第37話 TDRで遊ぶ

「と、ここまでが私とロコが出会うまでの話ね。ディズニー着いちゃったし遠くでロコが嬉しそうに手を振ってるから一区切りしましょう」


「え……。あの、めっちゃ先が気になるんですけど……」


 ねぇねぇ、そういう中途半端なのは漫画でも小説でも評判悪いから止めよ?


「ちなみにあの世界にはダンジョンがいっぱいあるんだけど、特別なダンジョンが7つあってね。特定の条件を満たすことで虹色の宝箱が出現するの。神の七大罪装備ね」


 確かほむほむは憤怒だっけ。っていうか冷静に考えると神の七大罪っておかしくない?なんで神様が罪犯してるの?


「へぇ。ロコさんはそれ全部手に入れたんですか?」


「いえ、私だけね。そりゃ私は場所知ってたけど、あの世界においては色々力が制限されててね。そういう攻略情報を教えるのも禁止」


 攻略情報って……。


「それにしても、なんかもう序盤で最強装備手に入れてる割には魔王討伐ってかなり時間掛かったんですね」


 確か向こうの世界に11年いたんでしょ?


「ああ……。魔王は八人いるのよ。で、その八人を倒すと大魔王への道が開く。討伐できれば晴れて平和が訪れると。これも攻略情報なんだけどね、魔王を倒すと手に入る武器は、残りの魔王の誰かの弱点なのよ。だから一人でも倒せれば、後は順々に弱点武器で攻めていけば比較的簡単に大魔王まで辿り着けるのよね」


「ロックマンか」


「で、残すは大魔王だけだと油断すると痛い目にあう。最後の魔王城に突入すると、これまで倒した魔王が大魔王の力で復活しててもう一度そいつらを倒さないと大魔王と戦えない」


「だからロックマンか」


 でも、もしそれを知らないで行ったとしたら割りとシャレにならない難易度じゃないか?まぁ炎獄龍戦を聞く限りでは、ロコさん含め他のパーティメンバーも鬼のように強いんだろうから案外楽勝だったのかも知れないけど。


「あとね、時間が掛かったのは魔王の数の問題もあるけど、ロコって優しいからさ。出来るだけ人が死なないように、自分が開発した強力な魔法を兵士に教えてたのよね。パーティにエルトが加わって魔法の真理を理解してからは殆ど詠唱なしになっちゃって、これはロコにしか使えなかったけど」


「なるほど。確かにロコさんが魔法使う時ってお経みたいな詠唱してないですね。あ、初めて会った時にサラマンダーを使った時は如何にもな呪文唱えてましたけど、ああいう普通の詠唱もあるんですか?」


 なんだっけ。悠久の時を越えし火霊の舞をここに顕現する、とか言ってた気がする。


「ないわよ?あれ、別に言っても言わなくても同じだから。でも全く意味がないわけじゃないわ。あれを唱えることで、あ、サラマンダー撃つのね?って私に伝わる」


「…………」


「別に、ほむちゃん!サラマンダーよ!でも良いわ」


「いや、それはそれで……」


 なんかポケモンバトルみたいなんだけど。


「まぁ、今日の夜、ロコが寝た後にでも続きを話すから。八魔王戦はどれも似たり寄ったりで詰まらないから、大魔王戦だけ話すわね」


 今度こそ話題を打ち切ってロコさんと合流する。今まで聞いた部分だけだと、ロコさんの存在が星からなかった事にされてるとかいう重い話にどう繋がるのかまだ分からない。いたって普通の異世界転生な気がする。……うん。普通の異世界転生って何?


 皆でディズニーを楽しみながらも、俺はロコさんの事を気にしてしまう。例えば、今だって本当に心の底から楽しめているのか分からない。実はずっと、気丈に振る舞っているだけという可能性もあるのだ。


「蓮君、見て見て!ミッキーの耳買ったから、物真似やるの!……つながる心が、俺の力だ!!!」


「…………キングダムハーツ?」


 いやそれ、ミッキーじゃなくてソラじゃね?なんで難しいボケかましてくるの?


「流石なの!蓮君ってばオタクなんだから!ほらほら!蓮君もグーフィーの帽子被って!物真似やってなの!」


 グーフィー!?難易度高くない!?


「……あひゃ、グーフィーだよ!」


「…………」


「またこのパターン!?」


 結構頑張った方じゃない?


「ふぅ。しょうがないわね。私に任せなさい」


 見かねたほむほむが、おもむろにドナルドダックの帽子を被った。……いや、それズルくない?


「……アフラック!!!」


「……!?」


 え?保険の方のアヒル?


「ほむちゃん凄い!そっくりなの!」


 確かにそっくりだけど。もはやディズニーにかすってすらいないんですがそれは。

 

 ……まぁ、ロコさんが少しでも楽しんでくれるなら、それで良いか。

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