第6話

「ほら、早く行かないと! かなり時間ヤバいよ!」


 色々ツッコむ隙を与えないよう、急かす。実際、かなり時間ヤバいし。


「あ! そうだね!」


 急いで玄関に向かう。玄関の手前で、須藤くんが立ち止まって振り返った。


「ねえ、行ってらっしゃいのチューとかしてくれないの?」


 何その甘えた言い方! 超絶かわい過ぎてドキドキするんだけど!!


「しょ……しょうがないなあ……」


 須藤くんは背が高い。須藤くんの腕をつかんで、背伸びをする。あ、今の唇が今までで1番温かい。昨日はこんなに柔らかかったっけ。


 私が離れると、今度は須藤くんがかがんでキスしてきた。


「行ってきます」


 にっこりと笑う。キューンと胸に来た。あー行っちゃうのか、寂し……。


「い、行ってらっしゃい!」


 精一杯私も笑顔で手を振る。須藤くんがドアを開けて出て行った。


 行っちゃったか……。


 ……あー、なんか、疲れた……。あんなイケメンと長時間一緒にいると、嬉しいんだけどちょっと疲れるわね……。


 あ、香凜かりんから3件も着信あったんだった。電話しよう! 須藤くんの話がしたい!


 あ! あの須藤くんの激ヤバショット送ってあげよ! 私だけで楽しむにはもったいないわ!


 香凜はすぐに電話に出た。


「誰の写真よ? イケメンじゃん、誰あれ? 芸能人の画像?」


「就職先の近くのコンビニに超絶イケメンがいるって言ってたじゃん! その子!」


「は?! コンビニ店員のあんな写真をなんであんたが持ってんのよ?!」


「あ!」


 しまった! そりゃそうだ。あんな顔、コンビニでするわけない! うわー、ついテンション上がっちゃったけど、あんな写真送るんじゃなかった!!


「あんた昨日何があったの?! てか、彼氏と別れて傷心だったんじゃないの?!」


「えーと……昨日、雨降ってたじゃん」


 ざっくりと経緯を説明した。


「ずぶ濡れのイケメンをお持ち帰りしてお酒飲ませてやっちゃったってこと?!」


「だからさ、そんな感じにまとまっちゃうのはよく分かるんだけどまとめないでよ!」


「でも、えらい若くない? 杏紗あずさ年下興味ないでしょ?」


「ハマったかも。年下超かわいい! めっちゃ甘えてくんのー。もーたまんないんだけど!」


「いくつなの? その子」


「20歳」


「いやいや、年の差は3歳までにしときなー。話噛み合わなくなるよ、5歳も下なんて。てかさ、結婚したいんじゃなかったの? 20歳のフリーターなんか無理じゃん」


 う……ぐうの音も出ないわ。


「……あ! そういえば、元彼がヨリ戻したいとかふざけたこと言い出してさ。結婚を前提に、とか言って。舐めんなっつの」


「いいじゃん! 結婚するなら30歳の方でしょ」


「浮気するような男と結婚してどうすんのよ? 不倫されるだけじゃん。絶対嫌!!」


「杏紗は浮気大嫌いだもんねえ。まあ、みんな嫌なもんだけど。あ、ごめん、凛音りんね泣き出しちゃった! また電話するー」


「はーい、またねー」


 お母さんは大変だな。結婚かあ……。いや、今は結婚より須藤くんだわ。もうちょい、須藤くんを堪能したい!


 ……あれ、でも……私達、付き合うことになったのかな……?

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