第26話 ほむほむの本気
「蓮君、蓮君!何やってるの?あ、お姉さん分かっちゃった!テスト勉強でしょ!全く懐かしいの!って、覚えてないんだけどね?でもでも!私、とっても勉強出来た気がするの!そんな私が蓮君にアドバイス。勉強はね、集中できる所でやらないと駄目なの!分かった?」
「…………」
分かったからリビングに戻ってほしい。っていうか「勉強中、お静かに」って貼り紙を付けておいたんですけど。なんなら直前に邪魔しないで下さいって言ったばっかなんですけど。鳩なんだろうか。
「えーと、数学やってるのね?何々……?サイン、コサイン、……パキスタン!それ、ここ!パキスタン!」
「…………」
宇宙海賊かな?それにしてもあまりにもネタが粗過ぎない?
「パキスタン!……フ。アハハハハッ!パキスタン!パキスタン!」
自分でウケてラリってんじゃねぇ!!!
「……ロコさん、あの、勉強出来ないんで。すみませんけど隣の部屋に行ってて貰って良いですか?」
「あのね、この間緑ちゃんが言ってたんだけど、蓮君、勉強出来るんでしょう?」
「まぁ……。でもそもそも勉強出来る人が行く高校なんだから当たり前です。順位は付きますけど、一番と最下位にそんなに差があるわけでも無いでしょう」
使い方は若干違うけど、ドングリの背比べってヤツだ。順位争いに大した意味はないのだ。
「あー!ほら!頭良い人の発言をしてるの!あるいは強者の余裕?だって、蓮君学年一位なんでしょ?凄いの!」
「……たまたまです」
「たまたま、全教科100点?」
……緑ちゃん、余計な事言わないで?なんか周りに自慢してるっぽくて嫌じゃん?
「所詮は高校の勉強です。ただの記憶力ゲームです。それが社会に出て役に立つ訳でもない。不良の言い訳みたいですけど」
「……じゃあ、何で蓮君は勉強するの?何か夢があるの?」
「いえ……。無いからしてるんだと思います。もし夢があるなら、その事だけ勉強すれば良いんですから。それ以外の事は時間の無駄でしょう」
「蓮君の気持ちは良く分かったの……。それじゃあ、今から遊びましょう!」
「遊びません」
どう考えたらそうなるの?
とりあえずロコさんを追い出して勉強を再開する。
先ほどロコさんに勉強は記憶力ゲームだと言ったが、俺にとっては正しくその通りで要するにただの暇潰しなのだ。……いや。それだけじゃないか。満点を取ったら、少しだけ自分が特別な何かだと思える。だから勉強しているのかもしれない。
「…………」
「感傷に浸っているわね」
「…………」
「おやおや。流石に驚かなくなってしまいましたか。でも?無視は良くないわね」
「…………」
無視。俺は勉強をするのだ。集中せよ。
「良いでしょう。あなたがその気なら。私もここからは全力で行くわ」
「……あの。何か用事ですか?後じゃ駄目ですか?」
「用事がなきゃ来ちゃダメなの?」
「…………」
それこの前聞いた。緑ちゃんのパクりじゃん。
「まぁ、ただ勉強の邪魔をしに来ただけだけど」
「…………」
もう帰って?
「ふーん。勉強しちゃうんだ?良いわ。じゃあ私は静かに一人で遊ぶけど。勉強してるんだから、気になっても絶対にこっち見ないでよね」
問題ない。俺は勉強をするんだ。何があってもこの集中を乱す事はない。
「私さぁ、剣じゃん?」
「…………」
「初めて会った時に蓮が見た形ね?アレ実は本気モードじゃないんだよね」
「……!?」
「今から真の姿に変身するけど、こっち向かないで勉強に集中しててよ?ちなみに魔力消費が激しいから、この世界だと一度変身したら次はいつになるか分からないわ」
……いや、そういうのズルくない?気になるに決まってるじゃん。
「……世界の根源たるマナから造り出されし神の意志。その意味するは憤怒。大地を割り、海を枯らし、空を堕とす」
なんか厨二っぽい詠唱始めた……。
「壊せ……。
一瞬、勉強を続ける俺の背後にあったほむほむの気配が消えた。だが次の瞬間に発せられた圧倒的な圧力によって俺は息さえ出来なくなっていた。
「刮目せよ。これが私の卍解よ」
「…………」
……いや。思ってたよ?特に最後の部分とかさ?完全にそうだよねって。大丈夫だから。わざわざ言わなくても通じてるから。
それにしても、俺の勉強の妨害をするためにここまでするとか馬鹿じゃないだろうか。謎のプレッシャーのせいで動けないから見れないし。
「もう!ほむちゃん!蓮君の邪魔しちゃ駄目でしょ!こっちおいで!」
異変を感じたロコさんがほむほむを回収していく。解かれるプレッシャー。動けるようになった俺は勉強を再開する。
「…………」
結局、ほむほむの変身後の姿はどんなだったんだろうか……。気になって集中出来ないんですけど……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます