第170話 まだ、調整が完全ではなかったかしら?
コリネウスは潜んでいた熱帯雨林をゆっくりと進んでいるようです。
予測される侵攻地点はバノジェではなく、アルフィン。
恐らく、コリネウスの核に使われているモノが、より大きな力を求めた結果なのでしょう。
人口が多いのに加え、動物の本能にも似た感覚でアルフィンに向かっていると見て、間違いありません。
「ねぇ、レオ。一つ、不思議なのですけど」
『何か、変なことがあった?』
ペネロペは飛行形態というほどの変形機構を有していません。
巡航形態とは言ってもウイングバインダーを展開し、空気抵抗が大きい肩のバインダーが邪魔にならないように畳んで飛行するだけのものです。
隣にぴったりと寄り添うように飛んでいるのはレオのオデュッセウス。
「ううん。ありませんわ。ただ……」
『ただ? どうしたの?』
「移動するのにもう少し適した機体があれば、と思いましたの」
『なるほどね。考えておくよ』
もしも
ただ、今はそういう物がなかったことを感謝していますけど。
でも、浮かれている場合ではありません。
コリネウスは熱帯雨林の生きとし、生けるモノを次々に吸収していて、ベリアルの指揮下にあった頃よりも力を増しているのです。
いえ、力を増しているどころか、その姿自体がもはや別の個体といってもいいほどに変貌しています。
まず、先行して配置されたパトラさまのコボルト猟兵団による砲撃攻勢をかけてもらいます。
コリネウスが熱帯雨林を抜け、沼沢地に足を踏み入れたところで一斉砲撃を加え、足止めを行った後、後退してもらうのです。
そこからは
既に改修を終え、調整も順調なロムルス・ルプスとヘクトルに緒戦を任せることになっているのですけど、これには理由があります。
「まだ、調整が完全ではなかったかしら?」
『まあ、そうだね。撃つのは一回だけっぽいかな』
「ペネロペも同じですわ。
そうなのです。
オデュッセウスとペネロペは追加兵装に少々、無茶な注文を出したので調整が暗礁に乗り上げ気味ですわ。
レオは得意な雷撃を増幅させて撃つことを希望し、私は
とても自然なことでしょう?
何か問題がありまして?
ありませんわね。
ちょっと新しい景色が見えるようになるだけですもの。
大丈夫ですわ。
熱帯雨林から、姿を現したのは一体の異形の
魔動兵の
より生物的な姿をした奇怪なモノが次々と森から、出現したのである。
やや前に傾いた姿勢をしており、長い腕は人型というよりも狂暴な猿の魔物に良く似ていた。
そして、彼らに守られるようにコリネウスがゆっくりとその巨体を現す。
「クラウ……スベテ……チカラクラウ」
ドラゴンの顎を思わせるその胸部が大きく開き、世にも悍ましき咆哮が空気を切り裂いた。
聞く者に恐怖を与え、大地を震わせる死の呼び声だった。
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