第198話  『英雄』の戦い




 青い閃光が縦横無尽に駆ける。撹乱を兼ねた超速度の移動によって風が舞い、草が揺れ、木の葉が躍る。繰り出される剣閃は速度によって振り抜かれる不可視の斬撃。力が無くても速度で斬る。連撃に重きを置いた鍛え抜かれた一撃。


 常人には見ることはおろか、彼女がそこに居る事にすら気がつかないだろう。腕の立つ冒険者でも、姿は残像のみを追い掛け、その命尽きるまで姿を確認することはできない。『英雄』の中でも疾走の速度が群を抜いて速いと言われるソフィーの脚には確固たる自信がついていた。


 ついて来れた者など居ない速度を捻り上げて戦場を舞いのように駆け回った。この速さにはどうだと言わんばかりの、自由な走りだった。しかし今回ばかりは、そんな自信も戦闘開始で早々に砕かれた。必ず目が合うのだ、理性的だが冷たい冷徹な黄金の瞳と。どんなに速度を上げても、必ず自身の姿を追って離さない、


 フェイントを入れた方向転換は、双剣からの魔力放出によって行われる。最高速度を保ったまま真横に移ることすら可能としている変則的な動きについてくる。動きを完全に読まれてしまっていた。歯噛みする。龍というのは、実力がある龍とはこれ程の高みに居るのかと。




「ふッ……ふッ……シッ!!!!」


「生温いな。速さはだとしても、一撃が軽い。お前はその程度の力で、これまでを戦い抜いたのか?」


「……っ!意外とお喋りなんだね。ボクはてっきり、龍はその他の種族に毛ほども興味を持たない存在かと思ってたよ」


「仕方あるまい。戦いと称せるものにすら発展しておらんのだ。その代わりに何かで気を紛らわせねば退屈で仕方ない。『英雄』ならば、是非とも俺が感じる退屈に熱を与えて欲しいものだな」


「なら、これならどうかなっ!!」




 尻尾の先に展開された純黒なる魔力の刃に受け止められて攻撃が弾かれる。火花を散らして柄を握る手が振動によって痺れてくる。ここまで多く打ち合った事は無い。それにソフィーから挑み掛かる形でなど、それこそ冒険者を始めたばかりの頃くらいしか思い出せない。


 対するリュウデリアは、変わらずの仁王立ちだった。他に何かアクションを起こそうという気は見られず、動いているのは尻尾のみ。何処から仕掛けても必ず尻尾の先の魔力で形成された刃に阻まれるのだ。魔力で肉体を強化している訳でもないのに押し込むことができない力強さに、魔力で肉体を強化している自身が負けている事が嫌に思えて仕方ない。


 龍本来の体の大きさを考えると、見た目に反した強さを持っていても不思議ではないが、こうして対峙して違和感が無い大きさをしているので頭が混乱してしまう。人間に近い姿ということも加えて混乱を大きくさせた。


 最高速度で斬り付けても全く意に返されないことに、ソフィーは新たな手を取ることにした。普段は相手が粉々になってしまうので使用するのは控えるのだが、相手はあの龍だ。むしろ粉々にするつもりでやらねば戦いにすらならない。


 右手に持つ双剣の片割れの握り方を変える。通常の握り方から逆手へと。体勢を低くして、魔法陣を起動した。柄と刃の境目辺りに青い魔法陣が展開され、双剣の刀身に桜色の魔力が覆った。普通の魔力ではないということは解るが、何の仕掛けがあるのかと目を細める。魔法陣を読み解けば答えが解るが、敢えてそうせずに受けてみることにしたリュウデリアは待ちの姿勢を崩さない。




「──────『双奏の爆連イル・ソニッド』ッ!!」


「なるほど。触れた途端に爆発を巻き起こす魔法を刀身に帯びさせているのか。逆手に持ち替えたのは回転による斬撃で手数を増やすためか?」




 最高速度で駆け回りながら接近し、体を捻りながら反時計回りに回転する。流れるように斬撃を入れるソフィーの攻撃を尻尾の魔力の刃で受け止めると、受け止めた回数だけ爆発を起こした。一撃で太い木を根元からへし折りかねない威力を持っている。それを回転を通して素早く連続で叩き込むことにより斬撃回数及び爆発回数を上げているのだ。


 正面から来て回転しながら移動して跳躍しつつ上からも斬り付けてくる。止まることの無い連撃に続く連続爆発でリュウデリアの周囲は黒い爆煙に包み込まれている。爆煙によりソフィーの姿が隠されて、剣筋が見えなくなり防御が難しくなるのだが、リュウデリアには剣を振る際に発生する音が聞こえているので対処が可能だ。


 気配も読んでいるので場所は常に把握している。『見えない』は見えない内に入らない。夥しい数の連撃を受けながら、その全てを尻尾の刃で受け止めていく。魔力の刃は爆発に晒されようが一切揺らぐことなく、欠けもせず常に完全な形を保っている。ダメージが蓄積した様子が無い。


 斬り付けながらそれを確認しているソフィーは、秒間24の斬撃を叩き込んでもダメなのかと驚きを隠せない。爆発の威力も相当なものであるし、これだけ短時間に何度も受けていれば少しは効いてもおかしくないのに、リュウデリアの防御は抜くことができなかった。




「攻撃ばかりでは飽きるだろう。俺も少し反撃してやるとしようか。ちなみに、


「──────ッ!!!!」




 信頼関係がソフィーとリュウデリアの間に築かれている訳ではなかった。むしろ敵なのだから相手の言葉を信じろという方が無理な話だ。しかしソフィーは彼の言葉を聞いて理解するよりも反射に近い動きで横に向かって跳んでいた。すると先程まで自身が居た場所に何かが通った。水色の毛先が触れて宙に舞った。斬れたのだ。


 前には対峙するリュウデリア。尻尾がゆらりと揺れているのが目に入る。最大の警戒を抱きながらそろりと背後を振り返る。そこには、向こう400メートル先に向かって大地が大きく裂けた有様が広がっていた。恐らくは斬撃を飛ばしたのだろう。軌道上にある木々や岩が真っ二つに斬り裂かれていた。


 横に跳ぶことを薦める。そう彼は言った。尻尾を振って斬撃を生み出して飛ばす直前にだ。もし仮に、それに従わなかった場合どうなっていただろう。どうにか反応できたとしても完全に避けきる事が、果たしてできただろうか。言われて反射で従い避けたのに毛先が斬れた。恐らく間に合わずに片腕片脚は飛んでいた事だろう。その事実に気がつくと体が芯から冷たくなった気がした。


 全然本気ではないのだ。本気でないのにこの威圧感。感じる強者特有の気配。数度しか感じたことのない断崖絶壁の上に立たされているような絶望感。何をどうすれば勝てるのか教えて欲しいくらい、リュウデリアに勝つ未来の自分が想像できない。『英雄』と持て囃されていい気になっていた少し前の自分が恥ずかしい思いだ。




「避けたか。忠告を無視していれば、今頃真っ二つだったな」


「……龍っていうのは、全て君くらいの実力があるの?」


「俺並の実力ゥ?……ふふ……フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!あるわけ無いだろう馬鹿者ッ!あの塵芥の龍擬き共に俺ほどの強さがあるなら退屈なんぞしておらんわッ!ククッ……安心しろ。お前が俺を殺せたならば、この世の龍の殆どを寝ながらでも殺せるだろう」


「あはは……つまりそれだけの実力は持ってるってことね……口先だけじゃなくて、確信を得る何かを既にしている……ってことか」


「さて、それをどう思うかはお前の自由だ。嘘と断ずるも良し。真実だと察するも良し。好きにしろ。それよりもそら、次いくぞ」


「──────ッ!!ふっ……くッ………ッ!!」




 嘘をついているとは思えなかった。俺は強いと自分の口から言うありふれた輩はいくらでも知っている。そういう奴に限って大した力は持っていないし、本当に強かったとしても慢心して一流にはなりきれないのだ。だがリュウデリアの言葉には、どこか納得してしまう真実味がある。


 同じ龍を相手に退屈でつまらないと評せる目の前の龍は、もしかしたら龍の中でも最上位に位置する力を持っているのかも知れないと思う。世界最強の種族と謳われながら、その中でも更に最上位の力を持つ存在。強くて当たり前だ。自身の力を意に返さないのも頷ける。だってそれだけの力を保有しているのだから。


 ゆらり、ゆらりと揺れている尻尾がブレた。速過ぎる動きに目が追いつけなかった。途端に時間が勝手に遅くなっている感覚。もしかして走馬灯のように死に直面しているのか?と察して、形振り構わず転がってその場から退避した。音も無く、またしても大地に裂傷が入り、木々を縦から両断する。受け止める自信はない。そんなことをしようとすれば、体が剣ごと両断されるのは目に見えているから。




 ──────あの斬撃は速過ぎて来たと思ったら回避してないと間に合わない。タイミングを間違えると多分普通に真っ二つ。この剣でも耐えきれるとは思えないし、何と言ってもあの龍の魔力の異質さが恐ろしい。ボクの剣が吸収できてないもん。魔法を撃たれたらどうしようかな……軽い気持ちで撃った魔法で木っ端微塵とかはやめて欲しいなぁ。




 視線を手元に落とす。無駄な装飾はされていない2対1本の双剣。銘を魔剣イーリングルム。瓜二つの双剣の内、1本が触れた魔力を吸収して貯め込み、もう1本が任意で魔力を放つ事ができるという能力を持っている。貯めた魔力は魔法に使うことも可能であり、それはつまり魔力を持つ者を斬り続ければ魔力が枯渇することが無いということになる。


 このイーリングルムの能力で戦場では肉体の強化を途絶えさせる事は無かったし、魔力が尽きたことも無い。相手が強ければ強いほど魔力が豊潤なので尚更魔力の枯渇は訪れない。だがリュウデリアの魔力を直接斬っているのに、イーリングルムは魔力を吸収できていなかった。


 総てを呑み込む純黒なる魔力。感じ取れる魔力量は桁外れ過ぎておかしいが、質もおかしい。魔力を吸収するという能力が発動しない魔力なんて、一体どんな魔力だというのか。こんな事は初めてだ。例外なんて存在しなかった。最初に斬り付けた時は何かの勘違いかと思ったが、何百何千と斬っていて未だに吸収が0なのだから、相手の魔力がおかしいと気づくのは当然だ。だからと言って対処法は無いのだが。


 自慢の相棒である大業物の名剣の力が発揮できない。魔力を限界まで吸収して貯め込み、一撃に集束して放とうと考えていたのに、これでは出鼻を挫かれていた。自身の放てる最高出力で傷を負わせられるか解らないので使いたかったのだが、吸収できないならば仕方ない。使えないならば使おうとするだけ無駄だ。




「お前の持つその双剣、面白い能力が刻まれているな。吸収と放出だろう?気づいていないとでも思ったか?」


「……吸収ならまだ解るとして、放出のことはどうして解ったの?」


「俺の眼は誤魔化せん。能力として存在しているならば、俺には調べる方法がある以上必ず解き明かす。武具に付与された能力も例外ではない」


「……はぁ。もー。どんだけ規格外な龍なのさ……ッ!」




 妖しい光を放つ黄金の瞳。見ればいくらでも解析して能力を解き明かすという厄介な力。純黒の魔力が元より吸収できないにしても、放出のことまで把握されているなら一撃に全魔力を乗せた攻撃は察知されて受け止められていたか、避けるなりされていた事だろう。やはり無意味だったかと溜め息を吐き、ここまで来ると逆に肩が軽くなる。


 思い切ってもう全部出し切った方がいい気がする。後先考えず、速度に限った話ではない本当の全力。それでもリュウデリアに通じないならば、ソフィーの力では勝てないことの証明になる。人類ではまだ勝つことが不可能とされる存在が居るということは解った。惜しむべきは、それを他の者達に教えられなかったこと。


 姿を見てしまい、姿を見られ、今こうして殺されようとしているのだから、『殲滅龍』のことを誰かに伝えようとすればこんなお遊びはやめて忽ち殺されるだろうし、伝える手段は確実に潰すことだろう。応援は期待できないし、来たところでソフィーと同等かそれ以上の力が無いと話にならないだろう。


 敵が強すぎて逆に気が楽になったソフィーは、当たって砕ける気持ちで向かっていく事にした。したのだが、それを気配で察するリュウデリア。彼はソフィーのやらんとしていることに気がつくと、初めて組んでいた腕を解いた。それだけの動作で異常な圧力を感じるソフィーは猫耳や尻尾の毛をぶわりと逆立てた。




「お前の力は大体把握した。?」


「──────ッ!!!!」




 リュウデリアが拳を作る。尻尾の防御と斬撃しかしていなかった彼が初めて見せる攻撃的な姿勢。速度は全力だった。技も見せた。手の内はまだあると言えるが、彼からしてみればある程度『英雄』の持つ力が知れれば満足だったのだ。戦いと呼べるかどうかさえ怪しいのに、もう終わるのかと息を呑む。


 もう死ぬときがきたのか。生き残る事はできないのか。どうやったらこの純黒の龍に勝てるのかと思案しつつ、全力で肉体を強化した。何が起きても対処できるよう、リュウデリアの一挙手一投足に至るまで観察した。何か少しの動きでもあれば対応してみせると心の中で強く考えて体に刷り込む。


 魔法ではなく殴打で来るはず。長年の戦闘により培われた勘がそう告げている。ソフィーはリュウデリアが動き出した瞬間に同じく動き出そうとしていて……目前で拳を振りかぶる彼の姿を見て吃驚した。




「──────何もかも遅い」


「ぁ……────────────」




 最後に見たのは、目前にまで迫っていた純黒の鱗に覆われた拳だった。絶対に対応してみせると決めて体が自動で動くように刷り込みすら進めたというのに、動く暇も無い速度で向かってくる拳を見ていることしかできなかった。


 顔面を捉えた重すぎる一撃に、ソフィーの意識は容易に暗闇へと押しやられた。こんな呆気なく死ぬなんて、ツイてないなぁと思ったのが、最後の言葉だった。

























「──────ハッ!?」


「──────遅いお目覚めだな、『英雄』」


「……『殲滅龍』?それにボク、生きてる……?」


「力を見せろとは言ったが、殺すとは言っていないわ。それにしても見た目に似合わず中々の防御力だな。頭が消し飛ばなかった」


「……なんか嬉しくない。うぅ……鼻が痛いよぉ……」




 上半身をガバリと起こす。死後の世界は生きていた頃の世界と殆ど変わらないんだ……と、頓珍漢なことを考えたが、すぐ傍から声が聞こえてきたので顔を向ける。そこには気絶するまで戦っていたリュウデリアが居た。


 地面に寝転んでいるソフィーを、切株を椅子にして座って見下ろしている純黒の龍にビクリと反応する。あれ?と思いながら周りを見渡せば、戦闘の跡があった。殺していないという発言から、顔を殴られて気絶し、起きるまで放置されていたのだろう。起きて少しすると途端にやって来る顔の痛みに手で軽く触れると、鼻の下がカサついていた。


 爪で掻いてみると、肉と爪の間に赤黒いカスが付いている、どうやら鼻血を流した後に固まっていたらしい。魔法で大気中の水分を集めて水の塊を造り出し、顔を洗った。相当な量の鼻血が出ていたらしく用意した水を殆ど使ってしまった。女の子の顔面に拳って……と思ったが相手は龍なので、そんな気遣いが有るわけ無いかと肩を落とした。


 フラつきながら立ち上がってみると、顔が痛い事以外は何ともない。体にも異常が無いので、気絶している間に何かされた訳でも無さそうだ。強いて言うならソフィーの魔剣であるイーリングルムが二振りとも無いことだろうか。




「イーリングルムは……」


「この双剣か?お前が起きるまで暇だったから見ていた。返してやろう」


「おわっとと……ありがと。それにしても、どうしてボクを殺さなかったの?君が使い魔に成り済ましてるって知っちゃったのに」


「誰にも話していないようだったからな。それに、俺はお前ほどの小さい動物を無意味に殺すことは好かん。メリットがあまりにも無いからな。殺して欲しいならば殺すが」


「殺されたくないのでやめてください。誰にも喋りませんからハイ。……ていうか動物って……ボク、猫の獣人だからねっ」


「ふーん」


「うっわ!すごい興味無さそう!」




 切株に座っているリュウデリアの膝の上に双剣があった。頬を叩いても起きないので、起きるまで待つ事にしたリュウデリアは、暇だったのでイーリングルムの観察をしていた。解析などをしていたがそれすらも終わってやることが無くなって、適当な魔法を創っているとソフィーが起きたという形だ。


 遠見の魔道具でリュウデリアの姿を見たソフィーだったが、その事は誰にも言っていない。言う前に捕まったということもあるが、まだ何もしていないリュウデリアのことをいきなり斬り付けて良いのか解らないことと、果たしてすぐに仕掛けて大丈夫なのか?という疑問から、誰にも打ち明けなかった。


 このまま何も無いならば良し。有ったとしても自分が対処すれば良いと考えていた。リュウデリアはそんなことは別にどうでも良く、話しておらず話す気が無いならば殺さないでおいてやろうという考えである。理由として、折角の『英雄』という他よりは強いだろう存在をこんなところで失うのは惜しいと思ったから。これからもっと強くなるなら、是非とも強くなって欲しいという期待だ。


 もちろん、余計なことを喋ったならその瞬間に殺すし、聞いた奴も纏めて殺すつもりだ。簡単にそれを実行するだろうことをソフィーは何となく察しているので、絶対に誰かに言うのはやめよう。口を滑らせるのも絶対に無いように気をつけようと心に決めた。




「話したら王都ごと消し飛ばす首輪でも創っておくか……?」


「絶対言わないって制約でどうにかこうにか縛るからそれはやめて。王都消えちゃうのはイヤだよ」


「それはお前次第だ小動物」


「ソフィーだってば!もぅ!なんでオリヴィアといい君といい、ボクの名前を間違えるかなぁ!?」


「態とに決まっているだろうが。そんなことも解らんのか?」


「そこで堂々と言われても反応に困るんだけど!?」




「──────リュウデリア。終わったようだな。ゾリエンも生きていたか。……惜しいな」




「あっ、オリヴィア……っ!……って、ボクはソフィーだって!態とでしょう!?もう分かってるんだから!……今惜しいって言った??」




 頬を膨らませながら猫耳と尻尾の毛を逆立てて怒るソフィー。生きていたことにホッとしたのも束の間、オリヴィアとリュウデリアにイジられる猫の構図になってしまった。思ったよりも、会話が成立することに嬉しがればいいのか、ものすごく扱いが雑なことに怒れば良いのか解らない彼女は、取り敢えず今の生を噛み締めるのだった。






『英雄』ソフィーは死ぬことはなかった。誰にも言っていない事が生きている理由なので、他者に言っていれば今頃殺されていただろう。彼女はイジってくるオリヴィアとリュウデリアにツッコミを入れながら、嬉しそうに笑った。








 ──────────────────



 魔剣イーリングルム


 2対1本の双剣。無駄な装飾は好まないソフィーの要望によって素朴な剣になっているが、持っている能力は凶悪。二振りの内どちらかが触れた魔力を吸収し続け、もう一振りが溜め込んだ魔力を放出する。魔法に使うことも可能で、斬り続ければ常に魔力を得ることができる。


 折れず曲がらない大業物の名剣。最高レベルの鍛冶士によって鍛えられた逸品で、ソフィーの『英雄』としての強さや功績を讃えて贈られた。噂では、ソフィーはこの剣で嵐の雲を斬り刻んで快晴にしたと言われている。





 ソフィー


 誰にもリュウデリアの事を話さなかったのが幸いして殺されずに生き残った。その代わりに、誰かに話したら殺される未来が確定している。どうにかその未来が来ないように制約でも設けて喋れなくしようと考えている。





 リュウデリア


 誰かに話した様子は無いので殺すのは一旦保留している。ただし、話した途端殺す。なんだったら話したら王都ごと消し飛ばす程の爆発を生む首輪でも創って付けてやろうかと考えている。


 強い者は歓迎するので、『英雄』のソフィーを殺すのはやめている。あと、小さい動物を無意味に殺すのは好かない。何故なら全くメリットが無いから。腹が減っていたら食うために殺すかも……?





 オリヴィア


 リュウデリアとソフィーの戦いが終わったので合流した。王都の中で鬱陶しく絡んできたので、別に殺しても良かったのに……と思っている。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る