第38話 告白
「ディズニーとっても楽しかったの!また皆で行こうね!」
「そうね……」
「そうですね……」
帰り道の電車内。綿密な計画を組んだ結果、数多くのアトラクションに乗れたのだが一方でメチャクチャ疲れた。マジで疲れた。元気なのロコさんだけ。子供か。未だにミッキーの耳が付いてる帽子被ったままだし……。
「夜のパレードも凄かったの!帰ったらユーチューブでまた見るの!」
「そうね……」
「そうですね……」
いや、早く寝たい。むしろ今寝たい。
「知ってる?ディズニーランドに入ると外の世界は見えなくなるの!」
「知ってる……」
「俺も知ってました……」
ドヤ顔の所悪いけどそれ結構有名なやつ。
「あとね、地下には夢の帝国があって、ねずみとかが働いてるの!」
「zzz……」
「それは都市伝説では……?」
っていうかほむほむ寝やがった。大丈夫なの?いきなり剣に戻ったりしない?
帰りの電車は鈍行で、東京から離れるにつれて乗客の数も減ってくる。この方が落ち着く。東京の喧騒は旅行時には気分を高揚させてくれるが、日常的に味わいたいものではない。ぶっちゃけ田舎だろうがネットが使えてAmazonが宅配してくれるなら構わないのだ。ただし北海道と離島、テメーはダメだ。配送料が別途掛かるからな。
「ねぇねぇ、蓮君」
などとノスタルジック?に浸っていたらロコさんが話かけてきた。まぁずっとだけど。
「なんです?」
「私たち、アレみたいなの。千と千尋の神隠し」
「…………」
ねぇねぇ。どっちがカオナシなの?俺?
「あ……、あ……」
「ロコさんがカオナシ!?」
「カオナシというより、根無し草だけどね!」
「…………」
何を元気に自虐してるんですかね……。しかし、実際どうなのだろう。根がないという状態は、それはそれで気楽なのだろうか。何の縛りもない。前向きに考えればこれ以上ない自由だ。彼女の場合、やろうと思えばいつでも一人で生きていくことができる。……そんな訳ないよな。
「…………一つ、蓮君に謝らないといけないことがあるの」
「なんです?」
「あのね、蓮君、私のために色々調べてくれてるでしょ?」
「……まぁ、そうですね。記憶が戻る手助けになればと」
「ごめん、ごめんね。私の記憶はね、戻らないの。私の事を覚えてる人もいない」
「……そうですか」
ほむほむから聞いてたから驚くことはない。でも、告白する気になったのは何故だろう。
「なんで、言おうと思ったんですか?」
「蓮君には本当に感謝してるから。ディズニーランドも連れてきてくれたし、今度沖縄にも行くでしょ?私、この世界に帰ってきて、こんなに楽しいと思ってなかったの。だから蓮君に嘘付きたくなかった。それに、いつまでも迷惑掛ける訳にはいかないよねって思ったの」
「……そうですね。俺も、ずっとこのままは難しいと思ってます。こんな生活は、いつかは破綻する」
「……うん。そうだよね。……だから、皆で沖縄行って帰ってきたら、蓮君の家を出ようと思うの」
……は?
「なるほど……。そのためにはまず、戸籍を作る必要がありますね。住むところも見つけて。流石にバイトだけだとキツイでしょうから就職もちゃんとして。資格とか取らないと無理かも。学校とかの卒業資格はどうすれば良い?役所に行ったら色々アドバイス貰えるのかな」
「蓮君……?怒ってるの?」
そうかもしれない。だってそうだろう?すべてが中途半端だ。そんな無計画に行動して、幸せになれるものか。
「ええ。後味悪いじゃないですか。そんな途中で放り出すような真似。何が言いたいかというと、ロコさんが普通に一人立ちするにあたってですね、沖縄旅行終わりの時点では絶対に不可能です。色々段取りが必要です。それまでは家に居ても構いませんから。帰ったら色々調べましょう」
いつまでもうちに居て良いなんてことは言わない。それは無責任だし、その選択権は俺にはないのだから。
「蓮君……!ありがとうなの!もう!ツンデレなんだから!」
「…………」
……え?男でツンデレとかちょっとキモくない?
しかし俺は、ロコさんの記憶を取り戻す事を諦めてはいない。全ての話を聞いたわけではないけど、ほむほむがあの話をしたということは、きっと何か、方法がある筈なのだ。
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