彼女たちの24歳~白石櫻子編~

1 看護大学を卒業した櫻子は、研修医の政岡猶之と出会う

 白石櫻子は現在、看護大学を卒業して、総合病院の産婦人科に勤務している。夜勤や急な呼び出しに対応しなければならず、忙しい日々を送っている。そうはいっても、恋愛は別で、研修医の政岡猶之なおゆきと交際している。

 櫻子より二つ上の政岡は、大学医学部6年間を経て国家試験に合格し、臨床研修医としてこの病院に来て2年目になる。来年には別の病院に行く事になるが、櫻子とは昨年の10月から付き合い出した。夜勤を共にする事が多く、若い二人は自然と魅かれ合った。櫻子は以前から男の性衝動に関心を持ち、高校の時に年下の男子を翻弄し、19歳の時にはSNSを使って男あさりをしていたが、結果として痛い思いをしてしまった。それからは自粛して学生生活を送り、初めての恋人が政岡であった。ただ、恋人と言っても、彼とはベッドを共にした事はあるが、彼女の事情から一線は越えていなかった。


 病院に勤め出して3ヵ月は、櫻子にとっては研修の日々であった。同じく政岡も初めて研修医として病院に勤務し、仕事に追われていた。二人は夜勤明けのある日、政岡が声を掛けて食事を共にした。それからも幾度か機会があり、仕事の辛さや人間関係の憂さを語り合い、意気投合し距離を縮めていった。

 10月になって仕事にも慣れて、櫻子は仮眠室にいる政岡を訪ねた。もちろん、患者の様態について相談に行ったのだが、それだけで終わらなかった。

「白石さんは、僕の事をどう思っていますか?僕と付き合って下さい。」と政岡は告白した。櫻子はいつか告白されるだろうという予感があったので、その場で承諾した。政岡は喜んで、彼女を抱き寄せキスをしようとした。

「政岡先生、ダメ!ここは病院だから、そんな事をして見つかったら大変な事になります。先生の気持は分かりましたから、仕事が終わったら待ってます。」と櫻子は冷静に対応し、その場を後にした。

 二人の交際は順調にスタートし、年が明けた頃にはお互いの部屋を行き来するようになっていた。それまでは勤務が不規則で、中々会う機会が持てなかったが、それでも仕事の帰りや休日が合った時にはデートしていた。二人とも住んでいる所は病院の近くで、もっぱら櫻子の部屋で会う事が多かった。

「お帰りなさい!今日の患者さん、無事出産したの?お疲れ様でした。」

 新婚の妻が帰宅した夫を迎えるようなこの時が、櫻子は好きだった。消毒の臭いの残る猶之に、抱き締められキスされるのも好きだった。一緒に食事をした後、彼の隣に座って肩に頭をもたせ、まったりするのが至福の時だった。

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