第27話 高校生らしく恋話
「蓮、テストどうだった?」
「うーん?うーん。うん……」
「全然答えになってないんだけど。珍しく自信無いわけ?」
放課後の教室。ようやくテストが終わり一段落。うちの学校は色々緩いので殆どの部活はテスト最終日は活動しない。俺の所も当然ない。だから大半の生徒は教室でダベったり、あるいはファミレスやカラオケに行く。俺と碧斗も教室で雑談中。緑ちゃんと美紅は他の女子グループとスタバ。
「まぁ、事前準備がバッチリだったとは言い難いね」
多分全教科満点だとは思うけど。
「……ああ。例の親戚の人関係?っていうかまだいるのか?」
「いるね。いなくなる見込みもないね」
ロコさんの記憶は戻らない。戻る気配もない。やはり行方不明者について調べても出てこないし、休日に出掛けても彼女を知っている人間に会う事もない。まだ焦るほど時間が経っている訳でもないが、その内見切りを付けて、ちゃんと社会に出るための諸々の処理を行う必要があるだろう。
「緑ちゃんから聞いたんだけどさ、ロコさんって言うの?蓮の親戚の人、めちゃくちゃ美人らしいじゃん。そして胸もでかい」
「何?碧斗興味あるの?言うてかなり年上だよ?」
「それも知ってる。なんなら子連れなんだろ?流石に狙えんわ」
……なるほど。ほむほむはロコさんの子供という認識で通ったらしい。
「うん?話が見えないな」
「蓮ってさ、ぶっちゃけイケメンだと思うのよ。俺の次くらいに。で、勉強も出来るし何気に運動もいける。ユーモアもそこそこ。謎の安心感もある。しかし何故だか彼女はいない。俺達はまだ高一とはいえ、そろそろ夏休みも近い。ぼちぼち彼氏彼女の事情になっている男女も多い」
いや、誰も彼もが少女漫画みたいな面倒な関係性ではないと思う。ただの言い間違えだと思うけど。
「碧斗は?」
「……今日はその話もしようと思ってたんだ。あのな。実は俺、昨日の夜に美紅に告白したんだ」
「えぇ……。テスト期間中に?」
「蓮、最も飲み会が多い曜日を知ってるか?答えは木曜だ。つまりそう言うことだ」
……気持ちは分からんでもない。明日仕事したら次の日休みだしまぁいっか!みたいな?いや、告白のタイミングとしてはどうなんだろう。
「俺は美紅に告白した。今回のテストで!もしも!もしも赤点を一つも取らなかったら!俺と付き合ってくれ!って」
「…………」
なにその低い目標。そう思うならテスト期間中に電話してんじゃないよ。
「で、美紅に怒られた」
「そうだろうね」
「しかし、悪い感触ではなかった。美紅はその時こう言ったんだ。馬鹿な事言ってないで、テストが終わったら普通に告白してよ。電話じゃなくて、直接だよ」
「なん……だと……」
……マジで?そんなんもう確定演出じゃん。なに普通に青春してんの?いやいや、別に全然悪くないけど。でも裏声で美紅の物真似してるのには若干イラっと来た。後でチクろ。
「で、女子達のスタバが終わった後で、俺は美紅に再度告白をする。そして俺達は付き合うことになるだろう。オーディエンスは要らない。悪いな蓮太、これ二人用なんだ」
「いや、見に行くつもりないけど……」
碧斗がどんな風に告白するかに関しての興味が全く無いわけではない。でも他人の告白が今後の参考になるとも思えないし、面白がるのは論外だ。
「でだ。話を戻そう。結局何が言いたいかというとな?俺は蓮にも誰かと付き合って欲しいんだ。緑ちゃんが蓮に気があるのは察しているが、別に緑ちゃんじゃなくても良い。人生でただ一度の高校一年生の夏休み。ダブルデートとか?お互いの彼女に関するお悩み相談とか?なんだか良く分からない三角関係みたいなのに発展するのも悪くない。……兎に角だ。俺はお前とそういう事がしたい。だがロコさんは駄目だ。年上過ぎる。事情が複雑過ぎる。それでは同じステージで蓮と語り合えない」
「なるほど……。碧斗の気持ちは分かった。そこまで力説されると俺も何だかそんな気がしてきた。大丈夫。元々ロコさんにそういう感情はないから。夏休みまでに出来るか分からないけど、善処するよ」
ロコさんに対しての俺の立ち位置は、あくまで一時的な保護者だ。多分……。
「おお!心の友よ~!」
スネ夫なのかジャイアンなのかはっきりして欲しい。
「ちなみに、だ。ああは言ったものの、夏休みまでに間に合わせようと思った場合の最適解は緑ちゃんだ。多分、蓮から告れば100%成功する」
「なるほど。善処するよ」
まぁ便利な言葉だよね。でも、向こうがこちらに気がありそうだから付き合うというのは、ちょっと違うかなと思う。
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