第5話 電話②
受話器を取って右上の細い投入口の中に十円玉を入れた。幸い、実家の電話番号は何とか覚えていた。子どもの頃、祖父母の家にダイヤル付きの黒い電話があったのを、うっすらと思い出した、確か、こうしていたはずだ……
恐る恐るダイヤルの穴に指を入れた。数字盤右下の金具に、かかるまで回せば良かったはずだ。スマホとは、勝手が違い過ぎて、
何度か呼び出し音が鳴った後、誰かが出た
「もしもし?」
向こう側で、何か話しているが、ボソボソと声が小さい。いや、電話がおかしいのか。やけに声が遠い。
「もしもし、聞こえますか?」
声を少し大きくしてみたが、駄目だった。
何度か、押し問答にもならないやり取りを繰り返した後、ビーと警告音が鳴って、電話が切れた。時間オーバーだ。
気を取り直して、再び10円玉を入れた。落ち着いて、慎重にダイヤルを回す。しばらくして相手が出たが、やはり同じことの繰り返しだった。今度は向こうから電話を切られた。
もう一度かけてようとして、ふと迷った。残りは、後十円と少しだ。使い切ったら何もできなくなる。もっとも、使わなくても同じだが。
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