ろりすたでぃ!

白楼 遵

第1話 ロリアメリカ史

「うっわあ······」

12月24日。クリスマスイブに学校で手渡されたのは、クリスマスプレゼントではなく模試の結果。

五強化平均偏差値、54。

行こうとしている高校の目標偏差値を大きく下回る結果だ。

「······行けるのかな、俺······」

俺──桜宮さくらのみや 涼介りょうすけは、大きな溜め息を吐く。中学三年の受験を控えたこの時期にこの結果だ、溜め息くらいでるだろう。

「浮かねえ顔してんな、涼介っ!」

「うおわ!?」

びっくりしたじゃねえか、危うく椅子から転げ落ちるかと思ったぞ。

急に後ろから肩に手を置いてきたのは幼馴染みの杉野すぎの 恭平きょうへい。俺と同じくらいの学力だったのに三年になって急に勉強を始め、今や目標偏差値を上回る66の持ち主だ。

「あちゃー、54か、厳しいんじゃね?」

「仕方ねえだろ、テニス部が忙しかったんだからよ」

悪態をついてみる。

「俺だって元卓球部だぞ?それにお前は引退した後だらだら遊ぶからこんな事になるんだ

う、正論。

その通り、俺は部活引退後、遊び呆けていた。その間もこつこつ努力した恭平は「秀才」と呼ばれるほどの学力の持ち主だ。

仕方ない。

「恭平──俺に勉強を教えてくれ!!」

思いっきり頭を下げる。しかしこの幼馴染み、これでも素直じゃないから思いきり拒絶してくるに

「いいよ」

「いいのかよッ!!」

思わず叫んでしまった。良いのかよ、自分の努力を他人に分け与えるなんて、俺なら絶対やらねえぞ?

「涼介と同じ高校に行きたいからね、俺も協力するよ」

「恭平······」

優しさが胸に染みた。目頭が熱くなりそう。

「俺の勉強法は、ぞ?」

「望むところだ、食らいついてでもついていくぜ!」

こうして放課後、恭平の家へと集まる事となった。




「お邪魔しまーす······相変わらず飾り気のねえ部屋だな」

「これくらいが丁度良いんだよ」

勉強机、シングルベッド、スマートフォン、本棚······飾り気の無いこの部屋は、小学校の頃から変わっていない。

ような気もした。


「さて、どこがヤバそうかな?」

「あー······アメリカ史がヤバいんだ、模試で大問一個分出たんだが、三割しか取れてない」

10点中3点。これは危険だと思う。入試で出たらボロボロだろう。

「うわいみじき点数······オッケー、まとまった」

「うお、なんかすげえ」

何かまとまったらしい。

「オッケー、想像してみろ──鳥モモ肉まるごと焼いたアレ」

「お、おう······」

腹減ってくるじゃねえか、午後4時にそれは禁句だろ。

「アメリカ大陸あんな形だろ──」




そこは広大な土地、広がる草原や砂漠。そこには──黒人や白人、先住民族ネイティブアメリカンのロリがいる。


「──ってちょっと待てェ!!!」

「どうした涼介、もうわからないのか?」

「わかんねえよ!!何でロリ!?」

「ああ言ってなかったか?俺はロリコンなんだよ」

──は?

俺は理解が追い付かず、口を大きく開けた。

「三度の飯よりロリが好き。勉強に疲れた5月中旬、俺はふとスマホでツッタカターを見てたんだ」

アレか、神絵師やバカ面白いツイートする奴が多いSNS。

「そこに投稿されたロリのイラストが俺に突き刺さり──俺はロリコンとなった」

ふむ、何か理解。

という事は、あのブックカバー付きの本は······?

「アレはロリがバスケットボールする小説だな」

「何か知ってるそれ!?」

もうこれ以上突っ込めないし時間の無駄。そう気づいた俺はとりあえず勉強に戻る事とした。


これからの内容は、俺の脳内で行われたロリアメリカ史の内容だ。

多少拙くても許して欲しい。




アメリカ大陸には、色んなロリがいました。

彼女らはイギリスの植民地として働かされていました。

「わたしたちもじゆうがほしいぞー!」

「「「ほしいぞー!」」」

自由が欲しいので、イギリスに戦争を吹っ掛けました。いわゆる「独立戦争」です。さてアメリカンロリ軍団ですが、当然そのままでは先進国たるイギリスロリ軍団には勝てません。

そこに現れたのは、イギリスロリが嫌いなフランスロリちゃんです。

「わたくしがしえんいたしますわ!」とお金を投資、見事イギリスロリ軍団を倒し、晴れて独立、アメリカ合衆国となったのです。

そしてこの時出されたのが、「独立宣言」なのです。

そして独立軍のトップであったロリワシントンがアメリカ合衆国初代大統領となりました。



さて、独立したは良いものの、早くも内乱が起こります。

工業が盛ん、貿易は保守的な北部ロリちゃんズと、黒人ロリちゃんを奴隷として農業を行わせ、自由貿易を掲げた南部ロリちゃんズが対立を始めます。

「なんぶちゃん!こくじんろりちゃんいじめたらダメだよぉ!」

「ほくぶちゃんこそ!ぼうえきをじゆうにしないとおかねもらえないよぉ!」

対立が激化し、最初は口だけだった喧嘩も次第にプ○キュアのおもちゃで叩き合いの喧嘩と化します。

「南北戦争」です。

頭や腕を叩く喧嘩は、先に思いきり頭を叩いた北部ロリちゃんの勝利。

当時大統領であったロリンカーンちゃんはこう言います。

「ロリの、ロリにより、ロリのための──まちがえちゃいました、人民の、人民による、人民のための政治をめざします!」

そして放たれた言葉は──

「ひっさつ!どれいかいほうせんげん!!」

奴隷解放宣言によって、南部の黒人ロリちゃんは解放されたのです。


「とまぁまずはこんな感じかな」

「悔しいが絶妙に分かりやすい······」

年号などは別途押さえねばだが、基礎知識はするすると入る。下に小さな双子の妹がいるからだろうか、想像も難しくない。

あだ、問題は。

「ロリロリロリロリうるせえ·······」

いかんせんロリという単語使用率が多いのだ。ゲシュタルト崩壊起こすレベルで。

「まぁ初日だからね······じゃあ模試の範囲だった第一次世界対戦まで頑張ろうか」



1914年、第一次世界対戦、勃発。

ヨーロッパロリちゃん達がぽかぽか叩き合う中、アメリカロリちゃんは日和見をしていました。

「すごい、みんなぽかぽかしてる······!」

遠目に見ながら自分のおもちゃで遊んでいたアメリカロリちゃん、しかし、悲劇が起こったのです。

海を進むアメリカロリちゃんを乗せたお舟が、ドイツロリちゃんの潜水艦に沈められたのです。

あっぷっぷ、溺れるロリちゃん、なすすべなくお星様になっていきます。

「ドイツロリちゃん!わたしのくにのじんみん、ころさないでよ!」

「しょうがないじゃん!てきのふねだとおもったんだもん!ドイツわるくないもん!」

それを聞いたアメリカロリちゃん、カンカンです。お顔をりんごみたいに真っ赤にして、お友達のフランスロリちゃん達と一緒にドイツロリちゃんをぽかぽか。先に泣き出しちゃったので三国同盟の負け、三国協商の勝ちです。


来る1919年、フランスでベルサイユ条約が結ばれます。

「ドイツロリちゃん!ごめんなさいのおもちゃは!?」

「うぅ、そんなにはらえないよぉ······」

自国の損害分に加え他国の借金まで肩代わりする事になったドイツロリちゃん、半泣きでたくさんのおもちゃを渡しましたとさ。




「ここが今回の模試の範囲だね」

「すげぇ······するする入った」

アレほどこんがらがっていたアメリカ史が、こんなにも簡単に。ロリの力もさる事ながら、恭平の指導力と知識量に圧倒された。

さすがは秀才、教え方が違う。

「この後、世界恐慌とかも続くから見ておきなよ」

「あぁ、そうする······ありがとうな」

身支度を済ませ、恭平の家を出る。どっと疲労感が襲うが、心地よい疲労だ。

なんか、行ける気がする。

帰ったら歴史の教科書を開こう。

家路を急ぐのであった。

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