第4話 電話①

「電話を貸してください」

 そう言うと、煩わしそうに答えが返ってきた。

「電話?電話なら外にあるよ。そいつを使いな」

 言われた通り店の外に出ると、右手のタバコ売り場のガラスケースの上に、電話があった。ダイヤル式の赤電話だ。


 正直、こんなものが、まだ残っていたことに、ひどく驚いた。ただ、問題はそこではない。このタイプの電話って、どう使えばいいんだ?

 再び店の中に入り、奥に声をかけた。

「すみません、この電話、どう使えばいいんですか?」

「え、何だって。あんた、そんなこともわからないのかい?受話器上げてお金を入れて、ダイヤル回せばいいんだよ」


 電話のところに戻り、ポケットから財布を取り出した。開いてみて呆然となった。

 入っていたのは十円玉が三枚と五円玉が一枚、それから一円玉が二枚だった。後は、キャッシュカードとクレジットカードが一枚ずつだ。


 思えば、ここのところ、忙しくて銀行に行っていない。そのうえ、最近支払いは、ほとんどカードや電子マネーで済ませていたから、あまり必要を感じなかった。

 今回も必要になったら、途中のコンビニで引き出すか、最悪実家の方の銀行ATMで何とかなるだろうと、たかをくくっていた。これでは、バスにも乗れない。誰かに迎えに来て貰おう。 

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