完全版 青春短し、恋せよ乙女――ただし人狼の。 03
山田君、山田
初めて見かけたのは、やはり入学式の時。なんて言うんだろう、雰囲気というか、醸し出す何かに惹かれたんだ、うん。それが何かはわからないんだけど。見るからにハードロック系の、あたしよりちょっと背が高くて痩せ型。単純に、あたしはそんな見た目に弱いってだけかも知れないけど。
学校が始まって少しして、銀子がバンドやりたいって言い出して、物は試しで校内の掲示板にメンバー募集の張り紙出して。そしたら、何となくメンバーが集まって、その中にその山田君が居た時は、ちょっとびっくりした。
見た目通り、山田君はギターは得意で、ボーカルもかなりイケてた。あたしはドラム担当、銀子もギターもボーカルも行けるクチだから、自然にバンドはツインギター&ボーカルの形になった。
で、あたしも銀子も運動部と掛け持ちだから毎日は練習出来ないけど、なんだかんだで入学してから二ヶ月、イイ感じでまとまってきてる。そして。
会えば会うほど、一緒に居れば居るほど、あたしは、山田君を意識している事に、最近、気付いた。
「……で。そのヤーマダ君な?」
弁当を平らげた銀子が、紙パックのジュースにストローを通しながら、聞いた。
「あれのどこが、そない気にいってんねんな?」
「どこって……」
真正面から聞かれて、あたしはちょっと、戸惑う。
「……って言うか。一目惚れ、なのよ……」
「……はい?」
ストローを咥えた銀子が、ジト目で聞き返した。
「あたしね、自分でも考えてみたんだけど」
あたしは、潰れたペットボトルに残ったレモンティーを飲み干してから、言う。
「あのね、多分、入学式で見かけたときからきっと、ゾッコンだったのよ」
「あー、ああ、そうだっか……そーらまた、たいそう気ィの早い事って、よろしなあ」
何かを諦めた様な目であたしを見ながら、銀子が感想を述べた。
「だって!愛に理由と時間は不要って言うじゃない!」
「誰が言うてん?」
「誰かよ!」
「……誰かが、フェロモンでも出しとるんとちゃうんかい……」
ぼそっと、銀子が呟く。
「何よ!あたしが発情期みたいな言い方しないでよ!」
「あー、春先はイヌネコが
売り言葉に買い言葉。銀子の小ボケにカチンときて言い返したあたしに、銀子がツッコミ返す。ちょっと険悪。と。
「……ごちそうさまどした」
そんな雰囲気を物ともせず、行儀良く箸を置いた
「お銀ちゃんも蘭ちゃんも、ケンカしたらあきまへんえ?」
「……はい」
あたしと銀子は、同時に返事する。環には、「玉姫様」には盾突けない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます