第8話 領主救出

 その夜、話があるとラシャの部屋に呼ばれた。案内してくれたメイドさんがドアをノックし、部屋の中へと声をかけた。

「ユリ様をお連れしました」

「お通しして」

 メイドさんがドアを開けてくれ、私を通して扉を閉じた。


 そこは、ホテルのスイートルームってこんな感じなんだろうかと想像させられる豪華な部屋だった。元の世界の私の部屋が四個は軽く入りそう。大きな天蓋付きベッドたけで一部屋分かな。

 そんな益体もないことを考えていると、薄布の寝間着をまとってベッドに腰かけているラシャがぽんぽんと自分の隣を叩いたので、そこに並んで腰を下ろすことにした。


 同年代男子だったら、胸の鼓動が大変なことになっているのだろうシチュエーションでも、自分はこれでも女子だからね!

 そう自分を言い聞かせようと、めりはりのきいた体つきをしているラシャの体から目をそらしたまま尋ねた。


「それで、話っていうのは?」

「んーと、明日かいつかは分からないけど、父様を助けに行ってもらって、無事連れて帰ってもらったら、話が父様越しになっちゃうかも知れないから、その前にって思って」

「悪いけど、話が見えない」

「あはは。あのね。順を追って話すと、私はもう十七で、私しか子供がいないから、この家には誰かお婿さんに来てもらって、私とその人の間に出来た子供に継いでもらう必要があるから、だから、十ニ、三の頃から縁談めいた話は来てたのよ」

「・・・それで?」

「会ったことも無い相手と縁談なんてイヤって最初は断ってたんだけど、なんか会ってみても、この人!って思える人との出会いが無くてね。だから、この年まで来ちゃったんだけど、まさかこんな非常事態になるなんて思ってもなかったから、いろいろ考えちゃって」

「・・・」

「は~。ユリが男の人だったら、文句無しだったのにな~!」

「それは、残念、だったな」


 自分にとって残念だったのかどうかは、また別の話だ。今の私にはクェイナがいるし!


「ほんとにね!ね、ユリって男になれたりしないの?」

「この世界にどんな魔法があるかは知らないが、存在しないのならなれないと思う」


 元の世界にある性転換手術も完全に性転換するわけじゃないし、自分にそうする予定もつもりも無いし。


「幸か不幸か私も知らないわね。んー、そうすると困ったな」

「何で何に困るんだ?」

「ユリへのお礼。男の人ならさ、ほら、いろいろと、ね?」


 ひょいと隣から瞳をのぞき込んできたラシャは、いたずら半分、本気半分という感じで、私はどきりとしながらも、拳一つ分くらい彼女から身を遠ざけた。


「気にするな。礼というなら、領主を助けた後の説得に力を貸してもらえれば、それで十分だし。話がそれだけなら、私はこれで」


 ベッドから腰を上げようとしたが、横合いからラシャから抱きつかれてベッドの上に押されて、上にのしかかられる格好になった。

「ラシャ?不要だと言っただろう」

「そうなのかな?その割には、あなたの心臓はばくばく言ってるよ?」


 心臓の鼓動まで制御できるような人外になった覚えは無いからね!ラシャは、領主の娘というだけあって、見栄えも非常に良い。学校で言うならトップ1、2を争うくらいだろう。しかも外見だけでなく内面まで良くて、自分に(負い目もあるだろうけど)好意を寄せてくれてるとなれば、ね。

 それで夜の部屋に二人きりで、相手にベッドに押し倒されて平静を保てるほど私はまだ枯れていなかった。それだけだと声を大にして主張したい。


「父様が帰ってきたら、今まで以上に強引に縁談は進められて、私も誰かを選ぶ必要に迫られるでしょうね。だから、私も、その、最後まではできないし、そもそも女の人同士でどうやってそういうことするのかも知らないけど」

「いや、その、私も知らないし、とりあえずラシャも知らないままで良いんじゃないか」

 このままでは良くないと私は力任せに上体を起こし、体勢的に上にいたラシャを抱きしめる形になった。

 意識のどこかでクェイナが、ユリ様はお好きなように振る舞って頂いて良いんですのよ?、とか声をかけてきてくれたせいではない。

「とにかく、感謝の意は十分に受け取った。たぶん、これ以上は、良くない。きっと」


 へたれと言わば言え。


「ごめんなさい。迷惑だった?」

「いいや。それじゃ、また明日。お休みなさい」

「うん。おやすみ、ユリ」


 部屋の外に出ると、そこに待っててくれたメイドさんに自分に割り振られた部屋へと案内されて戻り、鍵をかけてベッドにもぐりこんだ。


 翌朝、領主の庭先には、ヴォルネルからのメッセージが届けられていた。当人が来たわけはないから、街に残っている手下スパイがまだ暗いうちに投げ込んだのだろう。

 ちなみに、私は一睡もしなかったせいか、元の世界に転移はしなかった。決してベッドの上で悶々としたまま転がり続けていたせいではない。

 指定された日時に巡り合わせで行けなくて、領主様の首と胴体がお別れになってしまったりしたら、取り返しがつかないし、少なくとも救出まではやり遂げておきたかったから。


 指定されたのはワッハウの街から一日ほど離れた場所にある山間の廃村。セピアスにも連絡を取り、ゴブリンたちも把握している場所らしかったので、手勢を向かわせてもらえることになった。


 朝食を済ませ、身代金となる宝石がいくつか入った小袋をラシャから渡された。

「無事で帰ってきてね、ユリ」

「ああ。ラシャの父上と一緒にな」

「お願い」

「お願いされた」

 170くらいあるラシャが背伸びして私の首筋に抱きつき、頬に軽くキスしてくれた。私も失礼にならないくらい儀礼的に彼女をハグしてから互いに身を離し、そして私は街の外へ、指定された地点へと走り始めた。

 ザイルは私と同じ宝珠を持っていて、セピアスとも連絡が取れるとのことだったので、何かあった時の為に留守番を頼んだ。一人の方が行動しやすいのもあったし。


 一日と言われた行程は、私がそれなりの速度で走れば昼前には着いた。早く着きすぎても相手の準備が出来ていないかも知れないので、その手前、セピアスたちとの合流地点で周囲を哨戒。廃村に出入りする盗賊の数や、廃村から彼らが向かった先へ追跡するなどしてみた。

 女子高生がそんなこと出来るのかって?

 今更だけど、普通の人の十倍くらい身体能力があればたいていのことは出来る。例えば忍者よろしく梢から梢へと樹上を移動したりとか、自分の体重を忘れて移動先の枝をへし折って落下しかけ、危うく追跡相手に気付かれそうになったりとかね!


 二、三時間ほどもすると、セピアスが連れてきてくれた手勢と合流できた。その数およそ百。廃村に出入りしてる盗賊の数は二十くらい。アジトっぽい洞窟には見張りが二人で、中にはどれくらいいるかは不明だった。


「盗賊も、ワッハウの町で、かなり、手下、失った、筈。多くても、五十人、いない」

「それとゴブリンだけでやりあえる?」

「本当に、五十人いたら、厳しいかも、知れない。だが、自分と、ユリがいれば、充分、勝てる」

「正面から叩き潰せるなら、私一人でも何とでもなると思う。けど、人質を助けてからじゃないとね。だから、手助けしてもらっていいかな?」

「その為に、ここに、来た。何を、すればいい?」

「たぶんだけど、まだ私とゴブリンたちとの共闘関係は気付かれてない。先にゴブリンたちだけで廃村の盗賊たちに仕掛けてもらえば、その数が十ちょいくらいだったら、彼らはきっと軽い気持ちで追い払ってやろうと受けて立ってくれると思うんだよね」

「仕掛けて、逃げて、引き付ければ、いいのか?」

「うん。ゴブリンたちがどの程度細かいこと出来るか分からないんだけど、そちらはポツドに半分くらい引き連れてもらって、残り半分とセピアスで、アジトっぽい洞窟にしかけて欲しいんだ」


 それから手勢をほぼ半分ずつに分け、同時に村と洞窟に仕掛けることにした。最初は洞窟の見張りをセピアスに魔法の一撃で打ち倒してもらい、その後は入り口でたき火を焚いて煙を内側へと流した。

 廃村と洞窟の間にも十匹のゴブリンを置いて、伝令が走るようならこの邪魔をして出来る限り倒してもらうよう頼んであった。


 廃村の方から喧噪の音が聞こえてきた頃に、見覚えのある大男、ヴォルネルが先頭になって洞窟から出てきた。

 お供は六人ほど。最後尾の二人が両側から中年男性を両側から拘束してて、たぶんあれが領主様だろう。

 たぶん、を付けたのは、私が今彼らのほぼ頭上にいて、顔が見えないから。


 セピアスの手勢のゴブリンは大男や前面にいる盗賊たちに矢を射かけて、一人を倒し、一人を傷つけた。

「くそ、廃村にいる連中と合流するぞ!ついてこい!」

 ヴォルネルは大剣を手にゴブリンたちの中心を突破しようとしたが、そこにセピアスから火の玉が放たれた。

 とっさに大剣を引き戻し、

「うらあっ!」

 という気合いとともにまるで野球のバットのように火の玉を打ち弾いた。

 ヴォルネルはぼろぼろになった大剣を捨てて予備の剣を鞘から抜いてセピアスに向かおうとしたけど、背後の地響きに驚いて足を止め、振り返った。


 ずごおん!

 だもんね。そりゃ驚いて振り返るか。私でもそうする。

 何の音って、洞窟の入り口ある崖の上に潜んでた私が、領主様を引きずってた男たちの背後に飛び降りた時の音だよ。

 そりゃあさ、しゅたっ!て訳にはいかないてのは知ってたよ。

 でもさ、ずごおん!はやり過ぎじゃない?

 着地した時の衝撃で領主様連れてた二人の盗賊も倒れちゃってるし。当然領主様当人もね。

 高さは二十メートルくらいだったかな?ガン○ムの背丈より高いとこから飛び降りても足が少ししびれたくらいで、地面にめり込んだ足を引き抜く方が難儀だった。

 私は倒れた盗賊たちに駆け寄って後頭部に手刀を当てて昏倒させると、領主様の拘束を解いて背後に匿った。

「ユリ殿!またしても、かたじけない!」

「無事そうで何よりです。しかし、かたじけないと言われる前に、一つ、取引があります」

「私に応じられるものであれば」

「もし応じないのであれば、最悪、ここに置いていきます。盗賊に再び捕まるか、ゴブリンに捕まるか、どちらかになるでしょうね。引き渡し場所に指定されてた廃村の方でもゴブリンたちが仕掛けてますから、捕まるとしたらゴブリンたちの方でしょうけど」

「それで、取引とは?」

「ゴブリンたちとの和平に応じて下さい。出来れば、形だけでなく、可能な限り守ろうともして下さい」

「・・・それが今、私を助けるのにユリ殿だけでなく、ゴブリンたちもここにいる理由か?」

「はい。私は、ゴブリンたちの主である女帝クェイナとその願いの為に闘うと決めましたので」

「人の為にではなく、か?」

「ゴブリンが無意味に人を襲おうとすれば人を救おうとするかも知れません。けれど、そうでもない限りは、私はまずクェイナの為に戦います」


 なんでこんなに領主様と長話出来てるのかって?そりゃこの場にいる盗賊はヴォルネル以外は無力化されてて、そいつもセピアスに牽制されながら、五十匹近くのゴブリンに包囲されてたからね!

 そんな様子を領主様は見て、私に尋ねた。

「娘は、ラシャは何と?」

「もしあなたが反対されるなら、説得に回ってくれると」

「そうか。私にあれの他に子はいない。娘が婿を取ってその子が継ぐにしろ、次代はラシャが治めることになろう。領主たちを説得することはたやすくないがな。その一点を後回しにして良いなら、和平に応じようではないか」

「ありがとうございます。そしてご安心下さい。他の領主の説得も、任せきりにするつもりはありませんので」

「ならばこちらにも異存は無い。この場はどうやら収まったようだし、ワッハウにもようやく戻れそうだな」


 だからそれフラグだって!

 という心の中の叫びはいったん自分の中だけでスルーして、ヴォルネルに投降を呼びかけようとしたのだが、セピアスがヴォルネル越しに呼びかけてきた。

「ユリ!廃村で、盗賊達、引き付けていた、ゴブリン達が、ポイズン・ヒュドラに、襲われた!自分、助け、行く!」

「待って。名前からしてヤバイ相手だけど、ゴブリンたちが刃向かえる相手なの?」

「自分が、加わっても、仲間、逃がすだけで、精一杯、だろう。だが、助け、行かなかったら、全滅、する!」

「じゃあ、私も行くよ。ポツドにはこっちに合流させて、領主様の護衛と盗賊たちの見張りをお願いするよ」

「ちょい待て。俺の頭越しに会話してんじゃねぇよ。ていうか、あいつの縄張りには踏み込まないようにしてたんだが、お前等がドジ踏んだんだろうな。おい、そこのゴブリン。俺の仲間たちも襲われてるのか?」

「ああ、そうだな」

「くそっ!おい、そこの大女!ユリとかいったか?停戦だ!俺も手伝ってやるから、俺たちを見逃せ!」

「この場であんたをぶち倒してから助けに向かっても大差無いと思うけど」

「そりゃそうかも知れねぇが、俺だって負けないつもりで闘えばそれなりに時間はかかる。それが十秒か二十秒だとしても、その間に何人死ぬ?」


 私はいちおうの確認として、領主様に尋ねた。

「盗賊見逃すのは罪になりますか?」

「普通ならな。しかしこの場合は特例として不問に付されるだろう」

「話せる相手で良かったね。後でおかしな真似したら容赦なく潰すからね?」

「時間が無ぇ。手下を二人ほど、薬を取りに行かせろ。ゴブリンを好きなだけ付いて行かせてかまわねぇ」

「薬?もしかして」

「ああ。ポイズン・ヒュドラなんてやばい奴の縄張り近くに潜んでたんだ。毒消しくらいは用意しとくさ。だが、大して数は無ぇから過信はするなよ」


 そして盗賊の手下とゴブリンたちに毒消しを取りに行かせながら、セピアスと私とヴォルネルは、ポイズン・ヒュドラのもとへと向かった。

 途中で、ポツドたちとすれ違い、廃村に引き込んで弓矢を持つゴブリンたちで足止めしていると聞き、私は先行した。


 廃村に着くと、双頭の魔物が暴れていた。見た目はブロンドザウルスを1/10くらいにした感じ。長い首の先についた頭部から毒の霧を吐き散らし、ゴブリンの矢はその黒い皮の表面に傷一つつけられない。そんな、危ない相手だった。


「ちっ。いつもの得物がありゃあよ」

「命があって自由にさせてもらえるだけでめっけものだろ。文句言うな」

「そりゃそうだけどよ。お前への義理立てよりは、食われた仲間の無念を晴らすぜ」


 見れば、ポイズンヒュドラは毒の霧を吸い込んで動けなくなった相手を生きたままぼりぼりと貪り食っていた。うん。エロ気は無いけど、R18指定が適切だと思う光景だ。

「で、どう戦うんだ?勝ち目があって来たんだろ?」

「あんたが囮で、私がかちこんで、セピアスの魔法でダメージ与えて、私がトドメ刺す感じかな」

「ポイズン・ヒュドラ、魔法への、抵抗力、高い。覚えて、おけ」

「じゃあ、二人して相手の目をそらして。頭が二つだから、二人で一つずつで」

「わーった。んじゃ、おれはあいつの左から」

「では、自分は、右から、いく」

「二人とも、無理しないでいいからね」

「安心しろ。こんなとこで死ぬつもりは無ぇ!」

「同じく、だ」


 そうして三手に分かれ、廃屋の陰から飛び出したヴォルネルがポイズン・ヒュドラの右後ろ足へと切りつけた。ダメージはほとんど無さそうだったけど、右の首がヴォルネルの方を見て口を開き、死体を貪っていた左の首もそちらを向こうとしてもたげられたところを、ヴォルネルとは逆側の廃墟の陰からセピアスが火の玉をぶち当てて、二頭の注意を分断してくれた。

 双頭はそれぞれ逆方向に毒の霧を放つが二人とも廃屋を盾に離れて、私はその間にポイズン・ヒュドラの死角となった正面からその胸元に飛び込んだ。

 もちろん、身体能力強化の赤い石が埋め込まれた右手の手甲に、思い切り力を込めて、振り抜いた。


 たぶんブロントサウルスの何分の一とか言っても良くわからないだろうから説明し直すと、頭の位置は少なくとも地上から三メートル以上の高さ。全長はたぶん尻尾の先まで入れると七、八メートルくらいはある。全体としては大きめのパワーショベル(建設機械ね)をもっと大きくして重くした感じ。

 素手で触れたら毒に犯されそうな感じもしたけど、そこはクェイナの配慮に感謝。大きめのパワーショベルよりも大きな相手の胸元に肘近くまで右手は埋まり込み、その相手は二十メートル近くは吹き飛んで廃屋をいくつか潰しながらそこで止まった。


 もちろん、まだ動きは止まってない。ダメージも入ったようだけど、追撃に距離を詰める私に向けて双頭が向きを揃えて、毒の霧を吐き出した。

 私?もちろん避けるつもりなんて無い。魔法や飛び道具をそらしてくれるという青い石の埋め込まれた左手の手甲を口元に当てながら、私は廃屋の壁や屋根なんかを踏み台にして、この世界でないと出来ない技を、相手に飛び込みながら足を回転させるアレを放ってみた。


「たつまき~、せん○うきゃくーーっ!」

 毒の霧は左手の手甲と、足の旋回速度で吹き飛ばしつつ、双頭を順々に蹴り飛ばし、ポイズン・ヒュドラの背中に着地した。

 ポイズン・ヒュドラは双頭を蹴られてふらふらしてた。ダメージは十分ではないらしい。正直あれでトドメを刺せるとは思っていなかったけど、刺せたらいいなくらいには思っていた。

 仕方無い。こうなったらやるしかないか。

「からの~」

 無理矢理つなげたことにする。

「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらららっららららららららららら(以下略)」

 

 私の背後に霊的な何かは浮かんではいないので、物理的に両手の手甲でひたすらにポイズンヒュドラの背を穿っていった。

 五、六回殴ったところで、背骨をばきんっ!て折ったやった。それでもまだ身じろぎしてたから、後は息を止めたまま殴れるだけ殴った。息が続かなくなってから飛び離れたが、そんな私を見たのは、今更だろ、という微妙な眼差しのセピアスとヴォルネルの二人だった。


 ポイズン・ヒュドラの背中はクレーター状になってて、分断されそうな勢いだった。そこまで殴り掘り進んでいた私がどんな有様だったか?

 とりあえず弱めの水魔法でセピアスに洗浄してもらわないと、全身にこびりついた肉片とか血糊とかで息をするのもままならないくらいだったとだけ言っておく。


 と、とにかくこれで領主様連れて帰れば一件落着だよね!

 全身ずぶ濡れにされながら、そんなことを思っていた私に、ヴォルネルは言ったのだ。

「なあ、お前。俺を手下にしないか?」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る