第11話 バス②
「同じって、何がですか」
声を荒げると、おじさんは言った。
「生きてないってことだよ。まさか気づいてなかったのかい」
「まさか」
死んだって言うのか。そんな馬鹿な、有り得ない。
こちらの口論に興味を惹かれたのか、前方の乗客たちが、一斉にこちらを見た。皆、面白そうに、うす笑いをうかべている。その表情は、どこか虚ろだ。空気がちりちりと冷たくなる。
「すみません、降ります」
席を立って、車両の前に向かって歩き出した。気味が悪くて、これ以上乗っていられない。
「無駄だよ」
背後でおじさんの声がした。
「終点まで降りられないよ。まあ、乗る人はいるけどね」
乗客たちは相変わらず、じろじろと見ている。構わずに運転席の所まで進み、運転手に声をかけた。
「止めてください」
運転手は黙々とハンドルを握り続ける。ブレーキを踏む素振りはない。
「聞こえてます?」
相変わらず無反応だ。苛ついてかがみ込むと、運転手が、ふとこちらに顔を向けた。それを見て、ひっと叫んでしまった。
運転手の顔は、つるつるの真っ白で目鼻がなかった。
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