第3話 女勇者の食生活
ロコさんを連れてスーパーに到着。もう今日は回転寿司で良いかなって思っていたけど、家に泊めてくれたりのお礼も兼ねて彼女が夕飯を作ってくれるらしい。
「向こうにいる時、ご飯ってどうしてたんですか?」
「基本的には倒した魔物の肉を食べるの。食べ物って結構荷物になるし、美味しい保存食とかも無かったから。それでね、とても上手に焼けるとこんがり肉Gになるの。食べるとスタミナが全回復するんだよ」
……なんかそれ、別のゲーム混ざってない?Gって言ってるし。
「もちろん、町や村に寄った時には普通のご飯も食べてたよ?あの世界では猫さんがコックやってる事が多くてね。とても美味しい上に、食べると攻撃力が上がったりスキルが発動するの」
完全にモンハンじゃん。どんな世界観やねん。
「へぇ……。ちなみに何が一番好きでした?」
「……酒×6かなぁ。良いアイテムが手に入りやすくなるの」
「いや、効果の話じゃないし、それは食事と言えるんですかね……」
っていうかワールド仕様なんだ……。
「私、猫さんに料理教えて貰ったから。色々作れるの。食べたい物、ある?」
「えっと、じゃあ肉系が良いですかね」
「はいはい、攻撃力アップね。そう来ると思ってました!やっぱり男は黙って火力特化よね。蓮君、可愛い顔して男の子なんだから」
いや、だから効果の話じゃないし、顔の事はちょっと気にしてるから止めて?
それからスーパー内を周り、肉やら野菜やらをいつもより多目に買い物カゴに入れる。途中、カップ麺コーナーで目を輝かせていたので好きなものを選ばせた。異世界にどれくらいいたのか聞いてないけど、当然そんな物無かったろうし懐かしいのだろう。
次にお酒コーナーで彼女の足は止まった。先程の話からしてもお酒が好きなのだろう。別に良いかと思い頷いて見せるとロコさんは「いやでもぉ。流石に悪いですしぃ……。もう、蓮君とっても素敵!」とかなんとか言いながらお酒を手に取りカゴに追加する。彼女が迷いなく手に取ったそれは日本酒。純米大吟醸。少し遠慮しよう?
さてレジでお会計を済ませようか、という所でロコさんがモジモジし出す。オシッコだろうか。
「あのね、蓮君。食べたい物いっぱい入れたんだけど、実は私、お金持ってないの……」
「そりゃまぁ、そうなんじゃないですかね。別に気にしないで良いです。幸い金銭的には余裕があるし、ご飯作ってくれるんでしょう?」
「それはそうだけど……。あ!そうだ!どれくらいの価値があるか分からないけど、向こうのお金なら持ってるの!」
と言って彼女は俺の前に手を差し出す。うん?別に何もないけど……。
次の瞬間、彼女の手のひらの上に拳大の巾着袋が現れた。
「……あの。それ、どこから出したんですか?おかしいな。ずっと見てた筈なんですけど」
「どこって……、四次元ポケット魔法?」
「……サラマンダー以外にも使えるんですね」
「でも、私のレベルだと小さい物しか入らないから少し不便なの。お恥ずかしい限りです」
顔を赤らめて何故か言い訳をするロコさん。
……いや、四次元ポケット魔法ってなに。普通はもっとこう、異空間収納とかさ。そんな感じじゃん?って言うか小物だけでもめっちゃ便利じゃない?
「そんな事よりほら、中身、見て!」
彼女が嬉しそうに言うものだから、もっとツッコミたい感情を抑えて俺は巾着袋の中を確認する。
金貨、金貨、金貨、金貨……。
巾着袋に入る程度だからそこまで量はない。でも試しに持ってみた感じ3kgはある。俺はスマホで金のグラム単価を調べてみる。約7千円。つまり2千万円相当。……うわぁ。
「綺麗でしょう?これから暫くお世話になる事だし、蓮君に全部あげるね」
「……あの、これ多分めっちゃ大金なので、いつか本当に困った時のために取っておいてください」
その後あげるいらないの問答になったが、最終的には一枚だけ貰うことで手を打つことにした。うーん。それでも貰い過ぎな気がする。
というかあの金貨は、彼女が世界を救った事に対する報酬なのだろうか。だとすれば異世界の王様は随分とケチな事だ。そこはせめて世界の半分だろう。
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