第24話 女勇者は人見知り
「…………」
「…………」
「…………」
緑ちゃんをリビングに案内して皆でお茶会だって事で小さなテーブルを囲んでいる今。話が続かない。それはもう、全然。
「あの、ロコさんって凄い美人ですよね。私、憧れちゃいます」
「そ、そう?えへへ。ありがとう!」
「…………」
「…………」
以上、会話終了。さっきからずっとこう。俺、あるいは緑ちゃんが話を始める。ロコさんがそれに答える。終わり。ほむほむはゲームをしている。完全に我関せず状態。ズルい。
いや、いつもは放っておいても勝手に喋るじゃん。何かずっとモジモジしてるし。おしっこか?しょうがないので助け船を出すことにする。
「ロコさんって、実は人見知りなんですか?」
「そ、そうなの!今まであんまり年下の女の子と喋ることなかったし、何を話せば良いか分からないの!」
まぁ良く考えたら緑ちゃんは俺の友達なのであってロコさんとは赤の他人だ。特に話すことはないのは当然だし無理をする必要もない。
「そう言えば、緑ちゃんは結局何をしに来たんだっけ?」
「用事がなかったら来ちゃ駄目なの?」
「面倒な彼女か」
ぶっちゃけ用事もないのに連絡し合う文化はどうかと思う。他にいくらでも楽しい事あるじゃん?お前ら他にやることないの?
「この間の事は謝ったから、後はそうね……。率直に言って、ロコさんは蓮君の事、どう思ってますか?」
「……!?」
なっ!何を言ってるだァーッ!
「えっとね。蓮君はこの家に居させてくれるし、良く果物を買ってくれるの。インターネットの使い方も教えてくれるし、バイト先も一緒に探してくれた。何をしても怒らないで許してくれる。私、ちょっと変なんだけど、色々、聞かないでいてくれるの……」
「…………」
ロコさん……。
「蓮君はね、私にとってはそう、お母さんみたいな存在なの」
それはちょっと違くない?
「……なるほど。私もそう思います」
いや、ロコさんについては100歩譲るとして、緑ちゃんはそんな訳ないよね?
「ママー!お腹空いたー!」
ほむほむはお前もう大人しくゲームしてろ!!!
「……初めて蓮君と会った時、私は人生に絶望していました。そんな私に彼は言ってくれたんです。教科書見る?って」
うん。高校に入って初めての授業の時かな。そんな事もあったなぁ。いや、簡単に絶望し過ぎじゃない?
「嬉しかった……!こんなに優しい人が世の中にいるんだなって、感動しました」
大袈裟か。なんなら馬鹿にしてる?
「そうなの!蓮君はとっても優しいの!それはまるで暖かな木枯らしのよう……」
なにその例え。木枯らしって冷たい風でしょ?プラマイゼロってこと?
「その日の昼、また、私を絶望が襲いました。そんな私に彼は言ってくれたんです。僕の顔をお食べ。って」
いや、確かに弁当忘れてたみたいだったからパンをあげた覚えはあるけども。そんなアンパンマンみたいな事言った?
「結局その日は、最後まで蓮君におんぶに抱っこでした。だから私は誓ったんです。例え何があっても、彼を守り抜いて見せるって」
エピソードに対しての決意が重過ぎる……。というか思い返してみると、緑ちゃんあの日は何も持ってきてなかったよね。何しに学校来たの?
「ぐす……。緑ちゃんにはそんな過去があったのね……」
「…………」
泣ける要素あった?
「でも、ロコさんを見て思い知りました。私みたいなミジンコじゃあ、蓮君とはとても釣り合わないなって。フフ。おかしいですよね。なんだか心が空になって、今なら何処へでも飛んで行けそう……」
いや、この短時間でそこまで緑ちゃんを卑屈にさせる事あった?あと全然おかしくないし何言ってるかも良く分からん。
「緑ちゃん……!そんな風に諦めないで!?私と一緒に頑張るの……!」
「ロコ先生……!!恋がしたいです……」
「…………」
何この茶番。というか今までの話的には俺に恋してたんじゃないの?マジで何なの?
それから彼女達は意気投合し、なんやかんやガールズトークを始めた。俺は蚊帳の外になったのでほむほむとストリートファイターで遊ぶことにした。
緑ちゃんは用事があるらしく、2~3時間話した後で帰っていった。
結局、彼女が何しに来たのかは良く分からないのだった。
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