第9話『デパート』 『オーブントースター』 『振れる』

物陰に隠れている俺は、時間を待っていた。

値千金の一瞬のために。

そろそろだろう。目標のの近くに寄る。

荒くなってきた息をさらに潜めると、心臓の鼓動さえ聞こえるように思えた。


チーンと音が鳴る。

何も入ってないオーブントースターは、終わりを告げる音を鳴らす大役を果たした。

男が咄嗟に銃を向ける。

そして今、違う方向に転がっている鍋を放り投げる。

がじゃんと不快な煩い音が響き、男が2度目の反応を見せる。

「なんだぁ!!」

1度目の音で距離を縮め、2度目の音で動揺させて、ようやく届く。

拝借した棒が届く。頭めがけて振り抜く。

鈍い音がして、男の首が振れる。

気絶はしてない様子だが、取り押さえるのに不足はない。

なんせここはデパートだ。

かなりのものが揃う。


1人の男の拘束を済ませると、移動して、身を潜める。

拘束されたヤツに寄ってきて解こうとするなら襲撃し、そうでなければ介抱にまわっているならそれでいい。

なぜなら俺の敵は1人じゃないからだ。


俺はなぜか、デパートでデスゲームに巻き込まれていた。

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