第191話 これは何が入ってるのかな?
「ま、間違いないわに。あの雷! あの威力! あんなの他にいないわに」
透き通るように白く、シミ一つない白磁の磁器のような肌が心なしか、青白くなっていた。
幾分、青褪めた顔であっても少女が整った顔立ちをしていることが分かる。
わなわなと震えるたびにチョコレートの色をした髪が揺れ動く姿はそれだけでも十分、魅力的なものだ。
少女が情景を映していた水晶球から目を離そうとし、己を見つめる紅玉色の瞳と目が合ってしまった。
『見つけましたわ』
「ひっ?! き、気付かれたわに」
どうにか、視線を逸らし、水晶球に送っていた魔力を遮断した少女だったが震えはさらに酷くなっている。
「まずいわに。間違いなく、まずいわに。どうするわに? どうするわに?」
少女は照明の落とされた薄暗い室内をうろうろとせわしなく、歩き回ると合点したと言わんばかりに柏手を打つ。
そして、その紅玉色の瞳を潤ませながら、力無く言うのだった。
「大丈夫わに。何とか、なるわに! いや、してみせるわに!」
滝があって、爺やがいて、レオと手を繋いでいたからこそ、思いついた新しい水の魔法ですけれど、使用条件が限定されるので使いどころに困りそうですわ。
「あれが十階のボスだったってことかな?」
繋いでいた手がいつの間にか、しっかりと腰を掴んでいて身動きが取れないのですけど……。
そういう真面目なことを口にしながら、首筋に口付けを落としていくなんて芸当をどこで学んだのかしら?
「そ、そうだと思いますわぁ、あっ……」
首に舌を這わせたりするので思わず、変な声が出てしまいそうになりました。
我慢ですわ。
ちょっと危なかったですけど、多分、大丈夫です。
「ふむふむ。どうやら五階ごとにいわゆるボスキャラが出てくるようじゃな。そして、倒すと報酬の宝箱も出てくるようじゃぞい」
爺やが杖で指し示した先に大人が数人は入れそうな大きな箱が出現していました。
金属で各部が補強された木箱ですから、宝箱を頭に思い描くと出てくるイメージそのものですわね。
ただ、昔話ですと大きい箱にはあまり、いい物が入っていない結末が多いと思うのです。
「五階の宝箱って、何が入ってた?」
首へのキスだけでは飽きてきましたの?
それとも抑えられなくなったのかしら?
完全に彼の腕の中に収められました。
外套で隠れているのをいいことに胸とお尻が揉み放題の状態になってますけど。
見えていなくても声が出たら、バレてしまうのにレオったら!
「これじゃな。いわゆる篭手じゃが篭手じゃないのう、これ。防具というよりは武器じゃのう」
レオが頭だけを解放してくれたので自分が思う以上に少々、間抜けな絵になっている気がします。
ただ、ここで気にしている余裕はありません。
とにかく、爺やが宙から取り出した物を確認しないといけませんわ。
白銀のきれいな篭手で魔水晶がアクセントとして、あしらってあるようです。
どうやら、右手専用で片手分しかないようですから、防具として考えるとおかしいという爺やの考えが正しいのでしょう。
恐らくは白兵戦、近接戦闘に用いる物なのでし……あっ、ダメですって。
レオは抑える気がないのですわ。
仕方ないので彼の外套に隠れます。
絶対、顔に出てますもの。
「これは何が入ってるのかな?」
「何じゃろうな。楽しみじゃ」
そう言いながら、レオは下着の中に指を入れてくるのです。
何て、器用なのでしょう……。
表では爺やと真面目な話をしておきながら、見えないところで指で悪いことをしてくるんですもの。
声を抑えるのって、結構辛いんですのよ?
そんな私の葛藤を
それ、ダメですってば、声が出ちゃいますから……。
「どれどれ、ふむふむ」
「何が入ってた?」
本当、ダメだってばぁ。
ショートパンツの下にまで手を入れるのはダメですって!
入ってるのはレオの指ですってばぁ。
「ふむ、これは……サークレットじゃな」
「女性用かな」
「そうじゃな。意匠からはそう感じられるのう」
声が出てません? 音が出てません?
レオの指遣いが激しくなってきて、もう無理です。
立っているのも辛くなってきましたもの。
「よしっ! じゃあ、次の階に行って、一旦帰ろうか」
「うむ、時間的にもその方がいいかもしれんのう」
どうにか助かったようですわ。
レオが手を止めてくれて、そのままマントで身体を
まるで梱包されたような状態になっていますが、醜態を晒すよりはまし……ましなのかしら!?
でも、あと少し、指を
危なかったですわね。
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