第13話 なろう系女勇者

「ただいま……」


 いつもなら学校帰りに緑達とどこかで遊ぶが今日は素直に帰宅した。それはもちろんロコさんとほむほむが心配だったからだ。彼らが生きてるかと言うよりは、何か問題事を起こしていないかという点で。俺は靴を脱いでリビングに向かう。


「あ!蓮君お帰り!言われた通り色々揃えておいたの!偉いでしょ!」


 なるほど、彼女の周りには衣類を始めとした日常品や布団が散乱していた。もう少し片付けよう?


「えーと、偉いんですけど、どうやって手に入れたんですか?アマプラのお急ぎ便?」


 にしても早過ぎるけど。流石に布団は無理だろうし、そもそもロコさんはいつ起きたのだろうか。あれ。ほむほむは?あ、剣に戻ってる。服で埋もれてる。


「違うよ?蓮君に教えてもらった通りインターネットで調べてね、自分で作ったの!」


 へぇー、自分で作ったんだぁ。いや、どういう事やねん。


「でも、本物に比べるとランクは一つ落ちちゃうんだけどね……」


 なんか聞いたことあるような……。


「えーと。あ、あれですかね。この間の等価交換魔法の応用的な」


「鋭い!流石蓮君だよ!あのね、炎龍獄剣ホムラってね、実は剣という概念そのものなの。凄い剣なの」


 うん。それ昨日、本人から直接聞いた。


「だからね、ホムラと繋がっている状態で等価交換魔法を使うとね、歴史上のありとあらゆる剣を複製することが出来るの」


 いや、そうはならんやろ。


「私はこれを、アンリミテッドブレードワークス魔法と名付けたの。私の体は、きっと剣で出来ているの」


「…………」


 出来ててたまるか。名前なげぇし。


「それでね、インターネットで色々可愛い服を見てたらね、思ったの。これ、作れるんじゃね?って」


「……えーと、元は等価交換魔法ですよね。何を犠牲にして作るんですか?」


「えっとね、空気中の窒素を分解して素粒子……、じゃなくてマナを取り出すの。後はそのマナを弱い力とか強い力とかをなんやかんや魔法で作用させて望む形に再構築するんだよ!」


「…………」


 あの、フワッと誤魔化そうとしてるけど、物凄い事言ってない?ロコさんって実は頭良いんだろうか。そのうち聞いてみよう。


「もちろん、最初から作りたい物質の元がある方が簡単なの。だから普通の等価交換魔法とか瞬間移動に比べると少し疲れるの。私頑張ったから、マッサージして?」


「あ。はい。ちょっと着替えたり手を洗ってくるので待っててください」


 俺は身支度を整えながら考える。マッサージをするのはやぶさかではないが、これはどうしたものか。要するに彼女は何でも作る事が出来るのだ。体力の問題があるだろうから無限という訳ではないが。しかし世の中には小さくて価値のあるものなどいくらでもある。例えば金、宝石、レアメタル。うん。良く注意しておかないと。マジで危ないぞ。


「良し、と。ロコさん、マッサージですけど何が良いです?肩揉み?」


「え?揉むの?蓮君、そういうエロいのはまだ早いって言うか……」


「ちょっと過敏に反応し過ぎなんじゃ……」


 面倒だから俺は肩揉みを始める。女の子らしい良い匂いを期待していたけど、酒臭いんですけど……。


「んお"!んお"お"お"!あ"あ"あ"あ"!やっば!ぎぼじぃぃぃ!」


 ……快楽堕ちエロ漫画みたいな喘ぎ声止めてくれない?三次元では抜けない。


「ところでロコさん、さっきの魔法、というか他の魔法もですけど、誰かに見せたりしたら駄目ですよ」


「え?そうなの?」


「世の中悪い人が多いですから。ロコさんが特別な事が知れたらですね、それを利用しようとする人間が絶対にいます。ロコさんが嫌がっても強行手段に出るという事もあります」


「え?私、そんなに凄い?特別って、特別普通って事だよね?」


 また私何かやっちゃいました?的なドヤ顔止めい。というか散々自分で「凄いんだから!」って言ってただろうが!


「……蓮君は利用しないの?蓮君なら良いよ?蓮君、私を助けてくれたもの」


「いや、別に何も困ってませんから」


「でも、それだとお礼できないの」


「こんなに可愛い女の子と同棲出来るなんて、それがご褒美みたいなものです」


「……もう!そうよね!蓮君、分かってるんだからぁ!」


 めっちゃご機嫌。超テンション高い。チョロインかな?


 でも、そういうチョロい所も含めて、やっぱり可愛いなと思う今日この頃でした。



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