第6話 オノマトペ魔法

 ロコさんを拾ったのは良いけど明日は学校なのだ。その間、彼女には何をしてもらえば良いのか。俺はひとまずAmazonと楽天の使い方を教える事にした。


「こうやってここをクリックするとですね。ほら、カートに入ったでしょ。あとはそこから購入画面まで跳んで。住所とかクレジットは登録してあるのでそのまま注文を確定するボタンを押せばOKです」


「ほえー。凄いね!私が異世界に行く前って、こんな風に色々買えなかった気がする……。魔法みたいだね!」


 ロコさんが言うと重みが違う。でもまぁ確かに、こういう物流システムにしても家電にしても、大抵の人間は原理なんか知らずにただ使っている。昔の人からすれば魔法みたいな物だろうな。


「それでですね、俺は明日は学校なので、その間にロコさんは生活必需品を揃えておいて下さい。予算はどうしようかな。とりあえず10万円で」


「え!?そんなに良いの!?」


「結構すぐ無くなると思いますよ。下着だって今日買った分だけじゃ足りないし、いつまでもクッションって訳にはいかないので布団も買わないと。服を買いに行くための服がないから衣服も必要。あとは何ですかね。化粧品とか生理用品とか?」


 それだけあれば一先ず普通に暮らせるか?足らずに気付いたらその時また買えば良い。


「……蓮君、あのね、ありがとう」


 …………。うわ。やば。動悸が激しい。鎮まれ、俺。


「い、いや、拾ったからには責任を持って育てないと」


 俺は精一杯誤魔化してみる。誤魔化せてるかな。


「もう!私は野良猫か!お姉さん怒ったぞぉ!」


 ……古っ。なんか反応が古いんですけど。怒ってるのにニッコリ笑顔で少し汗かいてる感じのヤツ。って言うかプンプン煙が見える……。


「……あの、なんか煙みたいの出てますけど大丈夫ですか?」


「全然平気。魔法だから!」


 ドン!!


 ちなみにドン!!も見えてる。なにこれ。


「……それも魔法ですか?」


「そうだよ。意志疎通のために使うの。あのね、向こうの世界に行ったあと、不思議と現地の人達と言葉は通じたの。でもやっぱり、向こうに人達からすると私って異物なのね。人はね、分からなかったり、理解出来ない物が怖いの。だから、出来るだけ意思表示をはっきりさせるとね、それだけで結構違うんだよ」


「…………!?」

 

 めっちゃマトモな理由だった。正直言って驚いた。なんだけど、俺の周りにざわ……ざわ……出すの止めて?驚いてるの俺だけだし、ちょっと使い方間違ってない?


「基本的な事だけど、とっても大事なの。そうじゃないと読者も離れていっちゃうから。分かった?」


「……はい」


 ……いや、読者って何?良く考えたら異世界の人って漫画表現分かるの?


「はい!ここでロコちゃんのえっへんタイムの時間だよ!」


 なんか変なコーナーが始まった。


「実はこの魔法、ロコちゃんオリジナルなの!すっごい難しいんだから!まずは土魔法で使いたい色の物質を作るの。それを真空魔法でバラバラにしてから、重力魔法で表現したい文字や記号にするのね。光らせたい時は更に火炎魔法とかも使うの!凄いでしょ?」


 めっちゃアピールしてくる。多分凄いんだろうけど、魔法の無駄遣い感が半端ない……。


「……流石だと思います。ちなみに、これが出来るようになるにはどれくらい時間掛かるんですか?」


「4年くらいかなぁ。ぶっちゃけ魔王討伐より時間掛かりました。てへ」


「……」


 うん。4年も経ってたらさ、そもそもその魔法使うまでもなくコミュニケーション取れると思うんだよね。


 でも俺はわざわざそんな事は言わない。てへ、っとか言いながら自分の頭を自分で小突いて、魔法でキラキラお星さまを出している彼女がとても可愛かったからだ。


 ……可愛いは正義。ドン!!



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