第173話 そういうことって、どういうことですの?
レオの邪魔になりそうな周囲のモノという名の雑音をほぼ殲滅し、暇ですわ。
そこでちょっと離れた位置から、オデュッセウスとコリネウスの戦いを見守ることにしました。
なぜか?
前にこれと似た状況になった記憶がありますもの。
それもつい、最近でしたわ。
黒蝕竜ギータとの戦いでよかれと思い、こっそりと手助けしたのですけど。
レオが喜んでくれると思ったのですが、裏目に出るとは思いませんでしたわ。
正確には怒られたのではありません。
口実という名のアドバンテージを彼に与えてしまったことが問題ですもの。
あの後、起こったことは私にとって、忘れられないほどに気持ちい……いけませんわね。
余計なことを考えている場合ではなかったかしら?
でも、これは勝負になってませんわね。
コリネウスはオデュッセウスの倍くらいの高さがあるように見えますから、体躯だけなら、圧倒的に有利な状況にあるのですけど。
所詮、それだけとも言えますわ。
下半身を肉食獣の中でも柔軟な身体を有する猫科の生物そっくりに変化させているので、巨体の割には敏捷に動いている方でしょう。
ただ、敏捷なだけで彼には永遠に追いつけませんけど……。
腕が四本あるというのも戦いにおいては優位に立てる要素のはず。
肩から生えている二本だけではなくて、肩口からもう二本の虎を思わせる強靭そうな腕が生えてますのよ?
これだけ、有利な条件が揃っていてもコリネウスはオデュッセウスに一度も攻撃を当てられません。
それどころか、一方的に嬲られているようにしか見えませんわね。
コリネウスの四本の腕はそれぞれが違う場所を目掛けて、中々に鋭さのある攻撃を繰り出しているのですけど……。
当たってませんわね。
全部、オデュッセウスの残像なんですもの。
攻撃が空を切っている間にオデュッセウスが背部のリアクターバインダーを目一杯開き、
遊びは終わりということかしら?
全身を真紅のオーラで包まれたオデュッセウスは手に負えない荒ぶる獣……。
『当たらなければ! とは言わないよ』
「何のお話ですの?」
コリネウスはオデュッセウスの姿を見失い、心無し戸惑っているように見えます。
表情などは読めないのにそうとしか、思えません。
衝動だけで動く生物であってもあのような反応を示すものなのかしら?
そんな私の逡巡を他所にオデュッセウスは嘲笑うようにあっという間に懐に入ると右の拳を振り抜きました。
青白い燐光を放ち始めた拳はいとも容易く、コリネウスの頭部を射抜きます。
爛々と輝く真っ赤な
あれが
掌に内蔵された特殊兵装で直接、触れずに攻撃が可能な格闘向きの武装だったかしら?
ある程度の距離があってもまるで射撃するように相手を粉砕出来る、とレオが嬉しそうに寝物語で語っていたのを思い出しましたわ。
夢うつつでほとんど覚えていなかったのですけど、実物を見て、記憶が蘇ったのです。
「レオ、まだ駄目かしら?」
『もうちょっとかな』
あれではまるで分身しているみたいですわね。
たくさんの残像に囲まれたコリネウスは思考に混乱を来したのでしょう。
闇雲に腕を振り回しているだけ。
あれでは単なる餌にしか、ならないですわ。
肩口から生えていた虎のような腕が一本、
ただ、高い再生能力自体は目を見張るものがあります。
先程、吹き飛ばされたばかりの半壊していた頭がもう修復し始めていますもの。
切断された腕も切断面から、うねるようにのたうつ触手が生えていますし……。
しかし、この異常な再生能力……普通の生物と思えないですわ。
「ギャオオオオオ」
コリネウスの胸部が耳障りな咆哮を上げるものですから、思わず耳を塞ぎそうになって、妙な視線を感じたので動きを止めました。
今のは何かしら?
何か、こう……体を舐め回されるような感覚を覚えたのですけど。
それもよく知ってますわ。
この味見するような舐め方!
『何で? 途中でやめないでよ。リーナの腋もきれいでいいなって思ったのに』
「ひゃぁ」
思わず、腋を隠そうとしたのですけど、これは悪手でしたわ。
だから、露出度が高い水着のようなデザインの服装がもっとも向いているのです。
極論を言えば、何も着ないのが最善ですけど、却下ですわね!
レオも随分と際どいデザインの男性用ビキニを履いてます。
ええ、わざわざ見せてくれましたもの。
似合ってますし、レオのをついつい、見つめてしまったのは仕方がないことですわ。
だって、明るい場所でマジマジと見ることはそうありませんし……。
レオは私にも水着を用意してくれたのですけど、なぜか黄色と黒の虎柄のビキニなのです。
上は肩紐なしなのであまり、激しく動くとまずい気がしますし、下も紐で結ぶタイプですから、危険ですわ。
動けば動くほどレオの思うつぼかしら?
『その胸を強調するのもいいなぁ』
「レ、レオはどこから見てますの!?」
レオったら、何をしているのかしら。
コリネウスを相手に戦っていながら、何とも器用なこと……。
『その水着は誰がプレゼントしたでしょうか』
「レオですわ」
『そういうこと!』
そういうことって、どういうことですの? と聞きたいのですけど、そんな余裕はなさそうですわ。
咆哮を上げたコリネウスの背から、まるで植物が芽吹くように二枚の大きな翼が生えてきたからです。
『飛んで逃げようっていうんだね。そうはさせないさ。てやっ!』
宙に残像を刻みながら、コリネウスの背後に接近したオデュッセウスが羽ばたこうと広がった翼を蹴り上げました。
オデュッセウスの爪先からは魔力の光刃が発生していて、翼だけではなく背中まで深く、切り裂いたようです。
右の翼を大きく切り裂かれ、飛ぶことが出来なくなったコリネウスは赤い
無駄な足掻きですわね。
『さて、リーナ。そろそろ、止めといこうか。今度はアレ、撃ってもいいよ。抑え気味でいけるかな?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます