第18話 異世界は平面で出来ている
「おーい蓮くーん!野球しようぜぇー!」
「しよーぜー」
……三人で!?まぁ中島と磯野も二人だけど。
「二人共どうしたんですか突然」
休日、土曜日、昼食後。俺はネットサーフィン、ロコさんとほむほむはゲーム、各々インドア趣味を満喫していたのだが。なにやら二人でごにょごにょ話していると思ったら、何故か野球に誘われたという訳だ。
「あのね蓮君、落ち着いて聞いて欲しいんだけどね。……私、太ったの」
「そう、ですね……?」
我が家に体重計はないが、そう言われてみたら出会った当初よりもちょっとふっくらしてる気がする。まだ一週間も経ってないんですけど。
「私も私も」
「……そうですか?」
いや、お前は魔法でどうとでも体型変えられるだろうが!
「原因は分かってるの。あの戦いの日々を離れて緊張感も無くなったし、魔法もそんなに使わなくなったから。ご飯もおやつも美味しいし。これはね蓮君、摂取カロリーが消費カロリーを上回った結果なの。油断してたなぁ。あのね、向こうの世界はね、平面で出来てたの。地球は丸いから、何を食べてもカロリーゼロだと思ってたの」
そんな規模のゼロカロリー理論聞いたことない。
しかし、普段の彼女を見ていたら太る理由は明白だ。ご飯の後にはデザートを欠かさない。間食でカップ麺を食べている姿もチラホラ。さっきもほら、ゲームをやりながらポテチとコーラ。ポテチを箸で食べてくれるのは有難いけど、なるほど、デブの食生活そのものだ。
「分かりました。野球かどうかはさておき運動をしたいと。そういう訳ですね。同時に食生活の見直し……」
「それは良いの。いっぱい食べるの」
「私も食べるよ。また包丁買って欲しい」
遮られた。そしてほむほむに包丁をねだられた。
俺も勿論、こいつら良く食うなぁとは思っていた。それを指摘するのは簡単だ。しかしだ。異世界で戦って来たという彼女たちがどれ程のストレス下に晒されていたかを俺は知らない。食べることは幸せだ。それくらい別に良いんじゃない?と大目に見ていたのだ。断じて俺がムチムチな子がタイプだとか、そう言うことではない。
「今日は天気も良いですし、皆で公園でも行きましょうか。何かやりたいスポーツあったら言ってください。駅前でスポーツ用品買えますから」
「えっとね、それじゃあ私、あれがやりたいなぁ。……みんなのゴルフ」
「…………」
ゲームじゃん。eスポーツだからセーフ的な?おまけに現実でやるにしても一番運動量少ないくらいのスポーツじゃね?ダイエットする気あるの?
「私はあれが良いな。……サッカー盤」
「…………」
おもちゃじゃん。お前ら揃って外に行くないじゃん。最初の野球しようぜは何だったの?
「あの、どっちにしても運動にならないんで。それじゃあ、テニスとかどうですか。結構運動になりますし、俺も部活でやってるのでラケットあります。顧問の先生に話せば学校のコートも使えますし」
うちの部活は基本土日無しだが、練習したい生徒に対して解放してくれるのだ。俺も体を動かしたい時には碧斗を誘う事がある。
「でもそれだと1対2になると思うんだけど、蓮は大丈夫なの?」
「問題ないですよ」
自慢じゃないけど中学の時には全国大会の出場経験があったりする。素人二人相手にするくらい余裕。そもそもガチでやる訳でもないしね。
「ほむちゃん、大丈夫なの!私が2人になればちゃんと2対2になるでしょ!カロリー消費も2倍になるし、経験値も2倍入るし一石二鳥なの!」
影分身かな?
「……ちなみにそれ、何魔法なんですか?」
「菊丸分身魔法なの!」
「…………」
テニヌの方だった。なんでそっちなの?異世界でテニスやることある?
「いやあの、あんまり外で目立つ行為はちょっと……」
「そっかぁ……。あ!でもおうちを出るときから分身しておけば大丈夫だよ!服と髪型変えればホラ!」
ポムン!
ロコさんのむれが あらわれた!
「五等分の花嫁魔法の完成だよ!」
「五等分の花嫁魔法の完成だよ!」
「五等分の花嫁魔法の完成だよ!」
「五等分の花嫁魔法の完成だよ!」
「あの、部屋狭いんで……」
というか、そんなにいらない。むしろ目立つ。そして一人足りない。
…………その後。
結局俺達は三人で普通にテニスした。皆で良い汗をかいた。
運動後に自販機でロコさんがコーラを買おうとしたので、俺は心を鬼にしてゼロカロリーのコーラを買って渡したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます