第12話 バス③
膝の力が抜けた。そのまま下にぺたりとしゃがみ込んでしまった。
運転手は前に向き直って、何事もなかったように運転を続ける。
バスは山道に入り、うねうねと道を上り始めた。ガタガタと伝わる振動に耐えきれず、立ち上がって近くの席に腰掛けた。乗客たちは、関心を失ったらしく、もうこちらを見もしなかった。
バスは、しばらく走ると、徐々にスピードを落とし始めた。終点に着くのか、それとも、どこかに止まるのだろうか。おじさんの言葉を思い出した。誰かを乗せるということか。
一か八かだ。席を立って乗車口に向かう。バスが停車して、扉が開いた。外は白く霞んでいて、よく見えない。ステップを降りようとして、ばちんと体が弾かれた。体がビリビリと痺れる。何か壁のようなものがある。
もう一度試した。やはり弾かれてしまう。駄目か?
そう思った時、白く濁った壁の向こうから、一本の腕が突き出した。そのまま、グイッと肩を掴まれ、力任せに外に引っ張り出される。
日射しが眩しくて、目がくらんだ。
「一体、何をしてるんだ。」
いきなり、怒鳴られた。聞き覚えのある声だった。
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