第48話 side タラス⑤

 「くそっ!! なんてしつこい奴らだ」


 トワール商会に行ったのは失敗だったな。


 金もなくなるし、路地裏しか動けねぇぞ……


 こうなったのも、ドランが教えなかったせいだ。


 「ドラン、てめぇのせいで」


 「タラス様、それはあんまりですよ。オレが言う前に飛び出していったんじゃないですか」


 「ちっ。それを身を挺して押さえつけるのが、お前の役割じゃないのか?」


 「そんなぁ」


 使えそうなやつだと思っていたが、ドランはダメかも知れないねぇな。


 そろそろ切りどきか?


 「とにかく金だ。ここ数日、碌なもん食っちゃいねぇからな」


 「これを使って下さい。その……せめてもの罪滅ぼしに」


 あん? なんだよ、この小汚い袋は。


 「オレの全財産が入ってます」


 ほお。殊勝な心遣いだな。


 どれどれ……結構、持ってやがるな。


 しばらく、切らないでおいてやるか。


 「さて、軍資金も出来たことだし、夜の街に繰り出すか!!」


 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。使っちまうんですか?」


 当たり前だろ。金は使うもの。常識だろ。


 「その金でここから脱出しませんか? ここにいても、穴蔵暮らしに変わりはありませんよ。とりあえず、王都を目指すっていうのは。あそこなら情報も集まるし、トワール商会も好き勝手出来ないでしょうから」


 王都か……悪くねぇな。


 想像したら、女の肌が恋しくなってきやがった。


 「それじゃあ、行くか」


 「待って下さい!! 王都まではここからかなりの距離があります。その金じゃあ、心許ないですよ。ちょっと金を稼がないと」


 稼ぐ? 金は貢がれるもんだろ?


 「トワール商会で懲りたんじゃないんですか? とにかく、ここから近くのサンゼロって街を目指しましょう。最近、ダンジョンが出来たみたいで、稼ぐには好都合ですよ。モンスターを何体かやっつければ、王都までの路銀くらいは」


 ダンジョン?


 めんどくせぇな。


 そういやぁ、ドランはたしか『棍棒使い』スキルを持っていたな。


 「よし、分かった。ダンジョン攻略はドランに任せる。金を稼いでこい!」


 「タラス様は?」


 「ダンジョンがある街っていやぁ、夜の街もあるんだろ?」


 「今と何も変わらないじゃないですか!」


 少ない路銀と手にして、タラス達はダンジョンの街として賑わうサンゼロの街に向かう。


 その先に、ロスティ達がいるとは、夢にも思わずに……。

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