第5話

 朝、目覚めたら綺麗な寝顔が隣にあった。


 うわ、夢じゃない! やっぱり私、びしょ濡れの須藤くんをお持ち帰りしてお酒飲んでやっちゃったんだ。なんか、そう切り取ると私最低な女みたいなんだけど。元彼と別れた翌日のお話だったりするし。


 ほんと、綺麗な顔だなあ……羨ましい。超まつ毛長い。彫りが深くて彫刻か若い名倉潤みたい。


 写メ撮っちゃおう。手を伸ばしてスマホを取る。あ、着信3件もある。後でかけよ。


 須藤くんの顔を接写! やっば! 寝てる男の色気が半端ない! 20歳でこの色気出る? 元彼なんか30だったけど口開けてイビキかいて寝てたのに。


 パシャパシャ撮ってると、須藤くんが目を開けた。


 超ヤバイの撮れた! 寝起きの色気がもうなんかすごヤバい! えーこれ待ち受けにしちゃいたい! 変態っぽいから我慢するけど!


「……写真、撮ってんの?」


「うん! 超かっこいいの撮れちゃったよ!」


「朝からテンション高いね」


 と須藤くんが笑う。うわー、ヤバい! 朝から超絶かっこいい!


「今何時?」


「9時半過ぎてるよ」


「あ、ヤバい俺10時からバイトだ」


「あ!」


 服! 一応須藤くんの服干してるけど、絶対乾いてない! 須藤くんにバレないように元彼の服取ってこないと!


「どうしたの?」


「あ、ううん、なんでもない。あ、ごはんは?」


「いい。オーナーがいつも店に用意してくれてるから」


 すごい可愛がりようだなあ、田中さん。公私混同じゃないかしら。


「トイレ行ってこよ」


「うん、そうね、行っておいで! あ、ついでに顔も洗っておいでよ! 寝癖すごいし!」


「え? そうなの?」


 須藤くんが寝室を出て行く。私も急いでキッチンへ向かう。服、どこに入れたっけ?


 女子が持っててもギリOKな服を見繕う。あ、靴下……さすがに、メンズの靴下は普通女子は持ってない。いいや、靴下は須藤くんのをドライヤーで乾燥しよう。


 須藤くんの靴下を持って洗面所に行くと、須藤くんが寝癖と格闘していた。ふふっ、なんかかわいい。


「お姉さんー、水で濡らしてもコイツ復活してくる」


 何その甘えた言い方! 超かわいいんだけど!


「オイルスプレーあるよ、頭下げて」


 須藤くんの寝癖にスプレーして、ブラシでなでつけてみる。……手強いわね。ドライヤーで風を送りながらやってみると、なんとか毛先が落ち着いた。


「OK!」


「あ!マジで時間ヤバい! 行ってきます!」


「え?! その格好で?!」


「だって服乾いてないんでしょ?」


 と私が乾かしている靴下を指差す。


「あ、乾いてないけど、大きめの私の服出したから着替えて。その格好で出勤したら何かとマズイんじゃないかしら」


 なんか、いかにもお泊まり感がしそう。昨日私も一緒に店入ってるし、私も利用しづらくなっちゃう。


「お姉さんの服、俺着れるかなあ?」


「大丈夫! 私メンズくらい大きめの服が好きなの」


 須藤くんが元彼の服を着る。なんか、複雑な気分……。


「あれ? 着れるよ」


「良かった良かった! コートもどうぞ」


「これもお姉さんのコートなの?」


「そうよ! 私オーバーサイズが好きなのほら、早く着ないと!」


 さすがにコートはちょっと厳しかったかしら。でも、寒いのにコート無しの方が厳しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る