第15話 なんでも切れる剣

 前回までのあらすじ。ほむほむのために夕飯の買い出しに行くことになった。あと大人ほむほむの裸を見た。でも、良く考えたら僕の裸も見られてたっぽいので、ここは痛み分けかなって思いました。


 で、スーパーに向かう道中。


「ほむほむさんも魔法とかできるんですか?ほら、変身も出来るし服も作れる訳ですよね」


 ロコさんの話を聞いた感じはどちらも等価交換魔法の応用っぽいし、実は他にも出来るんじゃないだろうか。


「うん。色々できるよ。ただ、自分の能力を他人にホイホイ話すのは抵抗があるのよね。それって弱点を晒すようなものだし」


 なるほど。それはそうかもしれない。どんな世界でもそう。知られてしまえば対策が取られるものだ。それが直接命に関わるものなら尚更だろう。


「でも良いよ。この世界ではそんな事気にする必要無さそうだし。……私が剣という概念そのものだって話はしたよね。だから私が使える魔法も基本的にはそれに準じているの。変身とかサラマンダーはあくまでオマケ」


「へぇ。そうするとアレですかね。何でも切れるようにするために刃先の硬度を上げる魔法とかですか?」


 バフ系の魔法だろうか。


「そうね。考え方としてはそういうこと。ちょっと違うのは、切るための魔法というより、切ったという結果を残す魔法なの」


 あれ。雲行きが怪しいぞ。俺の「なんか聞いた事あるセンサー」が反応してるんだが。


「因果律の逆転、とでも言えば分かりやすいかしら」


 ……うん。スッゲー分かりやすい。だってそれ知ってるもん。有名な槍ですよね。


「……魔法という意味で言うと、何をする事になるんですかね」


 俺はせめてもの抵抗を試みる。


「そうね……。具体的には刃先が触れた瞬間に、対象物のマナ同士の繋がりを解くの。だから絶対に切断できる」


 分子結合を切断する的な?いや、凄いんだけどそれは果たして剣なのだろうか。化学っぽいんだけど。それに……。


「……あの、因果律の逆転の要素あります?」


「無いよ。格好いいから言ってみたかっただけ」


 そうなの!?


「……ちなみにその魔法、なんていう名前なんですか」


「斬鉄剣魔法よ。安心して。ちゃんとコンニャクも切れるし、まな板を切らないように上手いことやってるから」


 ……元ネタの弱点を克服してるのは良いとして、料理の時に使う必要あるんだろうか。


 そんな話をしている内にスーパーに着く。


「好きなものがあったら入れて下さい」


「うん」


 物珍しいためか、しきりにキョロキョロするほむほむ。ついでだから野菜コーナーで適当に野菜を入れながら精肉コーナーに進む。レバーと牛肉ゲット。味付けどうしようかな。青椒肉絲風に仕上げようか。


「ねぇねぇ。あれが気になるんだけど」


「うん?」


 ほむほむの指差す先を見ると、そこには家庭用の調理器具類がズラリと並んでいた。何だか分からないけど一緒に行く。


「蓮の世界、凄いね。私も頑張れば作れないことはないけど、一般大衆向けの道具にこんなに純度の高い金属が使われてるなんて信じられない」


 ステンレスの包丁を手にとって感心している様子のほむほむ。なるほど、彼女のいた世界の文化水準と比較するとそうなるのだろう。俺の頭には自然と中世ヨーロッパの風景が思い浮かぶ。何故かは分からないけど、大体そんな感じだと思う。


「これ、買って欲しい」


 そう言って彼女は、持ち手部分まで金属で出来ている5000円の包丁を見せてくる。スーパーに普通に売っている中では高い方だ。


「別に良いですけど、何に使うんですか?あ、もしかしてうちの包丁微妙でした?」


 いやしかし、彼女は料理の時にも斬鉄剣魔法を使うのだから、ぶっちゃけた話、包丁なんて何を使っても一緒なのではないだろうか。


「これが一番美味しそう」


「え?」


「それにほら、これなら持つ所も全部食べられるからお得でしょ?」


「…………」


 どういう事?え?そういう事?


「蓮はその、いっぱい食べる子は、嫌い?」


 何で急に女の子感出してるの?あのね?普通の女の子はそもそも包丁食べないの。


「……ちゃんとご飯食べた後ですからね!」


「やったぁ!」


 うん。自分でも何言ってるか意味分からんかったけど敢えて言うならアレだ。


 可愛い女の子のお願いは断れないって事で。



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