4 尊は司法試験に合格し、杏の部屋でキスをして抱き合う

 9月に司法試験の合格発表があり、尊は合格を果たした。来年度からは司法修習生となる事が決まっている。尊は喜び勇んで杏の部屋を訪ね、二人はビールで乾杯し、合格を祝った。

「尊君、おめでとう!先を越されたけど、私嬉しい。お祝いに、何でもして上げる。」

「ありがとう、杏ちゃん!2回目でやったよ。君も来年は受験だから、頑張らないとね。お祝いはそうだな、キスがいいかな。」

 尊がふざけて口を突き出すと、杏はそれを手で押し戻した。

「私のキスはそんなに安くないよ!彼女には報告したの?彼女にしてもらいなよ。」

「それが、彼女とは別れたんだ。」という彼の顔を、杏は驚いて見ていた。

「杏と仲良くしている所を目撃されて、言い訳したんだけど分かってくれなかった。」

「それじゃ、私が別れた原因なの?」

 杏には思い当たる節があった。二人で夏に居酒屋で飲んだ帰り、杏が飲み過ぎて歩けなくなり、街中で彼に介抱された事があった。杏は彼に抱き付き、抱えられて歩いていた事を思い出した。どうやらそれを、尊の彼女に見られたらしい。

「君が原因ではなくて、彼女は前から別れたくて、きっかけになっただけだよ。」

「ごめんね。尊君には、迷惑ばかり掛けてるね。やっぱり私の責任だよ。」

 杏はうなだれて黙ってしまい、彼が逆に慰める役に回った。ビールを空けた後は、焼酎の水割りに替わっていて、二人は止めどなく飲み続けた。

「尊君、キスしていいよ!私にキスして!」と杏は唐突に言い出した。

「杏ちゃんは酔っているんだろ?さっきは、安くないって言ってたよ!」

「そうだよ、安くないよ。だから、キスで罪滅ぼしするの!」

 杏は酔った勢いで、彼の首にしがみ付いてキスを求めた。尊は彼女の求めに応じ、唇を優しく重ねた。二人は酔ってはいたが、お互いを意識した初めてのキスだった。

 そして、杏は自ら下着になって、彼をベッドに誘いしばらく抱き合っていたが、

「俺達は酔っているから、ここまでにしよう。」と尊は彼女に申し出た。

「俺が彼女に振られて、君は自責の念で抱かれようとしている。杏ちゃんのことは前から好きだったけど、成り行きで抱くのは嫌なんだ!もう少し時間を掛けて、冷静になって君のことを考えたい。」

杏は始め納得いかなかったが、彼の優しい心遣いからの説得を受け入れた。

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