第3話
「さて3話だが・・・」
3話は俺にも記憶がある。
「ええ、衝撃的な内容でした・・」
女神も神妙な顔で頷いた。
「このクソアニメ、3話で既に総集編という最大の禁忌を犯したのです」
そう、この駄作アニメは色々な事情があったとは言え
1話、2話も内容スッカスカにも拘わらず「総集編」と題して
たった2話分をちょいちょい繋ぎ合わせた・・とは言え内容はスッカスカなので
風呂、シャワーシーン、大開脚転倒シーンをABパートで繰り返して放送したのだ。
本当に・・こんな作品・・よく企画が通ったな。
「もう3話は存在自体ない事にして大改編するぞ!」
「さすがは原田様!!」
「まずはOPは無しだ、あの曲がかかるとシリアスシーンもギャグになるからな・・・
ここは初っ端からブラックスノウ怪人が街で暴れるシーンから入る。
ヒロイン1は足の怪我をおして寮から走り出そうとする。それを止めるヒロイン2と主人公男。
だが既に敵の前にはヒロイン5.6がスノウ・プリンセスβに変身して闘っていた。
余裕で勝利したかに見えたβだが、なんと敵のボスがブラックスノウに特別な力を与え、さらに
巨大化させて街を襲う・・・・、ここでOP終わり。
Aパートは苦戦するプリンセスβに向かって、ヒロイン1が自分も協力させてくれ、と頼む。
迷うβ達・・、そこへヒロイン2も駆けつけて、ヒロイン2は普段大人しくて引っ込み思案で、
ヒロイン1を頼りにしている自分を変えたいと、自ら闘いたい、と大声で叫ぶ。
その姿に感動するヒロイン1。
一応ここで女神の力により二人の手には変身ステッキが再び現れる。
そしてふたりはスノウ・プリンセスに変身し4人でなんとか敵を撃退することに成功する
敵のボスは不敵に笑いながら「闘いはこれからだ」とか捨て台詞を残して退散する。
女神の神託を受けたヒロイン5.6はスノウ・プリンセスβとして、これからもヒロイン1.2を手助けする事を約束する。
しかしβはあくまでスノウ・プリンセスの影、女神の石も盗まれてしまい十分な力は発揮出来ない。
それを謝るヒロイン5.6を、ヒロイン1.2は温かく歓迎する。Aパート終了」
「ここで敵のボスを出してしまっても良いのでしょうか・・」
女神が設定資料を取り出す。
「何か問題があるのか?ボス登場は原作でもこの流れだったぞ?」
「そうなのです。このボス・・・ブラック・スノウ団総帥 シン=ノースは
幼い頃に両親をブラック・スノウに殺され
恨みを持っており、ブラック・スノウに復讐を誓うも洗脳されて操られている。
普段は主人公男の親友 狩野スガタ としてヒロイン達の動向を探っている。
また 狩野スガタ は普通の人間の振りをし、敵にやられたフリをして女神を騙し、
大宝玉ファイナル・アラウンド・トータル・チア・レインボー・スターの石を奪い
自らの体に取りこむ事で更に力を増したのだった。」
「狩野スガタなんて分かりやすい名前の奴にホイホイ騙されて
そのナントカ石を取られた女神ってお前の事か?」
「はい!わたくしです!だってみて下さいまし。
スガタきゅんったらこんなにかっこ可愛いんですのよ?
闇落ちショタ・・・大好物ですわ!!!」
見せられた資料にはスガタの設定がびっしりと書き込まれ、キャラの立ち絵は勿論、制服から私服、総帥姿の各衣装設定
色指定までしっかりと指定されていた。実際着色もされているラフ画も数枚あった。
「他キャラの設定がブラックスノウに侵食されるなか、
スガタきゅんだけは!スガタきゅんだけは!!守り通しましたの。
そのおかげで、彼は設定もしっかりしていて、色もついていて、良く動くので、本当につよ・・」
俺は・・今まで我慢していたが・・・・我慢していたが・・・・・
とうとう女神の頭に手刀を落とした。
何故?!と言いたげに頭を押さえる涙目の女神。
「何故じゃない!なんで敵を守ったんだよ!何故ヒロイン達の設定を守らなかった!!
ヒロインなんて数字で呼ばれて、一枚絵で、目が死んでて、事あるごとに下着か裸を見せる
痴女集団に成り下がったんだぞ!!全部お前のせいじゃないか!!!」
「お言葉を返すようですが!主人公側より敵キャラが人気が出るのは世の常ですわ!
この金髪碧眼闇落ちショタ×主人公男の・・・
それか部下に○○されるスガタきゅんの薄い本が!!!!
欲しいんですのよ!!!欲しいんですのよ!!!!」
「何が薄い本だ!お前本当に女神なのか?!」
「薄い本は芸術作品として女神に必要なものなのです!ホモが嫌いな女神なんていませ」
俺はもう一度手刀を喰らわせる。・・・・それ以上は言うな。
「この設定資料のボスのページを破ればいいんだな」
「そんな事はさせません!!!折角守ったのに!!!」
「じゃあどうすれば・・」
「大丈夫です!今まで原田様が改変して下さったヒロイン達は力を合わせて
スガタきゅんの洗脳を解き最後には共に闘う仲間になるのです!」
「そんな改変絶っっ対しねーからなぁ・・
何なら最終話で洗脳が解けてヒロインを庇って死ぬとかもありだ」
「そんなの駄目ですわ!嫌ですわぁあああああああん!!!」
女神は俺の服を掴んで泣き叫ぶ。
やめろ!ズボンが脱げる!!!離せ!!!!
「まぁ・・俺も死にネタは得意じゃないしな・・・死んだと思わせて実は生きてたって
設定にしてやるから!離せ!」
「ばらだざまぁあああああああああああん!!!ありがどうごじゃいますぅううっ!!!」
「泣くなって!!!次!Bパート行くぞ!!Bパートから双子を出すぞ。
ヒロイン3.4の出番だ。今まで空気だったヒロイン3.4は道に迷っている所を主人公男に助けられる。
彼女達の行き先はヒロイン達と同じ寮だった。
ヒロイン3.4は1話からヒロイン達と同じ教室に居て、存在していたが
実はブラック・スノウの幹部。
二人はスガタに一時的に操られヒロイン達と同じ寮に住む事になる。
必要以上に主人公男に接する双子にヒロイン1・2は心中穏やかではない・・
という描写もさりげなく入れてやろう・・」
「お約束のハーレム展開ですわね!」
「双子設定のヒロイン3.4はヒロイン1.2にも積極的に接していく。
Aパートの戦闘を近くで見たと言い
そこでヒロイン1.2が変身する姿を見たと告げ、変身した姿を見せてほしいと頼み込む。
ヒロイン1.2は押し切られる形で魔法のステッキを双子の前で見せる・・
その時双子は敵に操られるままにステッキを奪い、今度は自らスノウ・プリンセスαとして変身し、
街を壊すと宣言する。ここでEDだ」
「まぁ!これで3話以降も視聴続行決定ですわね!では、ちゃちゃっと改変して参りまぁす!!」
辺りが光に包まれる・・・
「愛田!桂!どこ行くんだよ!こんな時間に!!」
「ごめん!すぐに戻るから!!・・・君」
お、主人公男がヒロイン1.2を引き留めたな・・・それでも走り出すヒロイン1と
必死に追いかけるヒロイン2。
「アカリちゃん待って!!私達もう闘わなくていいんだよ?!」
「カスミちゃん・・・でも・・・・でも、じっとなんてしてられない!
私が頑張らなきゃ・・・頑張らないと・・!!」
やっと怪人の前にたどり着くが、そこにはスノウ・プリンセスβが次々と敵を倒す姿が・・・
「手伝いたいけど・・」「魔法のステッキがないと・・・」
あと一歩で最後の敵が倒れる・・・、その直前に空から不敵な笑い声が響く。
「お前らがスノウ・プリンセスとかいう奴らか・・・ボクの邪魔はさせない・・・
再度目覚めよ!ブラック・サンダー!!」
天から雷が落ち、倒したはずのブラック・スノウ達が一体化し巨大な怪人の姿に変わる。
驚きつつ反撃するβ・・しかし相手は一撃で二人を倒してしまう。
「私たちに出来る事はないの?!お願い私たちに力を下さい!!」
ヒロイン1、アカリは涙ながらに訴える。
「・・私・・・」
そしてヒロイン2、のカスミは涙目になりながらも両手を握りしめ叫ぶ。
「私!闘います!!いっ・・いつもアカリちゃんに・・頼ってばかりだからっ・・・
そんな・・んじゃ・・駄目だから!!
強くなり・・・た・・・・強くなりたいです!!!」
カスミの言葉に驚き、そして頷くアカリ。
そこに女神の姿が現れ・・・
「スノウ・プリンセスβ・・そなたたちの力はまだ十分ではないのです。
わたくしが力を取り戻すまで、どうか新しい戦士たちよ・・勇気があるならその力、
どうかお貸しください・・」
女神の天啓と共にアカリとカスミの手には魔法のステッキが現れる。
「行くよ!カスミちゃん!」「うん!アカリちゃん!!」
『ふたりで・・・せーの!スノウ・プリンセス!!!』
変身バンクには力を入れたいところだが・・今はまだ無理そうだな・・。
新生スノウ・プリンセスとβは協力して敵を倒す。
「ふん、今日はこのくらいにしておいてやる。次の機会を楽しみにしておくんだな!」
お決まりの捨て台詞と共に空に消える総帥。
笑顔で抱き合うアカリとカスミ・・それを少し離れて見守るβの一枚絵でAパート終了。
『あの、すみません・・この場所を探しているのですが』
双子登場。棒声優だが二人同時にセリフを言わせれば誤魔化せる気がする・・・・
「ここ?ああ、この住所なら・・・寮だね、僕も寮生なんだ。案内するよ」爽やかだが、まだ目が生えて来ないし
まだ名前も無く、後ろ姿のみの主人公男。・・・頑張れ・・・・
「・・・もしかしてアカリちゃん、サツキちゃんとタツキちゃんに嫉妬してる??」
主人公男にべったりな双子・・サツキ・タツキ・・に嫉妬が隠せないアカリ。
「・・・君は誰にでも優しいから、私はちょっと・・・妬けちゃうかな?」くすくす笑うカスミ。
「そんな・・嫉妬なんてないけど・・、・・・君が誰にでも優しいのは本当だもんね」つられて笑うアカリ。
双子に呼び出され、昨日の闘いの事を問い詰められるアカリとカスミ。
『本当にちょっとだけでいいの、変身するところ見せて!お願い!!』
双子の必死なお願いに・・・少しだけなら・・・・と、指輪からステッキを取り出して見せる。
『この時を待ってたの!!』双子は急に表情を失くし、魔法のステッキを乱暴に奪うと
『ふたりで・・せーの!!スノウ・プリンセスα!!!』なんと二人が魔法少女に変身してしまった。
『この姿で街をめちゃくちゃにしてあげる!!』
感情無く言い放ち、二人は街へ・・・それを必死に追いかけるアカリとカスミの一枚絵。
Bパート終了!ED!!
第三話「そうしゅうへん!えー!!色んな所が見えちゃって無理無理~無理よりの無理なんだからねっ!」
改め
第三話「新たなる敵?!スノウ・プリンセスα! ふたりに届いて!私たちの声!!」
終了!!!
「なんだか私、女神っぽいですわね!良い出来ですわ!ヒロインの名前もほらこのように・・」
設定資料集に今回わかったヒロイン1.2.3.4の4人分名前が戻って来た。
だが、キャラ画は立ち絵のみだ。設定もせいぜい2行程度。
「そういえば・・」資料集を見ながら思いだす・・・
「なんか、こういう魔法少女にありがちな小動物みたいな妖精みたいなの、居なかったか?」
「はい、妖精は一匹いましたが、「モロ見え」を防ぐ・・
所謂「みせられないよ!」的な立ち位置でしたので・・・
こうもシリアス展開が続きますと、アレの存在も必要無くなったのでしょうね・・
消えてしまいました」
「いやいや・・、妖精はほら、魔法少女にアドバイスとか必殺技とか授けてくれるだろ?必要だと思うよ?
それにせっかく魔法のステッキがあるんだから、指輪じゃなくてブローチとか
ポーチにした方が、より魔法少女らしくなるんじゃないか?」
「いいんですのよ!大手おもちゃ会社とズブズブな長寿番組ではございませんし、ここはそれらしい何かで十分です。
でもスガタきゅんのフィギュアは是非とも欲しいので、造形師様が集まる祭典には是非参加しようと思っておりますし、
スガタきゅんのフィギュア作成は、わたくしが責任をもって許諾いたしますわ!命に替えても!!」
こいつ・・既に造形師に依頼とかしてそうで怖いな・・・・
さっきから改変された3話の同じシーンばかり見ては巻き戻し、一時停止しては
スクショしてやがる・・・・
カシャーカシャーうるさいし・・何枚撮る気だよ。
「とにかく妖精みたいなのは一応置いとこうぜ、力を失くした女神との通信役とか、敵の設定説明役に使えそうだし」
「まぁ、わたくしはどちらでも・・・・・」
「おい、女神・・お前力を失くしてるんだよな」
「このスガタきゅんだけで白飯3杯は余裕ですわ~」
「じゃあ、もう俺帰っていいか?」
「原田様!」
だから、ズボンを引っ張るな!!!
「原田様に素晴らしい改変をして頂いているおかげ様で、こうしてわたくしの力もジョジョに奇妙に戻りつつありま・・・ふっ、」
何自分で言って自分でウケてんだ。
「原田様・・今まで改変した話数を覚えて」「3話だよ!」
「ぶふっ・・・ふふ、GJな解答ですわ!そこに」「もういいから!」
「お前が力を取り戻すって事は、スガタが改変した世界を元に戻し・・、
それに気づいたスガタは再びこの世界に戻ってくるって事か?」
「フンス!!!!フンス!!!!」
うわうわ・・・そんなに首を縦に振るな。怖いし気持ちが悪い・・。
「逆にスガタは、元俺がいた世界で良作アニメでもクソアニメに変えてしまう・・・と」
「そこまでの、力は、さすがに、ありま、せんの・・・」
ほら・・ヘドバンしすぎてバテバテじゃねーか・・
「でも、この・・作品に、関わった人物に多少影響を及ぼしかねませんわ・・
脚本家さんのスランプやら原画担当さんが
気落ちするとか・・その程度かと。ちょっとした呪いみたなものですわね。
ちなみに本当のスガタきゅんは今原田様が改変して下さった方で、
思念といいますか・・意地でもこのアニメを変えてやるという
スタッフさんの無意識な悪意に反応して
スガタきゅんの一部が・・ブラック・スノウとして外に漏れだしてしまったのが
そもそもの原因ですの。
その一部がこの世界に戻らないと、スガタきゅんの洗脳が解けるかどうか・・・・・
わたくし、それだけが心配で心配で・・」
「・・・・・・・・・・」
「それだけが心配で、必死に原田様をお呼びした次第」
「帰るわ」
「原田様!!神様!!!どうかこのクソアニメを・・どうかっ・・・!!!!」
「・・・・」
「今までの改変、大変お見事でございました!さすがはクソアニメを
わざわざ考察する・・お時間を持て余したお方!」
「悪口にしか聞こえねーぞ・・・」
「このまま素晴らしい改変が続けば円盤の売り上げも上がり、
もしかしたら2期制作決定!とか映画化!とか!!」
「無理だろ!」
「ですが円盤では内容は改変され、新規描きおろしストーリー?全く別もんじゃね?みたいなムーブメントが起こるのは確かです!」
「まぁ・・ここまで変えちまったら別もんだしな・・・」
「この円盤!売れます!とあるサイトのレビューに
「カラス避けに最高!」とか書かれずにすみます!!
まだ1巻しか出ていない、しかも何を考えたのか1巻に1話しか収録されていないものを発売してしまった今が、今こそが!!大改変のチャンスなのです!」
「・・・・・」
まぁ・・ここまで変えておいて見捨てるのも・・女神の真の目的は無視するとしても・・・・
現実世界のスタッフにまで影響があるとか言われたらさすがに・・・引き下がれないよな・・・・。
「でも・・俺以外にもいただろ?このアニメ叩こうとしてアニメ見返してた奴」
「いいえ!原田様以外、この日本でも世界でもあの時間帯、あのアニメを視聴していたのは原田様ただお一人でした!
しかも1話から繰り返し・・3時間にも渡って視聴して下さったのは、原田様のみ。
いいえ・・ここは「唯一神ハラダ」と改名してもよろしいかと!」
なんか・・俺・・・辛ぇわ・・・
恥ずかしいわ・・・・・
俺は根が真面目なんだよ!
駄作をただの駄作と説明したって面白くないだろ!
だから矛盾点や、設定がおかしい所を探してたんだよ!!!!
ネタを探して!台本を書いてたのっ!!!
俺が真面目なのがいけないのかよっ!くそっ!!
「さぁ・・・俯かないで顔を上げて下さいまし・・・・唯一神ハラダ」
「次その名前で呼んだらチョップな」
「原田様!次は4話目ですわね!!はりきってどうぞーーー!!!!改変はいりまぁす!!」
どこの居酒屋だ!このクソ駄女神が!!!
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