第4話

「待って!待って!!!」

「サツキちゃん、タツキちゃん!!お願い!!!」


アカリとカスミは必死になって二人を追いかける。

そこに現れるスノウ・プリンセスβ


「女神様の力を悪しきことに使う事は許されない!!」


β達はαに変身したサツキとタツキと闘おうとする。


街が炎に包まれる、そして人々の悲鳴。


タツキの瞳にその光景にを映し・・・



『何これ・・・サツキちゃん・・私達・・』『何をしてるの私達・・タツキちゃん・・・私達』


そこへブラック・スノウ総帥のスガタが現れる。

『何をしている!街を破戒し、人間を絶望の底に落とすのだ!!!』

スガタが手を伸ばす。

空は暗雲に包まれ、雷鳴が鳴り響く。


「洗脳が浅かったか?・そればらば!!!!」


「もうやめて!!」「これ以上ふたりに何かするなら許さない!!!」

アカリとカスミは双子を庇うようスガタの前に立つ。


「何をしている!」「危険だわ!やめて!」β達がアカリとカスミを助けるために走り出す。

・・・だが間に合わない。

スガタの攻撃を生身のまま受け、吹き飛ばされるアカリとカスミ。


『アカリちゃん!カスミちゃん!!!どうして!!どうしてこんな!!!』


サツキとタツキは・・・無表情な瞳に涙に濡らす。


『もうやだぁ・・』『誰も傷つけたくない』

『どうしてこんな事に』『・・・私達・・間違ってる・・・、間違ってるんだよ!』


αたちは自我を取り戻し、Aパート終了!



「きゃー!スガタきゅんを2週連続拝めるなんて・・尊い!尊死・・死・・・・、貢がせて!貢がせて!!!!!」

「いいからさっさとBパートを改変しろ!!!!」


女神に頭上にチョップするのはもう、今やお約束と言えた。



「なん・・だと・・」スガタが驚愕する。


『サツキ・タツキ・・・あなたたちの本当の姿を・・今わたくしが示しましょう・・』


ショタで金髪闇落ち属性が大好きな女神とは違う、本当の女神が双子に力を分け与える。


今こそスノウ・プリンセスαは、真の正義の戦士になったのだ!!!!!


「これが」「私達の本当の姿・・・」

「・・・・っく!行け!ブラツク・スノウ!!!!」


スガタが放つブラック・スノウ達が街に降り立つ。

だが変身したスノウ・プリンセス・α・βの敵ではない。

少々間延びする展開だが、敵を倒し・・・


街は元通りになり・・・・


サツキとタツキは泣きながらアカリとカスミに謝罪する。

だが・・・


「何言ってんの!もう、皆・・」「友達じゃない!」

アカリとカスミに抱きしめられて泣きじゃくる双子。



そして、そっと仮面を外すヒロイン5.6の指先が映し出される。


「え、嘘・・・!!ナルミちゃん?!ハヅキちゃん?!!!!」


EDをBGMにしてナルミとハヅキは困ったように微笑む。


「・・手伝いしかできないけれど・・」

「私達は、私達も、貴方たちの友達になれるかしら・・」


満面の笑顔のアカリの台詞。


「勿論!!!!」


6人の戦士が姿が水彩画の一枚絵に変わる。Bバート・ED共に終了!





「何だか中だるみしてきましたわね」

「はぁ?!!どこがだよ!」


女神は白い床に寝そべりながら続ける。


「何故かわたくし・・・こう3話の盛り上がりが収まる頃には飽きてしまいますのよ、どうせ次は合宿か、水着回でしょって

思うのですわ・・・・何故でしょう・・この、「もういいや」感は・・・」



・・・・・確かに。

毎週アニメを見ているとある程度のパターンが読める。

いくらそのアニメやキャラが好きでも録画してあるから『いつでも観れるからいいか』と思って視聴を辞めてしまう。

大体6.7話の時に思うんだ・・・・、最終回に向け、やっていないイベントを消化して終わるんだろう。

ハッピーエンドで終わるのは好きだけど・・・

ハッピーエンドに向かう道のりは主人公達の約束された成功を意味する事に気づいてしまうんだよな。

どれだけ仲違いしても、強敵が出てきても・・その盛り上がりが逆に「お約束」と言うか。


勿論、そこで嗚咽が漏れる程泣く良作もある。


でも、「あ、このキャラは死ぬな・・死=感動って脚本死なねーかな」と思う。

「死んでしまったキャラが実は生きてました」も、嬉しいけれどシラける。


じゃあどうすればいいんだよ!!!


あぁ・・・物語を作るって、本当に難しいんだな。

作り手は「ここで泣かせる」と思って書いたものが「否定」される。

逆に辻褄の合う設定でキャラを死なせても「批判」される。


本当はアニメなんて・・・1クールも必要ないのかもしれない。

5話まで全力で作って、投票でもして人気ある作品だけ続編を作ればいいのかもしれない。


しかし、今やアニメ業界に関わっている人間の仕事を奪う訳にはいかないのも分かる。

アニメ制作会社さんは勿論、原作者さん、絵描きさん、声優さん、OP・ED担当の歌手さん、音を作る方々・・

それをマネジメント、資金を提供する多くの会社、人々・・・・

あまりにも多くのものを背負っているからこそ、売れるように、売り上げが出るように、同じようなアニメが

作られる。作る事を要求させられている。


原作小説も・漫画も。


だから、数打ち当たる世界になっちまったんだ・・。

当たりが欲しけりゃ、数を出すしかないんだ。


誰もが夢見る。

夢を掴めるのはほんの一握りの人間だ、それでも、わかっているのに、ここに縋っている。

バカみてーに・・・その夢を掴むのは「自分」だと思っている。


俺たち視聴者は、わかっていてアニメに夢や希望感動を求めている。

でなきゃ、一年中・・アニメなんかチェックするかよ。

お子様向けアニメに大人が夢中になるかよ。


アニメってのは・・・



俺は子供の頃

『アニメや漫画なんか見ていると頭が悪くなる』と親に言われてた。

確かに、アニメや漫画に夢中になる大人なんか居ないと思っていた。

それは「恥ずかしい」事だと認識していた。


でも、

生活や、身体、心までもをすり減らしてでも「それ」を作っているのは「大人」だ。

自分が大人になった時、それに気付いた時。

それが不思議で・・・何故か笑えた。


そりゃそうだろ、幼稚園児が本気で保育士の先生と結婚したいと思う気持ち。

それは本気なのに「子供だから」と無かった事になり、

本人にも思い出にしかならないし

本人ですら真剣だったその気持ちを覚えているかどうかも謎だ。


誰かに何かを伝える事は、時間を経て経験を積んで

色んな事を学まなければ出来ないんだ。

それをいい大人が都会の真ん中で叫ぶ?

無理な話だ。

だから

自分自身には出来ないから・・・誰かに助けてもらって託すんだ。


そう、自分で考えた最強のキャラクターに、作品に・・・・

世界中に無視されても、貶されても、売れなくても。


「これが面白いと

正義はこれだと

感動するんだと


自分はここに居ると」


そんな独りよがり・・自分自身が発信しなくて、どうするよ。

発信して、無視されても、やりたいなら、

辞める事が出来なければ、やり続けるんだ。


作る、創る、造る。



「俺もこの作品本当にクソだと思うし、これからの展開も読めすぎて逆にウケるわ」

「あ~ら、前田様も同意見で嬉しいですわ・・でも、

わたしくしにはこのクソアニメをどうにかある程度改変してもらわなければ・・ふぁ~・・・」


横になって今にも寝落ちしそうな女神に告げる。


「改変は続けるさ、お約束の展開でな」

「スガタきゅんの水着姿とか?」

「お、それいいな」

「・・・・・・・・ふぇ?!」


女神が勢いよく起き上がった。


「・・よろしいのですか?前田様はスガタきゅん贔屓のわたくしをゴミクズのような

目で見ておりましたのに・・・」

「俺はこう見えても多くのアニメをレビューしてきた、当たりもはずれも大体1話や

声優の起用で看破出来る、正真正銘のアニヲタだ」

「ええ・・・それは・・・」

「今まで俺は観る側だった、でも今は違う!異世界?転移したんだ!

このクソアニメを改変して、ここは絶対盛り上がる!とか・・そういう事考えてた。」

「・・それでよろしいのですわ、それ以上は・・」

「女神、実はお前も視聴者側なんだよ!観たいシーンや、やりたい事は、発言しろ!」

「スガタきゅんのメイン回を!!!」


女神・・お前の素直な意見には正直引くわ・・

でも。


「それはいい案だ」

「是非、女神であるのわたくしとの出会い編なども・・」

「3秒くらいなら入れてやる!」


女神が生気を取り戻したようだ。

今・・訳の分からない踊りを踊り始めた・・・・


「尊死!尊死!!!!尊くて死んでしまいそう!!!!!」

「死んだらスガタに会えないぞ?」一応言ってみる。

「ブっ生き返る!!!生きる!生きるぅ~!!!!!尊み~!!!」


だから・・泣きながらズボンを掴むな。

ったく・・・・


この企画会議?が終わったら・・・次は5話の改変だ。

お約束てんこ盛りで行くぞ!!!



第四話「これで一件落着?!次は海の家?たこさんのたくさんのしょくしゅ?!!

     無理無理そんなところ無理無理よりの無理なんだからぁ~!」



第四話「繋がる絆 束の間の休日? お約束なんて!言わせないんだからね!」


改変終了!!!


待ってろ、戦士の強化合宿という名の水着回!

友情を深めて全員で朝日を観るシーンはお約束だからな、絶対に入れるぞ!



俺は戦闘ものも好きだけど、日常系も好きな・・・

平凡な、どこにでもいるアニメレビュワーだから。


だから、もう何も怖くないんだよ!

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