第4話 装備を買う

 スーパーでの買い物が終わり、俺達は次に併設する服屋に向かう。若い女性が好みそうなお洒落な服を買おうと思ったら駅前まで行く必要があるから、今日のところは下着とパジャマ類が手に入れば良いだろう。あと当然だけどベッドは一つしかないから、何かクッションになるものも買わなければ。


「蓮君、どうしましょう。このお店、布の服しか置いてない……」


 どこに行ってもそれしかないですけど……。あえて言うなら革があるか?


「やばっ。防御力低っ!オイオイオイ。死ぬわ私」


 いや死なねぇわ。何を基準に選んでんねん。

 言いながらも彼女は熱心にパジャマを選んでいる。


「あの、さっきからロコさん防御力とか言ってますけど、どうやって判断してるんですか?」


「あのね、鑑定っていうスキルがあるの。あ、凄いんだよ!私の鑑定、レベル10なんだから!」


 えっへん、と胸を張るロコさん。可愛い。

 急に異世界っぽいスキル出てきたな……。なんかそれで無双するんでしょ?


「へぇ。使えば使うほどレベルが上がる的な?ちゃんと下調べしてから事に臨むのは偉いと思います」


「……商人」


「え?」


「商人がね、皆嘘付きなの。最初に王様から貰ったお金、全部なくなっちゃったのね。気付いたら不思議なツボと、鑑定スキルだけが残ってたの……」


 地雷踏んだわ。騙されるほど鑑定レベルが上がるって……。何その親切設計。でもレベル10になるまで騙されるってヤバくない?


「……。いやほら、異世界ですし、鑑定したらそのツボにも何かしら効果あったんじゃないですか?」


「レベル10で鑑定するとね、隠蔽された効果とか、もう全部見えるようになるのね。それで今まで見えてなかったツボの効果が見えてね。所持すればするほど鑑定レベルが下がるの……」


 いや、何個買ってんねん。 


「……なるほど。それはまぁ、しょうがないんじゃないですかね。うん。ロコさんは被害者ですし、全部商人が悪いです」


「……p.s.」


「え?」


 まだあるの?もう止めて?


「効果とかじゃないんだけどね。説明欄があって。……自分のデッキからカードを2枚ドローする、って」


 ……デッキってなんやねん。っていうかドローしてどうするの?


「あとね。最後の方に小さい文字で、馬鹿、って」


「……」


 あの、フォローできないんですけど。正直俺も思ってたし。いや諦めるな。男を見せる時だろう。


「でもほら、結果オーライじゃないですか!そのスキル、凄い便利そうですし!?」


 ……どうだ?


「そうなのよ!敵の弱点も分かるし、隠し扉の場所とかも分かるの!炎龍獄剣ホムラだってそれで手に入れたんだから!」


 再びえっへん状態のロコさん。可愛い。

 ふぅ。フォロー諦めなくて良かった。


「まぁ、火が弱点のボスいなかったんだけどね……」


 ……。オチ付けんなや!



 それから少ししてロコさんはパジャマを選び終わる。生地がモフモフしてて、フードを被るとリラックマになりきれる的なヤツ。一応それにした理由を聞いてみる。彼女曰く「フードを被るとね、攻撃力が少し上がるの!お得でしょ?」との事で、全く原理は分からないけどそれを着た彼女を想像するに全然悪くない感じがしたから俺も特に口は挟まない。


 で、下着。着替えを覗いていた訳じゃないから正確な所は分からないけど、今は向こうの世界で着ていた下着を身に付けている筈だ。戦いの邪魔になるだろうから恐らくはサラシのような物じゃないかと思う。それでもそのスタイルは隠しきれていないが。


「蓮君ごめんね、ちょっと待ってて。サイズとか分からないの」


 ずっと向こうにいたんだ。そりゃそうか。俺は素直に頷き、店員と共に試着室へ向かう彼女を見送る。程なく出てきて下着を選び始める。暇だなぁ。服とか興味ないから見る気も起きないし。あ、そうだ。クッション探さなきゃ。

 俺が適当なクッションを選んで戻ってくると、彼女は既に下着を選び終えていた。今度は早い。多分、効果に殆ど違いがないからだろう。


「あのね、ちょっとブラジャー大きくてね、あんまり選択の余地がなかったの……」


 ……なるほどねぇ。誠にけしからんわぁ。


 なんだか可哀想だし、帰ったらネット通販の使い方を教えてあげることにしよう。


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