第23話 緑ちゃん、再び

 ピンポーン!


 インターホンに起こされる。折角の休日だというのに。しかしロコさんがネットで何か頼んでる可能性があるから無下に出来ない。再配達は社会的な悪なのだ。


「はいはーい」


 ガチャ。玄関の扉を開ける。目の前には緑ちゃん。……うん。なんで?


「……あー。この間来たとき、忘れ物でもしたとか?いや、特にそういった物はなかったと思うけど……」


「連絡もしないで突然ごめんね。でも私、帰ってから色々反省したの。やっぱりあれは失礼だったんじゃないかって。ロコさんに謝りたいなって。大丈夫。今の私ならきっとやれる」


 何その挑戦。そりゃあ前回帰り際に、「出直す事にする」って言ってたけどさ、流石に早過ぎない?男子三日会わざればとは言うけど、緑ちゃんは女子だし三日も経ってないんだよなぁ。


「……なるほど。えーと、ちょっとだけ待ってて貰える?俺も寝起きだし、ロコさんに至ってはまだ寝てるから。人前に出る準備がいると思う」


 特にほむほむとか。あとほむほむとか。剣のままで良いならそれが一番楽だけど、どうせ出てくるんだろうし。とりあえず緑ちゃんに変身を見られる訳には行かない。


「うん。ごめんね」


「いや、家に招くことにしたのは俺だしね。あの時追い掛けなかったのは俺も悪かったと思ってる。お菓子くらい出すからさ。お茶会しようぜ」


 俺は彼女をひとまず玄関に残してリビングの扉を開ける。直ぐに閉める。


「…………」


「蓮君?どうしたの?」


「いや、なんでもない。ごめんけど、ちょっと後ろ向いててくれる?」


「え?うん」


 緑ちゃんが後ろを向いた事を確認した俺は急いでリビングに入る。目の前にはロコさんとほむほむ(大人ver)。いや、お前らさっきまで寝てたじゃん。


「ほむちゃん、この間来てくれた緑ちゃん、また来てくれたみたい!どうする?やっちゃう?」


「合点承知の助兵衛」


 何でスケベになっちゃったの?進化したの?


「……ちょっと待った」


「もう!何なの蓮君!大丈夫だから!こんな事もあろうかと、次に同じことが起きた時にどうするか、ほむちゃんと相談したの!」


「その通りよ。大船に乗った私達は、一体にどこに辿り着くのかしら」


 早くも安心出来ないんですけど!


「あの。マジで何もしなくて良いんで。普通にお話するだけ、OK?ほむほむさんは先ずは子供になって。この前の子どこ行ったの?って思われちゃうでしょ?」


「え~?折角準備したのに~!ここは私達でなんとかするから!蓮君は先に進んで!」


「別に、アレを倒してしまっても構わないのでしょう?」


 何で!?


 ロコさんはまだしも、ほむほむの方がふざける気満々なんだよなぁ。


「……ちなみに、何を予定してるんですか?」


「よくぞ聞いてくれたの!まずね?皆で紅茶を飲みながら手作りクッキーを食べるの」


 お?良いんじゃない?俺もロコさんの作ったクッキー食べたいし。


「その後、皆でパーティーゲームをするの。あ、効果音とかイルミネーションは任せて!凄いの披露するから!名付けて、プロジェクションマッピング魔法なの!」


「それはちょっと……」


 いや、まだ2アウトってとこか?というかそれ、オノマトペ魔法と何が違うんだろ。


「それからね、皆で南国の無人島に瞬間移動するの」


「はい、アウト」


「バーベキューをして、キャンプファイアーをして。都会では味わえない綺麗な夜空を見るの。あ、虫については心配しないで?蚊取り線香魔法で撃退するから」


「皆でマイムマイムを踊ったらきっと楽しいわね!」


 え……?まだ話続けるの?とっても素敵な提案なんだけど、どう考えても駄目でしょ?虫の心配より気にしないと駄目なこと、たくさんあるでしょ?


「それでね、おうちに帰ってきた後で緑ちゃんに言うの。ドッキリ大成功!って」


「ワーオ!流石ロコ!これで全部解決ね!」


「…………」


 そんなんで誤魔化せるかい!!!


「蓮くーん。そろそろ入っても良いかなぁ?」


 玄関からは緑ちゃんの声。全然良くないんだよなぁ。


「あの。今度ディズニーランド連れていくので、今日の所は大人しくしていて貰えませんかね……」


「……もう!蓮君ったらしょうがないんだから!じゃあ来週だからね!絶対だからね!」


「私は子供料金で行けるからお得ね!」


 ……もちろんほむほむも連れていくけどさ。何アピールなの?


 ということで、ようやく俺は緑ちゃんを呼びに行くことが出来たのだった。


 続く。

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