第6話

「――そういえば、カズマって別の世界から来た人ですよね」

「そうだけど、って急にどうした?」

めぐみんと一緒にベッドに入り、数分が経過した頃。

俺はてっきり、めぐみんはもう寝ていたと思っていたが......。

めぐみんは、天井の方を見たまま続ける。

「いえ、その......カズマの昔話を聞きたいと思って」

「ふーん......というか、前にも一度話したことあったよな?」

「あ、はい、ありましたけど......おさらいというような感じで、もう一回良いですか?」

「......?まあ、いいけど......」

昔話か......昔の事なんか、今ではあまり覚えていない。

「というか、カズマってどうしてこの世界に来たんですか?」

「あん?......たしか、俺の世界で一回死んだんだっけな......それで、目が覚めたらアクアがいたんだよ。で、アクアに異世界に行くことを勧められてな......」

「ちょっと待ってくださいよ、一回死んだって何があったんですか?」

「ああ............」

現実世界で死んだことは、あまり思い出したくはない。

「............いや、あれは思い出したくないんだ」

「えっ?......カズマにも、大変な思いがあったんですね」

今回のめぐみんは、どことなく優しい感じがした。

「まあ、うん。ってそれどういう意味だ?」

「いえその、カズマって、あんまり大変な思いをしたことが無いのかなって思っててですね」

これは、褒められてるのか......?

すると、めぐみんが俺の方を向いてきた。

「とにかく、カズマの世界では色々あったってことですよね」

「まあ、結論としてはそうかな」

そこで話は終わりかと思い、俺は天井の方を見て目をつぶる。

そして数分後。

「......?」

ふと、右手が柔らかくて暖かい何かに包まれた。

「ふふっ......」

その時、右隣からは小さく笑う声が聞こえた。

「おまっ......寝たんじゃなかったのかよ......」

「その、一つ言い忘れたことがありまして」

というか、この右手の柔らかくて暖かいのは、めぐみんの手だろう。

「これから先、大変なことが多いと思いますけど、でも頑張りましょうね。カズマ。あなたなら、これから先もずっと乗り越えれると思いますけど」

俺の右手を握り、天井の方を見て言うめぐみん。

めぐみんが言ったことには、なにか深い意味かあるのだろう。

「とにかく、今日はもう寝ましょうか。おやすみなさいカズマ」

「う、うん。おやすみ......」

おやすみを言った後でも、めぐみんはずっと俺の手を握っていた。


翌日。

俺は、朝からめぐみんの日課に付き合い、めぐみんの家に帰宅してドアを開けた。

「あっ、こめっこてばー」

「お兄ちゃん!」

「うおっ、なんだ?」

ドアを開けると、勢いよくこめっこがそこから飛び出してきた。

飛び出したかと思えば、俺に抱き着いてきた。

うーん......?これはどういうことだ?

「......というか、どうしてこめっこが」

「ごめんねカズマ、今こめっこちゃんと遊んでたの」

奥の方からそう言う、青髪アークプリーストのアクア。

「ごめんなさいカズマさん、ほらこめっこ、こっちで遊ぶよ」

謝りながら俺に抱き着いているこめっこを引き離す、めぐみんと同じアークウィザードのゆんゆん。(多分......)

「えぇー......むぅ、分かったー」

そしてしぶしぶ俺から離れていく、めぐみんの妹であるこめっこ。

「......どうですか?小さい子に抱き着かれるっていうのは」

俺の背中からは、多分ジト目で言っているであろうめぐみんの声。

「いや、その......別に、なんとも思わなかったけど......」

「そうですか、それは良かったです」

良かった、というはどういう事だろうか。

とりあえず、俺(おんぶしているめぐみん)は、家の中に入り、今日ものんびりと過ごす時間になってしまった。



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