第14話 異世界の人達は大体厨ニ病

「さてと。片付けも終わった事だし、夕飯でも作りますか」


 あの後マッサージしていたらロコさんは寝てしまった。魔法で何でも作れるのはとてつもなく便利だけど、本人も言っていたように疲れるんだろう。そう言えば魔法の名前聞くの忘れてたな。起きたら聞かなきゃ。


「私に任せて」


「うぉっ!?」


 気付いたら横にほむほむが立っていた。ビックリするから止めてほしい。昨日はポムッ!って音してたじゃん。


「クセになってるのよね、音消して変身するの」


 なんなの。効果音消すオプションでも付いてるの?


「……良いタイミングですね」


「まぁ、私もずっと起きてる訳じゃないし、この姿でいるのも疲れるのよね。だから前の世界にいた時には、基本的にはロコが寝たら入れ替わる形で変身してたのよ」


 なるほど。確かに旅において一番危険なのは睡眠時だろう。交替で見張りをする的なアレか。剣って寝るんだなというツッコミは野暮ったいから無しで。……あれ?


「あの、ロコさんって仲間とかいなかったんですか?」


「もちろんいたよ?【時を開闢する者】  beginning of times  アローレン、【光の届かぬ丘】  the empty  エルト、【東方不敗】  master asia  シュージィ。いずれもその道で知らぬ者はいない傑物よ」


 ……何言ってるか意味不明だけど、最後のやつが格闘家なのだけは分かる。


「現実は甘くないからね。ロコという例外を除いて他のメンバーは漏れなく男。英雄色を好むってね。ロコもあんなだから、私が保護していたと言うわけ」


 サンキューほむほむ。おかげでロコさんの貞操は守られた訳だ。


「特にさぁ、エルトのやつが超イケメンで優しくてお金持ちで強くて、非の打ち所がないのよね。昼間もイチャイチャし腐ってからに。お姉さんゲンナリですよ。これは全力で邪魔しなきゃって」


「…………」


 ただの嫉妬だった。


「……この世界は平和みたいで何よりね。蓮もロコを襲ったりしないみたいだし、皆と同じ時間で生活するのも良いかもしれない。とりま、ご飯作りますか」


 ちょっと古い。ロコさんの影響だろうか。


「いえ、朝も昼も作って貰いましたし洗濯も掃除もしてくれてますよね。俺が作りますよ。ああ、そうだ。お昼も凄い美味しかったです。ありがとうございます」


 お握りは例のアレだったけど。


「お、おま!馬鹿!そういう事ほいほい言わないでよ!惚れちゃうでしょう!?」


 ……早くもキャラ崩壊してる。っていうかお前もチョロインなんかい!


「ほむほむさんは何が食べたいですかね。俺、結構何でも作れますよ」


「そ、そうなの?うーん。そうねぇ。私はほら、剣だから別に食べなくても平気なんだけどね。あえて言うならアレかな。鉄分が多い方が良いのよね」


 貧血気味の女子か。味のリクエストじゃないし。


「あとはニッケルとかクロムとかの合金元素も好き」


 用意出来るか!


「……了解です。とりあえず鉄分が多い食材って言うと、レバーとかほうれん草ですかね。ちょっと買い出し行きますか」


「私も付いていって良い?この世界がどうなってるのか、ロコの知識で何となくは分かってるんだけどね。実際に見てみたいって言うか」


「そうしましょうか。その方がほむほむさんの好きな物も選べるし。あ。でも、その格好はちょっと目立つかも……」


 ほむほむの見た目。赤黒い長髪のポニテ。浴衣。ハーフっぽい、非常に整った顔立ち。見目麗しい。そして、幼女。下手したら事案になっちゃいそう。


「そう?じゃあ、少し変えるね」


「え?」


 その直後、彼女の着ていた浴衣は粒子になって消えた。しかし安心して欲しい。彼女の裸は見えなかった。彼女の体は、丁度良い感じに発光して細部が見えなくなったのだ。……美少女戦士かな?


 あっという間に身長が伸びた。俺より少し低いから170位だろう。先程まで幼女だったほむほむはスレンダー美人に生まれ変わった。モデル体型。胸は小ぶり。っていうか真っ裸。


「……あの、何で変身後の裸は隠さないんですかね。自分で服作れますよね」


「ロコの作った服が可愛いから、それを着ようと思って」


「そうですか。隣の部屋に行くので、着替え終わったら呼んでください」


「別にいても良いのに。え?まさか童貞なの?キモーイ!童貞が許されるのは小学生までだよねー!」


「…………」


 いや、昨日教えただろうが!そしてネタのチョイス!知らなかったらマジで傷付くからな!?……まぁそれはそれとして。


 実際の所、勘弁して?目の保養というか、ここまで来ると流石に俺でも来るものがある。ヤバいヤバい。これ封印解けちゃうわ。封じ込められてた力で世界が闇に染まるわ。


 クッ!収まれ俺のリビドー!



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