第15話
「ねえ、直くん、興味ある仕事とかないの? 直くん頭いいから、勉強すれば弁護士とか裁判官とか普通の女が気安く声掛けづらい職業にも就けるんじゃない?」
「俺勉強嫌いなんだよね。授業中とか、苦行だったよ」
「そうなんだ? もったいない。高校、どこ出てるの?」
「神山手高校だよ」
「え?! トップクラスの進学校じゃん!! 去年系列の高校受験塾の先生方が神山手高校に3人も合格者出せたってお祭り騒ぎだったよ」
「へえ? そうなんだ?」
そうなんだって……。研究しても研究しても、追いつかないなあ。直くんの頭の中はどうなってるんだろう。
「中学の先生が受けろって言うから受けただけだからなあ」
「神山手高校なら、大学進学率ほぼ100%でしょ? 大学受験しなかったの?」
「したよ。合格したけど、親にお金振り込んでもらうのすっかり忘れてて、合格取り消されちゃって」
「ええ?! 親御さんも聞かなかったの?! お金いつまでに振り込むのーとか」
「俺が合格したことも知らなかったかも? いや、言ったかな? どうだっけ?」
ええ―――……。この通りの息子さんに育て上げただけのことはあるご両親そうだなあ……。
「どこの大学の何学部?」
「聖天坂大学の医学部」
「やっぱり超頭いいんじゃん!! お医者さんになりたかったの?」
「そうだね。テレビで産科医と小児科医が不足してるって観て、じゃあ俺がなろうーと思って」
直くんらしいごく軽い動機! でも、産科や小児科ならコンビニよりも全然安心な環境だ。
「いいじゃん! 今からでも勉強しなよ! 二浪程度の学生なんてゴロゴロいるだろうし。親御さんも大学の費用を用意はしてくれてたんでしょ?」
「金はあると思う。2人とも稼ぐばっかで使わないから」
「本屋さん行こ! 私が帰って来るまでの時間、ごはん作っても時間余って暇だって言ってたじゃない。勉強しようよ!」
「え? 俺また受験生になるの?」
「そうよ! 行こ!」
渋る直くんを半ば強引に本屋に連れて行く。勉強にハマれば、女抱いてる時間がもったいないと思うようになるかもしれない。
こんなにちょくちょく誘われるようじゃ、私の心がもたない。
もう、私の心はズタボロだ。元々浮気に対しての嫌悪感が強いのに、直くんは余りに軽々しく浮気してくる。浮気だとも思わずに。
とりあえず過去問を解いてもらうと、余裕で合格を狙える正答率だった。マジだ。マジの天才だったんだ。この子。
呆然としてると、チャイムが鳴った。
直くんが玄関に行く。
2年勉強してなくて、これはすごい……。私なんて、めちゃくちゃ勉強して予備校通って届きそうな大学探してなんとか教育学部だったのに……。
「杏紗―――。杏紗ちょっと来てー」
ん? 玄関から直くんが呼んでる。
「はーい」
とリビングを出ると、直線の狭い廊下の先の玄関ドアの前に背の高い若い女の子が立っている。
高校生くらいかな? 茶髪のマッシュヘアでボーイッシュな服装の超絶かわいい子だわ。顔小さいし、アイドルグループのセンターでもおかしくない!! こんなかわいい子が何の用?
まさか……直くん、この子ともゴールデンリバーに……。
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