第17話 キノコを食べると大きくなる

「うーん。いないよなぁ」


「蓮君、さっきから小賢しい顔で何を見てるの?」


 小難しい顔じゃなくて?小賢しい顔てどんな顔やねん……。


「群馬県の行方不明者を検索してました。今時ネットで見れるんじゃないかと思って。で、調べてみたんですけど、ネットで公開されているのは全部で16人。女性は5人。写真も付いてるので全部見てみたんですけど、ロコさんらしき人はいません」


「私のために調べてくれてたの?」


「ええ、まぁ。家族がいるなら会いたくないですか?会ったら記憶も戻るかも知れない」


「蓮……。(ウホッ!いい男……)」


 なんか誤解されるような印象を抱かれた気がする……。


「公開されている中で一番古い人で7年前です。可能性は二つ。ロコさんが異世界に飛ばされてから8年以上経っているか、そもそも届け出されていないか。ちなみに行方不明になってから7年経つと普通失踪といって行政上は死んだことと見なされるみたいです。それ以上は調べられませんでした。ロコさんは向こうの世界でどれくらい過ごしました?」


「どれくらいに見える?」


 年齢当てクイズじゃないんですけど……。でも前にオノマトペ魔法の習得に4年使って、魔王討伐はそれよりも掛からなかったと言っていた。だから最長でも8年のはずだ。


「8年ですかね」


「不正解なの!」


 あれ?何で?


「あのね、実は私、初めから勇者だった訳じゃないの」


 なんか話が始まった。気になるから聞くけど。


「最初の職業はね。遊び人だったの」


「…………」


 遊び人って勇者に転職出来るんだっけ……。


「だからね、向こうの世界に行ってから初めの3年くらいは遊んでたの」


 何して遊ぶんですかね……。


「異世界で目覚めた時、私は森の中にいたの。何処に行けば良いのか分からなかったんだけど、近くには川があったし、雨風凌げる洞窟もあった。自然の木の実や果物、キノコなんかも取れた。でね、私、キノコ好きなんだけどね、キノコって大抵毒じゃない?食べて良いか分からなかったから、スライムに食べさせて様子を見ていたの」


 スライムが食べて平気だからといって、人間が食べて大丈夫なんだろうか。


「そしたらね!キノコの種類によって、スライムに起きる反応が違うの!例えばね、赤いキノコを食べると大きくなるの。大きくなったスライムを上から踏むと小さくなるの。もう一回踏むと画面から消えるの」


 何で上から踏んだのか分からないし画面から消えるって何?


「あと音がするの。トゥルットゥトゥルットゥル♪って」


「マリオじゃん……」


「ひまわりみたいなキノコを食べると大きくなると共に色が白くなったの。あと火玉を飛ばしてくる」


「だからマリオじゃん……」 


「青と白の市松模様のキノコを食べると白い翼を授けられるの。そして飛んでいくの」


「それはえっと……、レッドブル?」


 なんでやねん。


「そんなこんなでスライムで遊んでいたの。色んなスライムが誕生して、そのスライム同士からまた別のスライムが生まれたりしてね。実は私の住んでいた森の近くには城下町があったの。所詮はスライムだし警備はちゃんとしてるから被害とかはなかったらしいんだけど、変なスライムが大量発生してるって事が問題になったの。それでね、王国騎士団が調査に来てね。なんと私は捕まってしまったの!酷くない?」


「…………」


 うん。割と自業自得なんじゃないかと思う。


「その後で鑑定を掛けられてね。スライムに起きた異常はキノコのせいじゃなくて、私の特殊スキルが原因だと言うことが分かったの。その名も、スーパーマリオブロス魔法」


「やっぱりマリオじゃん」


 特殊スキルと言いながらいつもの如く魔法だし。何故に英語表記読み?


「と言うことでね、最初の問題の答えなんだけどね、その後もなんやかんや勇者になったり魔法を開発したりして、私は結局、向こうの世界に11年いたの!」


「ちょっと端折り過ぎじゃないです?」


「尺の都合なの!」


「…………」


 なんやかんやの部分も結構気になるけど、今日の所はこの辺にしておくことにしよう。


 ただロコさんの身元は分からず終いだ。まぁ、焦らず探すことにしよう。



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