第16話 3歳の約束
「杏紗ちゃん!久しぶり!」
「え?!」
私の知り合い?! え、私女子高生の知り合いなんて……ん? なんか、声が完全にイケボ……
あ!女の子以上にかわいい男の子なら、知ってる!!
「
「なんだよ、5年くらいですぐ気付いてくれねーのかよー。俺悲しいわー」
うわ! こんなかわいいまま成長するなんて完全に予想外だった!! 絶対第二次性徴で変に男っぽくなってかわいくはなくなるだろうなと予想してた!
「だってめちゃくちゃ大きくなってるんだもん。前に会った時って、たしかまだ小学生だったでしょ?」
「うん、6年生だった。ねえ、家入るよ」
「あ、ちょっと! ……まあ、いいけど」
孝寿は勝手に靴を脱いでリビングへとまっすぐ入って行ってしまう。
しょうがないな、あの子は。体だけ大きくなって、中身はまるで変わってないのかしら?
直くんが怪訝な顔をしている。
「……誰? 弟?」
弟と会うのが5年ぶりで顔もろくに覚えてないって、どんな複雑な家庭よ。
「親戚の子。私のお母さんの兄の嫁の妹の子供なの」
「兄の嫁の妹? じゃあ血の繋がりはないんだね。遠縁の親戚って感じか」
私達もリビングに戻る。孝寿がダイニングテーブルに広げられた過去問を手に見ている。
「その人高校生なんだ? 杏紗ちゃん弟できたの?」
いや、会ってない5年の間に何があったってのよ。
「彼氏だけど、孝寿のママに絶対言わないでね! 絶対私のお母さんに伝わるんだから!」
会わせろとか結婚はとか、絶対騒ぎ出す。まだ、そういう段階じゃないうちは隠しておきたい。
「彼氏?!」
「あ、高校生じゃないわよ! ちゃんと成人してるから! 高校生と付き合ったりしてないから! 社会人として!」
驚いた様子だった孝寿が、急に冷めた顔になった。
「高校生とでも、付き合っていいだろ」
「ダメだよ。私一応教育に携わる仕事してるんだし」
「なんで?」
「大人の付き合いは、子供はダメなの」
「……大人の付き合い?」
「そ。大人には大人の付き合いがあるのよ。それより孝寿、なんでうち知ってたの?」
私が孝寿に最後に会ったのは、私が20歳で孝寿が小6だ。20歳の頃は、私はまだ実家だった。
「ママに頼んで杏紗ちゃんのママに聞いたんだよ。俺17歳になったから」
「もう17歳になったの?! うわー、孝寿が17歳かー。私も年取るよねえ……」
「なんで17歳になったからって杏紗に会いに来たの?」
あ、そういえばそうね。17歳だから何だって言うのかしら。誕プレの催促かな。
孝寿が私の目の前に立った。へえ、男の子にしては小さいけど、もう私よりも背が高くなってる。子供の成長って早いよね。孝寿も見る度に変わる。
孝寿の顔が近付くと、唇に孝寿の唇の柔らかくて温かい感触がした。
びっくりして固まっていると、
「あー、懐かしい。結婚しようって約束したあの日を思い出すよ」
とその位置のまましゃべりだした。キスしながらしゃべる人初めて見たわ! 初めて唇で唇が動く感触を知った。
「何してんのよ!」
後ずさりして、孝寿と距離を取る。
直くんの目の前で! このドキドキが不意をつかれたドキドキなのか直くんの前でこんなことされて大丈夫なのかのドキドキなのか、分からない。
「色々やりたい年頃なのは分かるけどさー、親戚のお姉さんでなくていいでしょ。学校でしなよ」
なんか……直くん冷静だな? 拓人にはあんなに好戦的だったのに。それはそれで、いやもっと怒ってよって思ってしまう。彼女が目の前で他の男にキスされたのよ? 親戚の子とは言え。
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