段階か上がっていた。

 閣下の牢屋の扉は開け放たれ、見張りの兵士は床に転がされていたが気絶しているだけで息はしていた。

 牢屋の中の質素でないベッドには、ザンネール閣下が不服そうに座っていた。

「イグニオとその弟子が二人も来ていて失敗したとはな。ユリ、お前がそれだけ規格外という事か」

「さあね。とりあえず逃げないでいてくれたのは礼を言うよ。そのまま大人しくしててくれればとりあえず拷問とかは始まらないと思うけど、どう?」

 私がちらと両脇の二人を見てうなずかれたのを閣下も見ると、

「ふん、妥当なところだろうな」

 そう言ってから、また妙な提案をしてきた。

「なぁユリよ。そなたやはりメイケンに仕えぬか?レイガンが今回の危地を何とか逃れたとしても、そなたがここを離れ、イグニオたちが本気を出せば全滅は免れまい」

「確かに付きっきりで護衛し続けるのは無理でしょうけど、あなたたちに仕える話はもう断った筈ですよ」

「私の側女の一人にというのは断るだろうから」

「もちろんです」

「メイケンの第一子にはもう正室がいるから側室か」

「お断りします」

「では我が姉はどうだ?気が強くて出戻りだが、美人なのは間違い無い」

「知らない誰かを良く知りもしない誰かからあてがってもらうとかあり得ないし、当人の許諾も無く勝手に話を進めるなんてもっとあり得ないし、私がクェイナに忠誠を捧げてるのは知ってるでしょうに」

「クェイナと同等以上に美しかったとしてもか?」

「あのねー、いくら綺麗な人だったとしても、みんながみんなあんたみたく複数侍らせたいと思ってるわけじゃないの」

「そうだな。当人の許しが得られるのなら、ユリの側女(そばめ)として遣わしても惜しくない。姉なら、それだけの価値がそなたにあると見抜いてくれるかも知れんしな」

「だから側女なんていらないって言ってるだろーが」

「人質ならばいるだろう?私を殺さないのだとしたら目的は何だ?メイケン家の派兵を止める為だろう?その目的が達せられるなら、人質は私でなく姉でも良い筈だ。それに私が留め置かれ続ける限り、今回の様な襲撃は続くかも知れない。その時ユリが居なければ目的は達せられ、この城にいるレイガンの者は皆殺しにされているだろう。それがそなた達の望むところなのか?私を道連れにしていたとしても、それは不幸な結末なのではないのか?」

「・・・詳しくは後でまたレジータたちと相談して決めるけどさ、あんたの姉さんを預かってるよりも、あんたを預かってた方が抑えは効くような気がするけど」

「襲撃でそなたも死ぬかも知れぬのだぞ、ユリ?」


 単なる脅しでなく、それが実感をもって事実だと感じられた私はただ肩をすくめた。

 閣下はそんな私を見て言った。

「父へ今回の顛末を手紙で送る。その間襲撃を止めるようにイグニオ達宛ての通達も書くから城門の扉にでも貼っておけ。父や姉からの返事が来たら、それをもって判断しろ。どうだ?このままの状態が続くよりはマシであろう?」

 私やレジータがすぐには言葉を返せずにいると、閣下は牢屋に据え付けられた机で手紙を三通ほど書くと、レジータに手渡してきた。

「内容を読んで問題無ければ送れ。私は寝る」

 閣下はそう言うと私たちを牢屋から追い出して扉を自分で閉めると、ベッドにもぐりこんでしまった。


「とりあえず、これからどうするか相談しましょうか」

 レジータにそう言われて、私たちは地上へと戻っていった。

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